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船長から艦長へ 【Miracle Fanta詩 Ⅱ 322】
その頃ライスワイフは
ブリキ造りの甲板を
落ちそうになりながらもよじ登っていた
辛うじて飛び出てる
鉛のはしごのようなものがあったが
それも錆びついて劣化しており
今にも折れそうだった
「高いとこは別にヘーキだけどさ、こりゃ高すぎんのよ!
怖いとかどうのってゆう度を越してんの!」
ライスワイフは
ひとりツッコミをかますと
渋々ニガマトの本体の居る
魔導炉室の方へ
足を踏み外さないよう
注意深く移動した
目下には
すでにヤスメヤセンの街が見えていた
コントロールを失った暗黒物質と
石薔薇の魔女の作戦は
このままだと成功してしまう算段だ
ところどころ
ニガマトの触手のようなものが
突き出ており
ただでさえ巨大で威圧感のある
冬籠りのクジラ号が
邪悪な神話生物のように変貌していた
クジラ号は既に魔導炉が
やられているので
墜落するのは時間の問題だった
かつてライスワイフは
稲妻船団の船長をやっていたが
そこで使っていた船は
ダイナモを人力で漕ぎながら
電磁浮遊するタイプのものだった
今はもう
その要領でやるしかないと
ライスワイフは思っていた
稲妻船団の船長と
ウィードの意思号の船長を経て
彼女は今
コントロールを失った
冬籠りのクジラ号の艦長であることに
違いはないだろう
「さてと…やりますか…!」
ライスワイフは
ありったけのプラズマを
艦の外側を包み込むように
放出させた
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