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ずっと好きだったんだぜ 【Miracle Fanta詩 Ⅱ 313】
「おい!ライスワイフ!どこ行くんだよ!」
ホッキョクは
ライスワイフの駆け出した先の惨状を目撃して唖然とした
ドブナガも彼の様子を察したのか
気に病んだ顔をした
「キミがいるとコイツがどんどんデカくなるからね。
今のキミの状態なら特に。ライスワイフと一緒に行ってくれ。
ここはボクたち3人でなんとかするから」
「すまねぇ…。頼んだ…」
ホッキョクは申し訳なさそうな顔をしながら
ゆっくり師匠の方へ向かった
ドブナガも行きたかったが
目の前のニガマトをなんとかしなければ
この船は確実に地上へ大きな影響を及ぼすだろうと考え
泣く泣くこの暗黒生物の
巨大化を食い止めることを最優先した
ライスワイフがホークジョウのもとへ着いた頃には
マダムネヴァは既に息絶えていた
アストンの手によって確実に息の根を止められていた
何処からそんな力が出たのか
マダムネヴァの顔面は潰され
アストンの拳は真っ赤に染まっていた
そして彼の周りには黒いモヤが渦巻いていた
自分でも制御出来ないほどの負の感情が
アストンの心の中には渦巻いていた
その後はどうしたらいいか分からず
ただただ呆然とその場に立ち尽くしていた
「おい!アタイの声が聞こえるか!起きろ、バカヒゲ!
まだ寝る時間じゃねぇだろ!」
ライスワイフはホークジョウを無理やり抱き起こし
自分の膝枕に載せた
「……よぉ、ライスワイフじゃねぇか……。
膝枕なんて…、今日はやけにサービスがいいんだな…」
「うるせぇ!喋んじゃねぇ!
寿命が縮むだろ…!傷…、塞がないと…!」
「やめろって……。もういいからさ……。
大丈夫だから…。こういう…、なんか慌ただしいの…、嫌いなんだよ…。
ゆっくりさせてくれ…」
「うるせぇっつってんだよ!ホントに死にてぇのか!?
ぶっ飛ばすぞテメェ!!」
ライスワイフが怒鳴った瞬間に
辺りは見覚えのある海岸の景色に変化した
ホークジョウの胸の傷も消えており
ライスワイフもあどけない少女の姿をしていた
「あぁ…これでゆっくり出来るぜ…。
人との関わりって…疲れるよなぁ…。
だからよく自分の幻術で作り上げた空間で遊んでたんだけどよ…、
やっぱ、つまんねぇぜ…ひとりは…」
「おい、なんのつもりだ。
遊んでる場合じゃねぇんだぞ」
「お前は本当に面白いやつだったなぁ…。
毎日祭りに来てるみてぇな感覚だった…。
お前がオレの元を去ってからは…、正直、惰性で生きていた…。
最早余生だったのかも知れねぇ…。
あの後色んな女と会ったけど、全然面白くも何ともなかったなぁ…」
「……」
「当たり前のように見てたけど…、オレがあげたマフラー…、
ずっと持ってくれてたんだな…。
記憶なくした時も着けてるって…、どんだけだよ…」
ライスワイフはふと
頬に温かいものを感じたが
その後はもう何が何だかわからなくなって
抑え切れなくなってしまった
「プレゼント…、生まれて初めてそんなの貰ったから…。
違う…、好きな人にもらったものは何よりも大切なんだよ…。
アンタのこと…、ずっと好きだったんだぜ…?
好きじゃなきゃ…膝枕なんてしてやらねぇだろ…。
だから、そんなもう死ぬみたいな風にしてんじゃねぇよ!
やめてくれよ…!死なないでよ…!
お願いだからさ…」
ライスワイフの膝枕には
ホークジョウの温かい血液が拡がっていた
辺りはさざなみの寄せて返す音が
微かに聞こえるだけで
それ以外の音は
何ひとつ聞こえなかった
もうここは
完全にふたりだけの世界だった
「生きたい気分は…やまやまなんだが……、
天使の連中が…地団駄踏んでやがるんだよなぁ……。
どうにも見てられなくってな…。
お前みたいに…魂だけこの世界に残すことが…出来るんなら…、
何とかなんのかも…知んねぇけどなぁ…」
「わ、わかった!どうやってやるんだ?
アタイをどうやってこの世に繋ぎ止めたんだ!?
教えてくれ!今からやってみせるから!」
ライスワイフが必死になって聞いたが
ホークジョウは黙りこくったまま
彼女の顔をただただ見つめていた
それから
ライスワイフの顔を引き寄せて
静かにキスをした
「……っ!?」
「…すまん……、忘れた……」
ホークジョウの幻術は徐々に解け
呆然と立ち尽くしたアストンと
膝から力無く崩れ落ちるホッキョクの姿が
そこにはあった
ライスワイフの膝の上の
ホークジョウは
安らかという言葉を体現したような
そんな顔をしていた
ライスワイフは暫くの間泣き続けたが
何かを悟ったかのように泣き止み
すっくと立ち上がった
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