暴走族長ゾニィ 【地底帝国の詩 91】
向こうから改造したと思しき
カタツムリ型機動石器に乗って
暴走族が近づいて来た
ヤマトは息を呑んだが
他のふたりはただ黙って
その一部始終を観察していた
暴走族は近くに寄ってくると
彼らの身長はゆうに二メートルを
超えていることに気がついた
全員ヤマトの身長の三倍はあった
「やっぱりマテリカンの集団ね」
「マテリカンって何さ」
「わたしたちの世界にいる、高度な知能を持った種族よ。
ただ、ナイーブな気質の者が多いから、何かの拍子に衝動的な行動をとりがちね。
彼ら普段は温厚だから、こんなになるってことは余程ショックな出来事があったのでしょうね…。
それともうひとつ、彼らはああ見えて…」
タヅクリ博士も隣で静かにうなづいた
「よお、ネェちゃん。
オレたちの頭に声をかけてきたのはアンタか?」
黒いヘルメットがテンムスを覗き込んだ
「そうよ。ちょっと助けて欲しくて…」
テンムスは節目がちに切ない表情を浮かべた
「今騎士団に追われているんだよ。
そんな顔したって、助けてやれるヒマなんてこちとらないんだぜ」
「公社に用があるのだけれど」
テンムスは先ほどと打って変わって
何故かしたり顔で言った
「その名前を…二度と出すな…!」
黒いバイザーを上げると
黒目がちの大きい目がギョロリと
テンムスを睨みつけた
まさしく昔テレビで見たような
宇宙人のそれと同じような顔だった
「あら、このまま尻尾を巻いて逃げるの?」
テンムスはまたもや挑発した
「ん…だあああぁっ!!分かった分かった!
乗りな!
オレはこの族の長、ゾニィだ。
本来は一人乗りだからしっかり掴まっていろよ!
そこのジィさんはタクシーにでも乗っとけ」
「そう、義理堅い」
テンムスはヤマトの脳内に囁いて
後方に居るヤマトに振り返ってウインクした
そんな中
遠くから黄金騎士団が迫っていた
「こらぁ〜!年寄りを置いてくなぁ」
置いてけぼりのタヅクリ博士が
歩道でひとり怒鳴っていた
◆ 新事実 ◆
・テンムスは男の扱いに於いては、
なかなかの手練である。