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春になれば。

 僕には一人、親友と呼べるような男がいる。
小学生からの縁で、中学はもちろん高校まで同じだ。
彼は小沢蓮と言ってまあ、そこそこ顔のいいヒョロ系男子だ。
まあ僕も同じような見た目だから人のことは言えないが。

高校二年の春が来て、懐かしかった中学生活もいい感じに美化されて
付き合うとか付き合わないとかで悶々としたあの青すぎる青春の日々を
僕は思い返すことが多くなった。
高校というのはなんというか、中途半端で。
それならいっそのこと、思い切りガキっぽく振った方が
僕としてはやりやすいというか。

まあ、この大人でも子供でもない感覚が
高校生という言葉に集約されているんだろう。
周りを見ても、そのどちらでもない状況の人間ばかりだ。
おそらくは僕もそうだろう。
僕から観測した蓮もまた、そのような傾向にある。

「なあ、修。」

僕の名前は修という。オサムではなく、シュウだ。
だからいつも一緒にいる蓮と合わせて「レンシュウ」などというグループ名をつけられてもいた。いつだって僕たちは本番だ。

蓮は少しだけウキウキとした顔をして、僕に話しかけてきた。
「なんだよ。どうしたの。いいことあった?」
僕もそれに釣られて楽しい気分になる。
「うーん、ちょっとさあ、明日時間ない?」
蓮はそう言って不気味とも言える微笑みを浮かべた。
「明日?ああ、全然いいよ。どしたの。」
「実は、この春休みから俺格闘技習い始めたんだよ。」
「ええ?マジで?」
「そう。それが結構楽しいからさあ、修も遊びにおいでよ。」

蓮はそう言って、学生服のワイシャツの襟元を手で触れた。
見るとはなく見るとそこにはアザみたいなものが色濃くできていて、
彼の手が無意識にそれを隠そうとしているのがわかった。

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