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希望の閃光 【Miracle Fanta詩 Ⅱ 327】
こちら魔導炉室
アストンとミナミ、ホッキョクは
制御不能になったニガマトの脅威に晒されていた
「マズいぞ…。このままだと飲み込まれちまう。
オイラはこんな気味の悪い生きものに取り込まれて死ぬのなんてごめんだね」
皮肉混じりにホッキョクが苦し紛れに嗤った
ミナミが纏っていた黒いオーラは
アストンが抱きしめたことにより治っていた
アストンは心配そうに空を覆うニガマトの影を警戒していた
「ドブナガは大丈夫かな…。ちょっと遅い気もするけど…」
その刹那
魔導炉室の防壁が
煉瓦が崩れるようにバラバラに砕け落ち
見覚えのある飛空船が姿を現した
アストンの胸に顔を埋めていたミナミも思わず顔を上げ
轟音の方を振り返った
「意思号だわ…!」
ミナミの顔は希望の色を取り戻していた
雑草魂の魔法使いたちの飛空船、ウィードの意思号
船頭の二角獣のモニュメントには
傷ひとつ見当たらず微光を携えている
それどころか謎のオーラのようなものも纏っている
緑、はたまた青
はたまた桃色
見るごとに変わるその色には見覚えはなかった
アストンたちに迫っていたニガマトを
意思号はその船頭の二角獣の角で突き抜けた
すると黒い液体のような物質が飛散しながら
ニガマトの身体は一部欠損した
意思号はアストンたちをニガマトから覆い隠すように
地上付近に滑り込んだ
「みんな!早く乗るんだ!」
なかから出てきたドブナガが叫んでいた
ドブナガはアイウェオの能力によって空中浮遊していた
「浮いてる…!?」
ホッキョクは見たことのない現象に驚きを隠せなかったが
そんなことで驚いているヒマはなかった
アストンとミナミ、ホッキョクの三人は
すぐさま船へ向かおうとしたが
三人が動き出そうとした途端に
ドブナガの周りを取り囲んでいる不思議なオーラが
三人にも付与されていた
無重力になったかのように
三人はふわふわと意思号に吸い込まれていった
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