
「こんなはずでは」という。
大きな空を眺めていた。
大きな空だなあ。
小さな空というのは、ないから
この大きな空というのが空なんだなあ。
僕は、橋本康太というどこにでもありそうな名前の僕は
朝。学校の屋上に大の字に寝転んで、
そんな取り止めもないようなことを思っていた。
例えば、ニューヨークで眺める空と
ここから見上げる空というのはやはり同じなんだろうか。
この大きな、大きくても一つしかない空を僕と同じ今のこの時間、
どこか遠いところで眺めている人がいるだろうか。
取り止めのなさを、僕は見て見ぬふりをして
ただ呆然と時間が過ぎていくのを待っていた。
自殺防止のための高いフェンスが
なんだか僕の人生のこれから先に纏わっているようで
いささか気分は憂鬱を拡張したようでさえあった。
キーン・・・・コーン・・・・
ああ・・・・。チャイムがなっちゃった。
僕にとって、朝のこの時間。
ここだけがなんとなく浮遊できる時間だった。
浮世離れできる、自分だけの時間。
気がつけば学校の正門から昇降口に至るまでには生徒たちの登校してくる様子が見受けられた。予鈴で焦るやつはいない。
ドヤドヤとこの世の春を謳歌する中学生たちの群れだ。
ああ。嫌になる。僕みたいな、落ちぶれた天使のような奴が
どうしてこんな愚民どもと一緒に並んで没個性の最中に投入されなければならんのだ。
もちろん。
頭の中で繰り広げられる
この誰様へのウケを狙うわけでもない、
純粋にイタい言葉の並びも。
この年齢に起因するものだと僕は知っている。
橋本康太という世を忍ぶ仮初の名前の裏側に張り付いた、
ダークマターエクソシズム・フライハイアウェイ
という僕の本名を書き記したノートを何年後かに見返したらそれだけで死にたくなることも知っている。
知っているとも。
しかし、そうでもしないとやっていられないのだ。
ここ、今ここ!この瞬間から放課後に向けての深遠長大なカウントダウンが始まるのだ。
ああ。嫌だ。嫌になった。
クラスに行きたくない。
しかし僕は本礼を聞く何分も前に、自分の席にちゃっかり戻っている。
アホだ。
何がそんなに嫌かというと、、だ。
僕は実はとある部活に所属している。
来るべき世界戦争に向けて今のうちから体を鍛えておかなければならないというシン・日本男児の心得として柔道部に属しているのだ。
が、もう廃部寸前のそれは
僕にとって居心地の良い場所になるはずだったが
何を間違ったのか同級生に一人、全国レベルクラスがいたのだ。
しかも女。
しかも部員は僕とそいつの二人きり。
これが本当にやばかった。
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