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華やかな夜。

 気持ちの良い季節になった。

外に吹く風は新しい季節の到来を喜んで乱舞し、雲ひとつない夜空を見晴らす月に陰りはない。時折聞こえる窓の外の道をゆく車のエンジン音ですらもどこか軽快な響きを孕んでいるような気がする。

ふわりと春の風が部屋を通り抜けていく。
幾分殺風景なこの部屋もただそれだけのことで華やぐ。
移り変わっていく季節の様々な表情を、中原祐也はその部屋から眺めていた。

 「あ〜あ、また明日から巡業だよ。」

独り言はため息に混じって、その憂いとも喜びとも取れない響きは春の風に拐かされて消えた。


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