高円寺エレクトリックサマーSHOCK【発掘音楽調査ファイル 7】
みなさま、ごきげんよう。
私の名前は酉果らどん。
これまた久しぶりの発掘音楽調査ファイルである。
夏真っ只中、と言いたいところだが、東京はあいにくの雨模様が続いている。
しかしながら、こころにはいつでも陽が差している。
今日は搾りたてのレモンのような爽やかさと甘酸っぱさを感じるアルバムをご紹介。
MOMOZONO / 半夏生
半夏生は2022年に東京で結成されたスリーピースバンド。
各々音楽活動を行っていたメンバーが集結。
結成当初はVo.ヤハタトシキがベースボーカルを務めていたが、メンバーチェンジに伴い現在のスタイルを確立する。
結成2年とは思えないほどのグルーヴを感じさせる。
バンド名の由来である「半夏生」は「太陽の黄経がちょうど100度になった日」を意味するらしい。ちなみに今年の半夏生は去る7月1日である。
西日本では半夏生の日に合わせてタコを食べるのが習慣だそうだ。
半夏生の「半夏」とは漢方にも用いられる薬草で、別名「カラスビシャク」と呼ばれるサトイモ科の植物である。つわりや喉のつかえに用いられる。
生で食べると舌が痺れるような感覚になる。
1. 夏の第一発見者
夏をUMAのように捉えているところにセンスが光るタイトル。
過ぎゆく日常の中で、自身の中で湧き上がる感情と葛藤に板挟みになっている様子が歌詞の中で丁寧に描かれている。
5月は五月病も相まって、鬱屈とした気分になる方も多いのではないだろうか。
しかし、この曲を聴けば夏の入り口まで手招きしてくれる。
個人的にお気に入りの歌詞は「ロードー・メイト」という単語。
「職場の人」や「同僚」ではなく、和製英語風のユーモア溢れる単語がなんだか戦友のような誇らしい気分にさせてくれる。
2. 部屋を出よう
おそらく夜に外へ出かける様子が描かれている。
確かに、飲みに行く予定やライヴに行く予定のある日の玄関は格別にどきどきする。
誰かと約束していたならなおさらだ。
そんなワクワク感がこの曲ではサウンドも相まって表現されている。
夜に出かけるのは悪いことではないのだけれど、なんだか悪いことをしているようで、人めを忍んでそそくさ歩く。
夢現なふわふわした感覚だけれど、大きな夢を持っていて、未来は希望に満ちている。
きっと、悪いことなんか起きないさ。
3. ないよね
初期衝動の感覚がそのまんま詰まっている楽曲だ。
この曲を聴きながら全力疾走したら気持ちいいと思ったので、雲ひとつない晴れた夏の日にやってみようと思う。
個人的には富士山まで行ける気がする。
4. げきてき
ギターのミュート音が水滴の滴る音に聴こえる。
外は晴れているのに、出られないやるせなさとか、もし出られたとしたら、こんなことがしたいなとか。
明るい曲だけれど、雰囲気は切なさに満ち満ちている。
テレビから流れる甲子園の選手たちも、もっとたくさんの観客に見守られながら試合がしたかっただろうな。
5. 夏にしびれて
歌詞に登場する「囲桃園跨線橋」は東京都中野区にある跨線橋の名前である。
かの有名な文豪、太宰治もよく通った場所だとか。
この曲の主人公は仕事終わりに中央線沿線の道路を歩いているのだろう。
知り合いか思いを寄せている人かはわからないけれど、声をかければ良かったと後悔をビールと一緒に流し込んでいる。
風邪、ひいてたしなって言い訳したくなる気持ちもわかる。
6. Have a Good Holiday
前曲とは打って変わって冬の曲である。
冬の曲だけれど、どこか夏の残り香がするのは私だけだろうか。
白い息も出ているけれど、雪もちらついているけれど、
街の明かりの照明を頼りにステップを踏んでいる。
頬を伝う涙さえ、雪に変わってくれればいいのにね。
7. Paradiso
終わりを意味する「Fine」と元気ですを意味する「Fine」がかかっているのがかなりセンスが高いと感じる。
ヤハタトシキのソロではよく演奏されるナンバーだが、バンドサウンドで聴くとまたイメージが異なる楽曲である。
タイトルの読み方は「パラディーゾ」。
イタリア語で天国を意味する単語である。
英語ではパラダイス、スペイン語やポルトガル語ではパライソとも呼ばれる。
8. ブルーにまわりまわって
冒頭の歌詞にある、この世界だけがすべてだという絶望は何回も感じたことがある。
嘘だと言ってくれと言いたくなるような出来事が起きた時は、大抵このような心境になる。
自分の選択に自信がなくなっている時や、今がうまくいっていない時はネガティヴな思考が堂々巡りして、解決策や打開策を思いついてもやっぱり違うかもしれないとまたネガティヴ思考に陥ってゆく。
ポジティヴにと簡単に言うけれど、そんな簡単になれたらこんなに悩んでないよってね。
9. ちょうどいいところ
唯一のレゲエ調の楽曲。
聴いているとずっと太陽を浴びている感覚になる。
前曲が悩みに悩んで負のスパイラルに陥っているのなら、この曲はそのスパイラルを脱することができて解放された主人公の状態に違いない。
10. いつになったら
こちらの楽曲の季節は雪解けの時期といったところだろうか。
出会いと別れの季節。
ポップに歌い上げられてはいるが、聴いていると切ない思い出が溢れてくる。
さよなら、また会おうねという感じがアルバムのラストナンバーを飾るにはふさわしい楽曲である。
終わりに
いかがだっただろうか。
待望の初音源とのことで気合いの入ったナンバーがひしめき合う素晴らしい音源だ。
これからの夏のおともにぴったりだ。
今月19日には自主企画「夏にしびれて’24」が高円寺ロサンゼルスクラブにて開催される。
まだまだこれからの活躍に目が離せない半夏生。
ぜひ、たくさんの方に聴いてみていただきたい。