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4月もよろしくお願いします。

『裏切りの街角。』


「いやほんと、ちょっと出てくれるだけでいいからさあ!頼むよよっちゃん!!この通り!!!ギャラも弾むからさあ!!!」

久しぶりにかかってきた電話口で、北田はそう言って静寂を作った。
彼の真後ろを電車が駆け抜けていく轟音が聞こえる。

俺はもう今はフリーランスのプロレスラー。
仕事を選ぶつもりはないが北田と仕事することはリスクがあることを知っている。
いつもロクな仕事を回してこない。前回連絡してきた時は「怪奇派とのシングルマッチだよ。見せ場あるよ。」などと甘言甚だしく誘ってきて、まんまとそれに乗ったら動物園でのワニとのプロレスが待っていた。

危うく腕を食いちぎられそうになったことを、俺はすっかりまだ怒っている。

「今度はキリンと空中戦でもやりますか?」
俺は皮肉を込めてそういった。

「いやーほんとごめんって。今度はちゃあんと人間。人間相手のプロレスだ。しかも女の子だよ。可愛いよ。十代だもん。」

「なんですかそれ、ちゃんとできるんですか?」

あまりにも胡散臭い。

「当たり前よ!よっちゃんにとって悪い話じゃねえからさ!な!頼むよ!」


まあ、俺だって生活していくのに潤沢というわけではない。
いろんなことがあってプロレス稼業もそれだけでやっていくには随分厳しくなっているのは事実だ。こんな胡散臭いおっさんでも、たまに仕事をくれるというのはありがたいのだ。

「わかりましたよ。」

背に腹は変えられない。
俺は少しやるせない気分で、そう返答をした。

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