”新 企業の研究者をめざす皆さんへ”を読んで
読んだ理由
企業研究者として6年目に入り、研究とは関係の無い日々の業務に追われることで、「”企業の研究”とは何か?」と自問自答するようになった。会社の上司や同僚は、すでに会社の色に染まってしまい、客観的な意見・判断ができないので、自分を客観的・俯瞰的にみるためにこの本を読むことにした。
概要
”企業の研究者のあるべき姿や注意点”が、作者の研究者としての長年のキャリアを元に描かれている。
企業の研究者の誰もがぶつかるであろう、”テーマ選定”や”研究プロセス”、”仕事の効率化”など様々な事柄に対し、具体的な解決策を提案している。
興味
日本の大学・大学院では、「研究のやり方」に関する教育・訓練がなされない
⇒研究は①良い問題(研究課題)を選ぶ、②問題を解く、③結果を価値につなげる、の3ステップから構成される
①「良い問題(研究課題)を選ぶ」には…
・世の中にインパクトを与えられるかを考える
・多くの人の研究内容や考え方に触れる
・お金を生み出すまでのシナリオを描く
②「問題を解く」には…
・諏訪良武氏の「タテとヨコの質問」をしてみる
・仮説生成フェーズなのか仮説検証フェーズにいるのか意識する
・仮説検証中は、別の仮説に飛びつかない
③「結果を価値につなげる」には…
・研究計画を立てる段階で、結果のアピール方法を考える
・現時点利益にならなくても、”まとめる”ことで将来の利益になる
どんなくだらない論文でも、たくさん論文の出てくる研究所から、創造的な仕事が生まれてくる
⇒論文の投稿には、先行文献調査をし、研究計画を立て、研究成果を客観的・論理的・科学的に主張し、英語でまとめるといったプロセスを通る。そして論文が採択されるには、査読されるため、その分野のエキスパートからコメントがもらえる。その過程が、研究者にとって重要。
どんな技術も、ほかの新しい技術が現れるにしたがって、その価値は相対的に低下していかざるをえない。自分の技術分野にしがみつくことは、自分の価値を相対的に下げているかもしれない。
⇒”価値”の隆盛が激しい現在では、顧客価値を創出しない研究テーマは無価値である。すぐに研究テーマを変えるべき。
企業の研究は、”必要だから”やっている。
新しい分野に取り組むと、急峻な学習曲線で新しいことを覚えられる。
※自分が成長できないのであれば、転職も視野にいれるべき
解が存在しないのであれば、前提条件を疑うのも重要な戦略
⇒「必ず解が存在する問題設定」をしてきた日本の学生には、ビジネスで直面する問題は、解が自明であるか、そもそも存在しないと思うことがほとんど。この場合、アウトオブボックス思考が役にたつ。
感想
「研究」に対する本を初めて読んでみて、大学では「研究はする」けど、「研究がどういうものか」については学んでこなかったことを知った。これを読んでも当時理解はできなかったかもしれないが、伝えてもらっていれば少しは変わったかもしれない。
そして、この本は自分だけでなく、所属する会社をも客観的に見させれてくれる。明日なにをすべきかを示してくれているよう。
読書期間 2022/4/5~2022/4/16
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