ひとり出版社をつくる⑱「本格スタートその1」
2020年9月1日に取次会社のJRCさんと契約(実際にはJRCさんとの覚書を投函した日)させていただいて以降、本づくりを本格化して11月末、ようやく当社一冊目の新刊本『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』を発刊できる状態になりました。
さかのぼれば2016年くらいから出版社設立の情報収集をはじめ、いまこうして出版社としての活動がスタートできたということで、9月1日以降の動きを項目別というか、時系列というか、何らかのくくりでまとめていきたいと思います。
●著者さんとのやり取り、本づくりのくくり
当社初の書籍の著者は「尾﨑里美」さんというかたです。神戸でイメージトレーナーとして活躍されたのち、現在は淡路島に移住されてますます元気いっぱい、難しい心理学の話を分かりやすくかみ砕き、お笑い芸人のように全力で笑いをとりにいく姿勢で語って笑って聞かせる稀有の人です。
そんな尾﨑さんと出会ったのは13年ほど前。以降、計3冊の書籍(『想像して創造する』『幸せの真実』『ちっちゃいおっちゃん』)を編集させていただきました。いずれの本も反響は大きく、読者の皆さんの人生が好転する嬉しいお知らせを多数、尾﨑さんから伺っていました。
時は少々流れて昨年秋、尾﨑さんの新しい拠点である淡路島の事務所に伺った際、尾﨑さんから「高橋君と一緒に『想像して創造する』の改訂版をつくりたい」と相談をいただきました。もちろんお受けするとともに、私から「それとは別にもう一冊、尾﨑さんのブログをもとにした本を出させてください」とお願いしてでき上ったのが当社初の書籍『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』です。
尾﨑さんのブログがスタートしたのは東日本大震災後の2011年6月。以降、10年にわたり読み続けて元気をいただくなか、「もっと多くの人にこの尾﨑さんのメッセージを伝えたい」と思ってきました。その10年の思いの集大成としてでき上った本だけに感慨深い一冊です。タイトルなど他の出版社さんではまず出せない(というか出さない)表現もありますが、大切な意味があるのでそれはまた別の機会に。
本書の編集はつぎのような流れで進めました。
この10年、読み続けてきた2000近いブログ記事を始めからすべて熟読し、ついでもう一度あらためて読み返しながら心に残るキーワードを赤字に。その後、赤字にした記事のみを抽出したうえ、今度は赤字の記事をテーマごとに振り分け。10数個に及ぶテーマの中から、コロナ時代にふさわしいテーマを5つ抽出し、そのテーマごとに振り分けられた赤字の記事の中からさらに書籍に収めるべき記事を厳選。
ここまでが記事の厳選作業です。2000近い記事と向き合ったので数か月を要しました。記事の数は、最終的に80数本になりました。
つぎに、抽出した5つのテーマを「章」にすることに決め、1章から5章の流れをまず検討。その後、各テーマ(=章)の記事を、本一冊の流れに乗せるために大幅に、全面的に編集。その編集の軸としたのは、ウィズコロナ時代に読者を勇気づける内容になっているかどうか。コロナ禍の今、読者に届けるメッセージとしてふさわしいかどうかを念頭に、緻密に編集作業を進めました。
この編集作業も数か月を要しました。(全精力をつぎ込む大変な作業でしたがそのプロセスや方法や思いを書きはじめるときりがないので割愛)
編集作業がひととおり終わったあとは著者確認です。尾﨑さんにとっては自分がかつてブログ記事として書いた内容ばかりですが、本一冊の流れに(かなり大胆に)編集されている新規原稿でもあります。編集後の原稿を著者に読んでもらうのはドキドキなのですが、尾﨑さんはしっかり目を通してくださって、加筆・修正を加えて内容を大幅にブラッシュアップしてくださいました。
この著者―編集者間での原稿の行ったり来たりを数回繰り返したのち、本文・DTPデザイナーさんに原稿を託しました。同時に、装丁デザイナーさんに装丁デザインのお願いも。(デザイナーさんとのやり取りは後述)
以上のように、コロナ時代にふさわしいコンテンツとなるよう記事を厳選し、構成を練りに練り、大幅に加筆・修正してでき上ったのが『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』です。
本書の章立てに、編集者としての私の意気込み、思いのすべてが込められているといっても過言ではありません。あとは「はじめに」かな。
アマゾンの販売ページや当社サイトで「目次」の画像をご覧いただけます。メイン画像の下に目次画像がついています。
※「はじめに」も試し読みができるよう準備予定。
ところで、2020年11月末という発刊時期は、著者との事前打ち合わせで決めました。理由は、その時期に尾﨑さんとジャズシンガー綾戸智恵さんとの1000人規模の講演会が開催される予定だったからです。その講演会でお披露目しようと。ところがコロナで中止に。いろんな予定がコロナで変わりましたが、コロナがやってきたからこそ本書が誕生した、ともいえるかもしれません。
●デザイナーさんとのやり取りのくくり
私は、10年ほど前までは編集者としても本をつくっていましたが、フリーランスライターとして独立後は主に書籍ライターとして執筆メインでした。だから今回の処女作をつくるにあたっては、いちから自分でデザイナーさんを決め、発注させていただくことにしました。
最初に書店を回り、ピンときた書籍を片っ端から手に取り、クレジットを確認してはメモ。すると、パッと手に取ったデザインを何作も手がけているひとりの装丁デザイナーさんがいらっしゃいました。
同時に、本文デザインも一冊一冊確認し、フォントの種類やサイズや強調文字の感じ、文字数や行数、文字間隔や上下のホワイトスペースの空き具合、目次や章扉、柱のデザインなど……とにかくパッと見た印象を大切に何冊も何冊も確認。その結果、これ!という本文デザインを手がけたデザイナーさんがいらっしゃって、さらにその本の装丁を上記の装丁デザイナーさんが手がけているという奇遇が。
そこで、連絡先を調べてお二人のデザイナーさんに思い切って連絡を取りました。ダメ元でした。だって立ち上がったばかりの出版社で、実績もなく今回が一冊目で、しかも所在地は兵庫の田舎で、信頼してもらえるかどうかわからなかったので。
ところが、結果的にお二人とも快諾してくださいました。久々の書籍編集でいろんなことを忘れていたこともあってぎこちない進行になってしまいましたが、想像以上の素晴らしい書籍に仕上げてくださいました! もう感謝しきれません!
●印刷会社とのやり取りのくくり
印刷会社を選ぶにあたっても、基本的にはデザイナーさんを探すのと同じ方法をとりました。書店を回って手に取った書籍+自分が持っている本の奥付をひたすら確認し、いいなと思う本を手がけている印刷会社を数社リストアップ。
そのすべての印刷会社にお見積りを依頼し、結果、見積金額だけでなく、一連のやり取りを気持ちよくさせていただいた印刷会社さんに決定。たまたまこの時期に『本のエンドロール』(印刷会社を舞台にした本づくりの話)という本を読んでいたこともあって、出版社の対応の不備で印刷会社さんにご迷惑をおかけすることはしないよう心がけました。
もっといえば、編集者の対応で各工程の流れがスムーズに運ぶかどうかが決まるので、次工程の人に迷惑をかけないよう、段取りは一生懸命考えたつもりです。
印刷のもろもろは忘れてしまっていることも多く、「分かりません」と正直にお伝えして、初歩的なことから丁寧にご説明いただきながら印刷工程を進めました。そんな私をバカにすることなく、とても親身になって対応していただいた印刷会社さんにも感謝です!
どの時期に何を決めて、何を印刷会社に伝えたらいいのかすらもわからなかったのですが、印刷会社のご担当者のサポートで大きなトラブルもなく進めることができました。
●校正・校閲のくくり
これまで自分で校正・校閲の専門家に発注した経験がありませんでした。自分が書いた書籍の原稿が担当編集者経由で校正・校閲のチェックにかかるケースは数多くありますが。
ということで、校正・校閲を依頼できる方も探さないといけません。やはり基本的にはデザイナーさんや印刷会社を探すとき同様、書籍のクレジットを参考にすることに。あとはネット検索もしたかな。
個人の方にお願いする方法もありましたが、校正・校閲に関しては僕自身まったく知識も接点もなく、最初は専門の会社に依頼することにしました。
最終的に2社に絞り込んでメールし、お見積りもをいただいたりしてお願いする会社を決定。校正だけでなく、事実確認などの校閲作業も依頼した結果、すごく丁寧にチェックの手を入れていただき感動。同時に、「俺はこの仕事は絶対できないわ」と思いました。
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何らかのくくりでヴワアと書き始めた結果、まったく書き終わらないのできょうはこのあたりで。編集者らしく、noteの記事も編集すればよいのですが。すみません。
次回、取次会社JRCさんとのやり取りや流通のお話、書店営業のお話を中心につづっていきます。