ホッキョクは
ライスワイフの駆け出した先の惨状を目撃して唖然とした
ドブナガも彼の様子を察したのか
気に病んだ顔をした
ホッキョクは申し訳なさそうな顔をしながら
ゆっくり師匠の方へ向かった
ドブナガも行きたかったが
目の前のニガマトをなんとかしなければ
この船は確実に地上へ大きな影響を及ぼすだろうと考え
泣く泣くこの暗黒生物の
巨大化を食い止めることを最優先した
ライスワイフがホークジョウのもとへ着いた頃には
マダムネヴァは既に息絶えていた
アストンの手によって確実に息の根を止められていた
何処からそんな力が出たのか
マダムネヴァの顔面は潰され
アストンの拳は真っ赤に染まっていた
そして彼の周りには黒いモヤが渦巻いていた
自分でも制御出来ないほどの負の感情が
アストンの心の中には渦巻いていた
その後はどうしたらいいか分からず
ただただ呆然とその場に立ち尽くしていた
ライスワイフはホークジョウを無理やり抱き起こし
自分の膝枕に載せた
ライスワイフが怒鳴った瞬間に
辺りは見覚えのある海岸の景色に変化した
ホークジョウの胸の傷も消えており
ライスワイフもあどけない少女の姿をしていた
ライスワイフはふと
頬に温かいものを感じたが
その後はもう何が何だかわからなくなって
抑え切れなくなってしまった
ライスワイフの膝枕には
ホークジョウの温かい血液が拡がっていた
辺りはさざなみの寄せて返す音が
微かに聞こえるだけで
それ以外の音は
何ひとつ聞こえなかった
もうここは
完全にふたりだけの世界だった
ライスワイフが必死になって聞いたが
ホークジョウは黙りこくったまま
彼女の顔をただただ見つめていた
それから
ライスワイフの顔を引き寄せて
静かにキスをした
ホークジョウの幻術は徐々に解け
呆然と立ち尽くしたアストンと
膝から力無く崩れ落ちるホッキョクの姿が
そこにはあった
ライスワイフの膝の上の
ホークジョウは
安らかという言葉を体現したような
そんな顔をしていた
ライスワイフは暫くの間泣き続けたが
何かを悟ったかのように泣き止み
すっくと立ち上がった
◀︎ 前頁◀︎
▶︎次頁 ▶︎