
痛み分け【Miracle Fanta詩 Ⅱ 312】
マダムネヴァは途端に
自らの腕を氷の刃へと変化させ
無防備なアストンへ向けてそれを放った
「ぐっ…」
「え…?どうして…?」
「あ…やべっ、つい…な…。
お前…魔法…効かねぇんだっけか…、はは…。
忘れてたや…」
マダムネヴァの氷の刃は
ホークジョウの腹を貫いていた
じわじわと衣服が紅く染まってゆき
冷たい鉄の床には生命の素が滴り落ちていた
「アタシも…そうやって助けて欲しかっただけなのに…。
振り向いて欲しかった…だけなのに…!」
マダムネヴァは
潰れた顔で隠れた瞳から涙を流した
心なしかホークジョウの血液からも
マダムネヴァの涙からも
湯気が出ているように見えた
それからマダムネヴァは
自らの腹も氷の刃で貫いて
真っ赤な血を滴り落としていた
「ごめんな…。気づいてあげられなくて…。
いや…、気づいていたけど…知らないフリしてた…。
傷つけちゃならねぇと思ってな…。どうすれば分からなくて…正直怖かったよ…。
そんな眼、手に入れなくても…、お前が本当のダイヤモンドなんだけどな…。
そっか…、ダイヤモンドだったら…傷ついた方が磨かれるのか…。はは…。
気づかせてくれて…ありがとな…。
ただ…、オレが愛したのは…彼女だけだったから…」
動揺するアストンの向こうには
顔面蒼白のライスワイフがこちらを呆然と見ていた
彼女の脚は条件反射的にホークジョウの下へ
即座に動き出していた
◀︎ 前頁◀︎
▶︎ 次頁▶︎