騎馬とバイク【地底帝国の詩 92】
テンムスはゾニィのバイクに
ヤマトは他のマテリカンのバイクに乗った
だがしかし
ゾニィの言った通りひとり乗りなので
ほぼライダーに
しがみついているような状態に近かった
背後からは
追って来た黄金騎士団の騎馬が
三体ほど走っていた
「んで?公社へ行きたいと」
「そうよ」
「あんなところ行ってどうする?」
「そこにはわたしたちの探しているものがあるの」
「と、いうのは?」
「鏡の断片よ」
「おっとそりゃまずいな。
きっとそんなもの社長のヤツの手に渡っていたら
今頃すぐに利用されてるぜ」
「あなた、やっぱりあそこの研究員だったのね」
「ああそうだとも。オレたち全員そうさ。
だがな、社長のヤツ、
オレたちが研究開発した成果を
まんまと横取りして自分のものにしやがった。
集団ストライキを起こして
ヤツらの技術を利用して
復讐しようと計画していたところだったのさ。
ちょうど手間が省けてイイ感じだぜ」
「そうかしら〜?
わたしたちが居なければ
動き出さなかったんじゃない?」
「んなこたねぇよ!
オレたちマテリカンの誇りにかけて、
やってやるって決めてたんだぜ?」
「そこ違法車両集団!
公道脇に停車し投降しなさい!」
馬型機動石器の口から人間の声がした
「んなこと言われて停まるかよ!
このまま公社までぶっちぎるぜ!」
勾玉光輪を中心とした
増幅エンジンの回転数を上げ
|カタツムリ型機動石器《バイカルゴ】は
さらに加速した
「ゴールは公社の玄関よ。
ド派手にやってやりなさい!」
テンムスはゾニィに発破をかけた
騎馬とバイク
一見すると有機物と無機物だが
どちらも有機物であり
そしてまた無機物である
地底の石は意志を持つのだ
騎馬隊を一気に振り切り
石造りの公道を駆け抜ける
漆黒の狼たちは
刹那
黄金塗りの門を突破し
公社の通門を横滑りした
ガッシャアン!!
公社オフィスのロビーに
ガラスの雨が横殴りに降り注ぎ
悲鳴の嵐が沸き起こった
◆ 新事実 ◆
・地底帝国の石は意志を持つ。
洒落のようだが紛れもない事実。