永遠のかけら。
ようやく、というほど待ちわびてもいないうちに冬は去り
その足音が雪の上を縫うように紡がれていくのを眺めていると
穏やかな暖かい風と、桜の花びらに肩を叩かれて春がやってきた。
振り返れば去年の春の面影が自分の中に浮かび上がっていくのを認める。
新しい季節というのは常に心を前に向ける。
しかし同時に振り返らざるを得ない過去の影を目の前に突きつけることでもある。新倉真也は5年前の春の事を、その季節の匂いの中で思い出していた。
まだ真也が幼き中学一年生のことだ。
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