【臨床医学各論】子どもを取り巻くウイルス性感染症を正しく知って正しく恐れましょう
今回はウイルス性感染症を正しく知ろうがテーマです。
菌感染症は下記リンクにまとめておりますので、よろしければご覧ください。
ちなみに菌とウイルスってどんな違いがあるかご存知ですか?
ウイルスと菌の大きな違いが、細胞であるかどうか。菌は単細胞の生物で、細胞分裂により増殖します。一方、ウイルスは生物の細胞に感染し依存して増えていく生物と非生物のあいのこみたいな存在です。大きさは様々、細胞くらい大きいウイルスもあるので一概に括ることができません。
インフルエンザ
皆さんご存知インフルエンザ。
インフルエンザウイルスA/B/Cが発端となる、呼吸器に宿る感染症を指します。飛沫感染により鼻、口、目の粘膜から侵入し気道の炎症を引き起こします。
感染症法では5類感染症に分類され、39〜40℃の発熱が続いたのち、急速に解熱します。通常4〜7日で軽快に向かいます。
インフルエンザに罹患しているかどうかは迅速診断キットを用いると15分程度で結果がわかります。
なお、ワクチン接種による予防が有効とされています。
コクサッキーウイルス
エンテロウイルス属、コクサッキーウイルス。主に小児に感染し、不顕性感染(感染しているもが症状はない)も多いのが特徴です。
A群とB群のうち、A群はよく知られる手足口病、そしてヘルパンギーナ(水疱性口峡炎)を発症します。
手足口病は口腔の前方、手や足に水疱ができます。
また、ヘルパンギーナは所謂「夏かぜ」で、口蓋、扁桃といった口の奥に水疱ができ、発熱や咽頭痛を引き起こします。
麻疹(ましん)
麻疹ウイルスが上気道の粘膜に侵入し増殖する感染症です。飛沫や接触による感染で、感染症法では5類感染症に分類されます。
生後6ヶ月から3歳以下の乳幼児に発病します。
症状としては10〜12日の潜伏期ののち、カタル期にはコプリック斑という口の中、頬粘膜に小さな赤い斑点が現れることが特徴です。
その後発疹期、回復期を経て急速に解熱し発疹が消退します。
ワクチンにより免疫を精製することができます。
風疹(ふうしん)
風疹ウイルスにより発症する急性の発疹性感染症で、俗にいう「三日ばしか」です。感染症法では5類感染症に分類されます。
妊娠中に罹患すると先天性風疹症候群といって、お母さんからお腹の赤ちゃんに垂直感染することがあります。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
「はたらく細胞」にも登場する所謂おたふくかぜ!!
ムンプスウイルスによる飛沫感染で、耳下腺が腫れることからこの名がついています。主に小学生の間で流行します。
大人になって発症すると、膵炎のほか、男性不妊の原因となる精巣炎、精巣上体炎を発症することがあります。
病院で検査をすると、血清アミラーゼの数値が上昇します。これは炎症により血液中に膵臓から出たアミラーゼが流れ込んでしまうためです。
単純ヘルペス
単純ヘルペスはⅠ型(HSV -1)とⅡ型(HSV-2)があります。
今回ご紹介するのはⅠ型。1〜3歳で初感染し、口の中の粘膜に感染することにより口唇ヘルペス、歯肉口内炎、そして目の角膜ヘルペス等の疾患がみられます。
ヘルペスは痛いとよく聞くと思いますが、これは痛みを伝える神経である三叉神経節に潜伏していることから。抗ウイルス薬が投与されたら神経節に身を潜め、しばらくして落ち着いて宿主の免疫が低下したら活性化し再発しちゃいます。
なお、性感染症として知られるⅡ型はコチラの記事をご覧ください。
水痘・帯状疱疹
水痘、帯状ヘルペスウイルスによる感染症です。水痘というと馴染みがないかもしれません、いわゆる水ぼうそうです。
水痘
小児期に感染することが多い疾病です。10〜20日の潜伏期間ののち、発熱や皮疹が現れます。皮疹が特徴的で、
紅色丘疹
水疱
膿疱
痂皮
の過程をたどります。水ぼうそうと呼ばれる所以ですね。
帯状疱疹
水痘ウイルスが三叉神経、脊椎後枝神経節に潜伏し、再活性したものです。水痘の既往歴のある方のうち、7分の1の割合で罹患します。
宿主が血液疾患、癌、膠原病などに罹患し、免疫力が低下した際に再活性化した際に現れます。脊椎のある背中側、片側の神経の走行に帯状の水痘や神経痛が症状として出ることが特徴です。
罹患後は予後良好ですが、疼痛が数ヶ月〜数年残ることがあります。
国試の問題を解いてみよう
感染症について正しいのはどれか。(はき第29回-67)[臨床医学各論]
流行性耳下腺炎は空気感染する。
水痘は精巣炎を合併しやすい。
風疹は「三日ばしか」と言われる。
日本脳炎はネズミの媒介によって感染する。
<答え>
3.風疹は「三日ばしか」と言われる。
解説:
1.流行性耳下腺炎: ×空気感染 → 飛沫感染、接触感染
2.×水痘 → 流行性耳下腺炎
4.日本脳炎: ×ネズミ → 蚊
季節性インフルエンザウイルス感染症の特徴で正しいのはどれか。(はき第29回-44)[臨床医学各論]
ワクチンで感染を防ぐことができる。
膿性痰を認める。
感染経路は飛沫感染である。
潜伏期は1週間前後である。
<答え>
3.感染経路は飛沫感染である。
以上、子どもをとりまくウイルス性感染症、正しく知って、正しく恐れましょう。