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はじめてのさつじん。3

 「わあっ。」
生徒たちの声が耳に届く。
ただ学校の廊下を歩くだけで、
まるで、私が歩いた後に花が咲き誇るように
生徒たちの歓声と視線が追いかけてくる。

同い年の、同じ出身の、同じクラスの人たちも
まるで私のことを特殊な人物であるように遠巻きからじっと眺めている。

嫌な気持ち、というのはない。
誰だって自分が特別な人間のように扱われるのに気恥ずかしさこそあっても嫌がるということはない。しかし、同時に飽き飽きしているということもある。この高校で、入学してから3年の今になるまでずっと、この見た目のせいで特殊な扱いを受けている。
もうそろそろただの学友として見てくれてもいい、とは思う。

確かに、私は女という性別が持っている特殊性、美しさや可愛らしさという部分が人より秀でている自覚がある。街を歩けば毎秒スカウトの名刺が目の前に差し出される。県内には、私が知らないような学校にまで私のファンクラブがあるという。電車に乗っていても、どこからともなく携帯のカメラの音がカシャカシャと止まらない。おかげでずっと気を抜けない。

少し微笑みを漏らすと、そのカメラのシャッター音は勢いを増す。

そのせいで、友達らしい友達はいない。
誰もが私を特別視するおかげで、親しくなれる人は、いない。

孤独感というのが、どこまでも付きまとう。
本当の私ではない、虚像の私というのがみんなの中で一人歩きしている。
きっと、豪邸に住んでいてトイレにも行かない、聖人君子のような性格の私がみんなの中でうっすら微笑んでいるのだろう。

誰も、私のことを知らない。

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