呼吸の温度。3
血の気がひく。
明はそう言わざるを得ない気分で昨日からの時間を過ごしていた。
クラス全体がどんよりと落ち窪んでいくような、沈み込んでいくような。
呼吸が浅くなって、冷たくなっていくようなそんな感覚に支配されていた。
誠が死んだ。
たった数日前に、明は森にある洋館の話を誠にして、その2日後。
誠があの森の中で死んでいるのが発見された。
家に帰らない誠を不審に思った両親が警察に相談し、捜索網が敷かれ森の中で倒れているのを発見されたのだ。
明の家にも取り乱した誠の母親から電話がかかってきた。
誠の母親の取り乱した声と、明に何か知らない?と尋ねる、すがるような声。
明はとっさのことで言葉をなくして、「ううん、僕、何も知らないよ。」と答えてしまった。
もし、誠の死に自分の責任があったら?
明はもしかするととんでもないことを誠に伝えてしまったのかもしれない。と、思って気が気ではなかった。
一日経って、二日経って、明はことの真相を確かめずにはいられないような気分になってきた。
徐々に平穏を取り戻していく日常の中で明だけは、誠のことをいっ時たりとも忘れることができないのだ。
明は、その日。
ようやく行動する勇気を取り直して、自転車に跨った。
あの日、誠が通ったであろう足跡を辿り、
明は夕焼けが訪れる少し前にあの国道沿いの森へ向かう狭い道に突っ込んでいった。
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