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そのカラクリを僕は知らない。

 僕には友達がいる。

それは、まあ、今やアイドル。と呼ばれる職業についている。
僕と彼女は中学の頃からの友達で、そのころの彼女はただのクラスメイトだった。
確かに可愛らしくはあったが、もっと派手で明るくてモテるような女の子は他にたくさんいた。僕はそんな彼女とは波長があった。

柔らかくて優しい子だった。

きっといいお母さんになるんだろう。

そんなふうに思っていたから
彼女とは違う学校だったけど、高校に上がって
彼女がアイドルになったと聞いた時は信じられない気持ちになった。
人生って何が起こるのかわからないんだな。と、その時初めて思った。
彼女は彼女の名前のままでテレビに映っていた。

中学の時の彼女とは、少し違っていた。
特徴的だった眼鏡をコンタクトに変えて、
髪型も、随分とイメージを変えていた。
「あれー?これ、真冬ちゃん?テレビに出るようになったの?まあね、お母さんは見ぬいてたわよ。あの子、大人になったらすんごく可愛くなるって。」
テレビをぼやっと見つめている間に、いや、言い方が違う。
テレビの中の彼女に見惚れているうちに、
母親がどこからともなくやってきて、画面を見るなりそう言って立ち去っていった。この家にも、彼女はきたことがある。
お行儀よく、うちの母親は彼女のことを痛く気に入っていた。

「あんた、お嫁にもらうならああいう子だよ。いくら見栄えがよくたって人間の大事なところがダメな子はダメ。あんな素敵な子を素敵だと思える男になりな。」

母親はそう言って機嫌良さそうに台所に向かったものだ。

ああ、何だ。あいつと俺の人生はずいぶん離れていってしまったな。

僕はテレビに映る彼女を見て、そう思った。

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