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幕前

三つ子の魂百までと生まれて初めて聞いた時、私は三つ目がとおるの写楽くんが長生きをするのだなと漠然と思った。
『三つ(目の)子の魂(が)百まで(長らえる)』と思ったのだろう、多分。
祖母と父が家の中でやたら諺や慣用句を使う人たちだったものだから自然とその習慣は私にも受け継がれ、結果私は学校でも職場でも、どこに行っても「おばあちゃんかよ」と突っ込まれる。



初めて人形というものに魅せられたのは忘れもしない、高校二年生の頃。
学校の帰りに寄った旭屋書店の美術書コーナーに置かれていた、恋月姫氏の作品集だった。
表紙を見た瞬間、目を疑った。
世界にこんなにも私の理想とする〝うつくしいもの〟が具現化しているだなんて、信じられなかったのだと思う。
吸い寄せられるように指が動いて本を手に取り、ページを繰った。どの作品にも、息をするのを忘れるくらい圧倒された。
一緒だった友達に「帰ってきてー」と言われたのを覚えている。
もう二十年も前の話なのに、あの体験と衝動だけは鮮やかだ。
その時初めて、球体関節人形というものを知った。



次に人形の存在に強く惹かれたのは2000年のPARCOのCM——そう、ブライスだ。
初めて見た瞬間、
『かわいい……!!!!』
……とはならなかった。
それはあまりにも強烈な違和感だった。
『頭でっか……!!!!』
ただひたすらその一言に尽きた。
何なら最初は怖かった。
色使いはポップだし、雰囲気もアメリカンだし、とにかく何から何まで私の守備範囲にない造形とテイストだった。
(当時の私はロマンティックやゴシック、耽美・退廃的なものをこよなく愛する、前髪ぱっつん姫カットのロリィタであった、と言えば、守備範囲外も然もありなんとご理解頂けるだろう)

しかし、好みというものを飛び越して、なぜか気になる。
何だろう。
何なんだろうこのお人形。
色んな写真を見れば見るほど、様々な表情がある。
なるほど、フォトジェニックではあるなと思い始めた頃には、もうハマっていたのだと思う。
ブライス自身が持っている魅力というものが、私の嗜好の垣根を蹴り壊して飛び込んできた。やはり多くの人を魅了する存在というものは、そのものが持っているパワーがとても強いのだなと実感した体験だった。
初めてお迎えしたのがベルベット・メヌエット。
その次がMILKコラボで、うちにいるのはこの2体だけだ。


ブライスにハマったことで、色んなお人形オーナーさんの個人サイトを見て回るようになった。
そうして知ったのがユノアクルスシリーズだ。
長くなるため詳しくは別記事で触れようと思うが、一時期取り憑かれたようにネット上で写真を漁っていた。
とにかく欲しくて欲しくて堪らなかったがお迎えには至らず、私の所謂『人形者』としての活動はブライスで長らく時を止め、そのまま終わる——筈だった。
とあるタイミングで、この方の記事に出会うまでは。

長くなるため、リカちゃんについてもまた後述するとして。
十数年を経てつくづく思い知ったのは、
『とにかく私はかわいくてきれいなものにとことん目がない』
ということ。
そして
『人間本当に好きなものは、いつまで経っても変わらない』
ということ。

三つ子の魂百まで、とは本当によく言ったものだ。

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