10月中旬 憂国ニキ


プロだけが知っている小説の書き方 森沢明夫

三島由紀夫の文章読本を読んだついでに、今風の小説指南本を読んでみた。

Webサイトに寄せられた質問に著者が答えていく構成だ。
小説家志望の質問者たちが寄せる疑問は非常に共感できるものばかりで、例えば
”自分の体験を小説にするのは如何か”
”登場人物の、動作の表現が思い浮かばない”
といった誰もが悩んだことのある質問で盛りだくさん。
これに対して商業的に成功している著者が自らの創作術を絡めて赤裸々に回答してくれる、かなり実用的な内容だった。

物語とは、主人公を不幸にしてから始まるという論はかなり面白い。
キャラクターの幸不幸を縦軸に取ったプロットは作品分析に使えるだろう。
古典的名著をこの手法で分析してみたら、いったいどんな構成になっているのか気になる。

翔ぶが如く 司馬遼太郎

歴史小説を読んだことのない23歳が初めて歴史小説を読む。

初めてなら司馬遼太郎だろうということで、明治初頭の西南戦争を舞台にしたこの超大作を買ってみた。
とりあえず文春文庫の1冊を読んでみたのだが、全10巻ある。やばすぎ。

中身は研究者かと思うくらい引用を繰り返しており、その取材力に脱帽といった感じ。
情報量の多さに対して、意外と読みやすい。男心をくすぐるような熱い表現が練り上げられており、人間の魅力というものについて考え抜かれた表現だと感じる。
というか執筆当時からしても大昔の事柄を取材して、ここまで情動を描けるのは凄い。かなり踏み込んだ内面描写が連続するとフィクション感が増すものだが、膨大な引用に裏付けされて説得力をもっている。

事前情報なしで読んでいるので、この10巻でどこまで描くのか読めない。1巻読んだところで結構時系列が進んでるが、引用やら周辺人物の描写で時代が前後する。あと9巻、面白いままで進んでほしい。

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