誰も知らない世界。
目を疑う。耳を疑う。
これは夢ではないのか、と、怪訝になる。
僕はそんな気分で目の前の景色を見ていた。
「最近この辺じゃ通り魔が多いらしいぜ。」
「おお、聞いた聞いた。なんか、闇討ち?みたいなのだって聞いたぞ。」
「何?闇討ちって。」
「何ていうか、通り魔は無差別に刺したりするけど、そういうんじゃなくて、ボコボコにするっていうか。しかも、男子高校生ばっかり狙ってるらしい。」
「うえ、やべえじゃん。」
「そうだよ、俺たちがやべえの。ヤンキーの仕業かなあ。お金目的だったら、やだなあ・・・。」
「まあカツアゲとかだったらね、」
「いや、お前家が金持ちだからって調子乗ってたらイカれちゃうよ?」
「そんなんじゃないけどさあ、理由があるならまだいいじゃん。」
「そう?理由があっても嫌だけど。」
「まあ、そうか・・。」
そんな他愛のない会話を友人としたのが今日の、昼。
もし午後の授業中に寝てしまってこの夢を見ているのなら、
早く覚めてほしい。本当に、そう思う。
だけど、そうじゃない。
僕にははっきりと午後の授業が終わり、放課後友達とゲームの話で盛り上がったり勉強と称して繁華街のスタバでダラダラしていた記憶がある。
そして今は、帰り道。
繁華街から家のある住宅地までを通り抜ける人通りのない道。
確かに、数日前から救急車やパトカーのサイレンがけたたましくなっていることに違和感を覚えはしていた。だけどどこか、他人事のように感じてしまっていた。
今、僕の鼓動は恐ろしく速い。
目の前の景色を説明すると、
一人の女の子が立っている。
ひと気のない場所。
つまり、民家もなければ店もない。
たまに通りの向こうを車が通るかもしれないけど、
怪談ならお化けが出そうな、ただの路地。
そこに、女の子がひとり立っている。
僕をじっと見ながら。
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