グラッサー著「テイクチャージ-選択理論で人生の舵を取る」の紹介
1、「テイクチャージ」の位置づけと特色
①「選択理論を自分が実践するために」という視点で書かれた本
本の原題は、「あなたの人生は、自分で引き受けなさい(管理しなさい、担当しなさい、面倒を見なさい、等)」(Take Charge of Your Life)というところかなと思います。
副題は、「選択理論心理学を使って、あなたが必要とするものを手に入れる方法」(How to Get What You Need with Choice Theory Psychology)と名付けられています。
個人(本人)が、自分の私生活、家庭、職場、学校のクラスなど、身近なところで、選択理論を実践することに焦点を当てて、選択理論とは何かということと、どのようにして選択理論を実践するのかという方法について書かれた本です。
読者にとって、「選択理論を自分が実践するために」という視点で書かれたものとして、選択理論の文献の中では、基本書といわれる「グラッサー博士の選択理論」についで重要な本だと思います。
私たちが選択理論を実践する当事者(本人)の立場で、どのようにしたら、基本的な欲求をよりよく満たしながら、良好な人間関係と、より自分らしい生き方、より自由な生き方をし、自分のさまざまな願いごとを実現して、手に入れたいものができるだけ手に入るようにできるのか、今よりも幸せになれ、精神的健康(メンタルヘルス)を保てるのか、などについて、選択理論の「ものの見方、考え方、行動の仕方」が、わかりやすく書かれています。
この本では「自分がコントロールできることに焦点を当てて、自分の人生を舵取りしていくこと」が大きなテーマになっています。
自分はどんな思考と行為を選択するのが、自分の理想の人生にとって効果的かを考えたり、自分の気分や感情をどのようにしてセルフコントロールしたいかについて関心のある人に最適です。
② 自分が選択理論を使うときの「選択理論の活用マニュアル」
特に、この本の第17章は、「選択理論の活用方法」となっており、自分自身が選択理論を実践していくときのマニュアルのようなものとなっています。7ページほどの短い文章ですが、要領よくまとまっており、非常に参考になると思います。
2、テイクチャージで「大きな疑問」が解けました
ところで、ここから筆者独自の、理論的にマニアックな領域に入りますが、私(筆者)にとっては、この本が選択理論を理解する上で、ものすごく重要なものとなりました。その理由を以下述べます。
選択理論の一番の基本書といわれる「グラッサー博士の選択理論」の第13章では、選択理論の簡潔な全体像が「選択理論の10の原理」という形で、短い文章でまとめられています。
そして、そこでの「第1の原理」は、次のように、
「私たちがコントロールできる行動は唯一自分の行動だけである」
(グラッサー博士の選択理論P.548)原文「The only person whose behavior we can control is our own.」
となっています。この表現に、私は、ものすごく引っかかってました。
私の疑問は、選択理論が内的コントロール心理学であるというのならば、
なぜ、一番最初に「私たちは自分の行動をすべて内的コントロールによって選択している」という趣旨の言葉が来ないのか?、という疑問でした。
そのような言葉がないと、上記の「グラッサー博士の選択理論」の第13章の「選択理論の10の原理」は、冒頭から、「すごく大事なこと(選択理論が内的コントロール心理学であるということ)が抜けているのではないか?」という違和感が、ずっとぬぐえませんでした。
そこで、グラッサーの他の書籍の類似の表現部分をいくつか見てみたところ、この「テイクチャージ」の、該当する表現のところでは、
「私たちのすることはすべて選択であり、唯一変えられる行動は自分自身の行動だけである」(テイクチャージP.13)原文「We choose all we do, and the only person’s behavior we can control is our own.」
という表現になっていたのです。
選択理論が内的コントロール心理学であるというならば、こちらのように、「私たちのすることはすべて選択であり」というような、「行動の内的コントロールの考え方」についての文章が一番最初に置かれることが重要であり、その方が、論理的に筋が通って理解しやすいのではないかと思えます。
3、選択理論の二つの基本原理
そこで、上記のテイクチャージの表現の方が、私自身にはすごくしっくりと理解できますので、私は、自分が選択理論を伝えるときは、選択理論には、次の2つの基本原理がありますと説明することにしました。
(選択理論の基本原理1)
私たちは自分の行動をすべて内的コントロールによって選択している。
(選択理論の基本原理2)
私たちがコントロールできる行動は自分の行動だけである。
この2つをまとめて、一文にすると、「選択理論の基本原理」とは
「私たちは自分の行動をすべて内的コントロールによって選択している。そして、私たちがコントロールできる行動は自分の行動だけである」
ということになります。
上の基本原理1の方は、
私たちの行動は、自分の外側のことにコントロールされる(決められる)のではなく、私たちは、自分の基本的欲求を満たすために、自分の行動を内側でコントロールし、選択していること、
という、選択理論の「行動の内的コントロールの考え方」を述べています。
一方、基本原理2の「私たちがコントロールできる行動は自分の行動だけである」の方は、
「私たちは、自分以外の他者の行動を外側からコントロールすることはできない(相手を変えることはできない)」
という、「他者(の内的行動システム)に対する外側からのコントロール(外的コントロール)の不可能性」についての考え方を述べたものです。
そして、こちらの基本原理2こそが、選択理論の最も重要で、ユニークな考え方であり、
「相手(他者)を外的コントロールしてはならない」(なぜなら、相手は相手の内的システムで行動を選択しているので、相手のシステムを外側からコントロールしようとしても無駄である)」
「無理に相手(本人)を外側からコントロールしよう(変えよう)とすると、本人の基本的欲求を阻害し、抵抗や逃避を招き、本人がこちらとの関係を遠ざける可能性がある(自分と相手の人間関係が悪化する)」
という、選択理論の「人間関係を改善するための基本原理」というべきものといえるでしょう。
繰り返しになりますが、上の基本原理1と基本原理2の考え方は、「私(行動する本人)」の側から見て、
① 自分の行動はすべて自分が内的コントロールによって(自由に)選択している。相手は、自分(こちらの)の行動をコントロールすることはできない。
(⇒自分の行動選択の自由)
② 自分は、相手の行動を外側からコントロールすることはできない。相手の行動は、相手が内的コントロールによって自由に選択している。
(⇒相手に対する外的コントロールの不可能性)
ということを述べていることになります。
ということで、記事の後半は、筆者のマニアックな、理論な関心について、この「テイクチャージ」という本が「謎解き」の役割を果たしてくれたという話でした。
さいごに
「筆者の選択理論の理解」については、私自身が、選択理論を納得して使いこなしたいために、独自な理解をしているところがあるかもしれません。その場合でも、そのような理解の根拠となるグラッサー等の文献の出典については、原文も含めて、今後とも、明示していきたいと考えています。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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