ヨシムラの話 その2
等長集合マフラーの発明
鈴鹿8耐が近づいてきたので、ヨシムラの話題を。
昔ですが、公共放送のプロジェクトXでヨシムラが放送されました。テレビだから全て事実の通りかどうかは分かりませんが、そのおかげで女性にも名前が知られるようになったのは事実です。
オートバイには全く興味がなくて、足としてだけ原付スクーターに乗っていれば知らないでしょうけれど、バイクに興味がある人で知らない人はいない、という位の認知度です。
よくPOPが”世界初の集合マフラーを発明した”という人がいますが、正確に言うならそれは間違いです。重箱の隅をつつくようですが、”等長のエキゾーストパイプの集合マフラー”という言葉が正解です。
なぜなら、航空機にはとっくの昔から集合マフラーがありました。
例えば、零戦の11型、21型は各気筒の排気管をまとめて、太い排気管にしていました。31型、32型はどうだったかは忘れましたが、52型で単排気管、つまり各気筒ごとに排気管をエンジン ナセル後方から出し、推力の一部としても活用しました。パイロットからは、「パンパンしてうるさい」という評判だったそうです。
集合排気管はエンジン ナセル後方斜め下から排気しています。
例えば、MVアグスタや、ホンダRC165/166等の多気筒のレーサーは、各気筒ごとに1本筒ずつのマフラーでした。それを「一本に集合させるだけはなく、”等長”にしたら性能が上がるのではないか?」とPOPは考えたのでしょう。
4気筒ならエキパイ4本の重量は同じだけれど、マフラー3本分は軽量化出来るしバンク角も稼げる、と当然考えたはずです。
それで作ってみたら、排気効率が上がりパワーも出る。ヨシムラ(等長エキパイ)集合マフラーの誕生!です。もちろん、世界初!世紀の大発明です。一世を風靡して、未だにあこがれる製品ですね。発売は1972年からだったようです。
その後、私はオートバイに首ったけとなり、CB400Fourのヨシムラ集合マフラーのいい音に憧れました。でも、どちらも買う事は出来ませんでした。
中古の安い中型オートバイで我慢するしかなかったのです。とにかくヨシムラのステッカーはコピーも含めて売れて、中には2ストロークのバイクに貼っている人もいました。
ちなみに、ヨシムラの血縁会社といっていい、モリワキの集合マフラーと製造元は一緒だったそうで、私の友人は、酔っぱらうと停めてあるバイクのモリワキのマフラーにステッカーが貼ってあると、その上からヨシムラのステッカーを貼っていたそうです。
「あっ、昔、そういう事があったぞ。気が付いたらヨシムラになっていた!」という方、友人の仕業かも知れません。
今や、パワーだけでなく燃費を稼ぐにも等長の集合マフラーは必須となりました。世界戦略車だったVitzもエキパイは等長でした。
廉価版の機械曲げ、より性能が良くて美しいのが手曲げ。量産品はパイプをベンダーで曲げますが、レース用はパイプのサイズがなく、鉄板を真っ赤に熱しながら巻いて、溶接してパイプにする。
そこに砂を詰めてバーナーであぶって三次元の既定の形状にするのが手曲げです。パイプとは言っても、溶接面があるので、きれいに曲げるのは難しいそうです。しばらく鉄製の時代が続き、やがてチタンに素材が変わります。
いらなくなったチタンマフラーを部材として、ワンオフで作ってもらったのをテスト車両のTL125に付けています。ちなみに、スプリング、フックもチタン製です。
Tl125は単気筒で振動が多いから製品テストにはもってこい、2年半前にマジ軽ナットを取り付けて走行しました。TL125は元々振動が激しいトライアルバイクで長距離走行を考えていませんから、申し分程度のシートしか付いていない。170ccにボアアップしているから、振動は更に激しいのです。
マジ軽ナットの効果は想像以上。以前はせいぜい連続走行は9kmが限界。実証実験した日は30km連続で、まだいけました。振動の軽減で男性なら分かる、あの嫌な感じもほとんどありませんでした。SR400/500のオーナーさんも喜びそうです。ハーレーにもいいですね。
なぜ振動が軽減するかというと、静電気によってゴム分子の動きが悪くなります。フリースを脱ぐ際に静電気が起きると、繊維が動きにくくなるから脱ぐのに余分な力が必要になります。静電気は物質の動きを悪くするのです。
タイヤを除電するとゴム分子の動きが良くなり、接地感(路面を捉えている感じ)が増します。タイヤが「しっとりした感じ」、「ペターとした感じになった」等、表現は様々ですが、タイヤの潜在能力を引き出した、という事です。もちろん、振動以外にもメリットがあります。
距離を走るロードバイクやクロスバイクにも効果があります。突き上げや振動での疲労を軽減します。インプレションを下さった、一日中自転車で走り回るメッセンジャーを生業とするユーザーは「体の疲れが軽くなった」、「タイヤのすり減り方がきれいになって、長持ちするようになった」そうです。
少しのお金を出しただけで、走りが楽しめる、タイヤも長持ちしたら、元が取れますよね。
話を戻すと、チタンエキパイは、「作ってよ~」と頼んでいたのになかなか作ってもらえず、市販の膨張管付きのエキパイを付けていました。それはノーマルよりは良かったのですが、このチタンエキパイに換えたら全く違いました。トライアル車だからギア比は低いのですが、なんと5速発進が出来るようになりました!
中古のチタンマフラーを切って繋いで作ったので、若干形状に難があります。でも性能は素晴らしい。代金は、貴重なポスターに幾ばくかのお金を足した記憶があります。
ヨシムラについては、また書きます。
タイヤから路面へ十分に放電されていれば、マジ軽ナットは必要ありません。タイヤに静電気が帯電していて、放電量が足らずに走行性に影響している事は、科学的根拠や特許文献を示して解説していきます。
タイヤに静電気が帯電している事をまだ多くの人が知らない。もちろん、タイヤメーカーは苦慮していて、その証拠は乗用車のタイヤ側面を見て下さい。側面には細かいスリットや模様がデザインされています。これは、放電しにくいゴムですが、放電量が足らないので、側面に模様を付けて少しでも放電量を増やそうとする苦肉の策です。
20年程前、その模様を見て「何でこんな模様があるのだろう?」と疑問に思っていたのが、除電をやっていて答えが分かったのです。
何せ、トヨタのディーラーの元整備士に、マジ軽ナットの話をした際に、「タイヤが車体の静電気を路面に逃がす役割もある」と言ったら、「それって、本当ですか?」と言われました。整備の知識もいいけれど、一体何を学んだのでしょうか?私は学生の時には知っていました。
除電の基本はタイヤから。別途ショップBASEで簡単に購入出来ます。