見出し画像

デート商法事件

こんにちは。

 各方面で「恋人のふりをして商品を買わせるデート商法に気をつけよう」といった啓発がなされていて、国民生活センターのHPでは、デート商法を恋愛ゲームで体験することができます。

 いざ、体験してみると、デート商法も怖いのですが、息子がデート商法に引っかかったことを知ったオカンもめちゃくちゃ怖かったですね。
 さて今日はそんな「デート商法事件」(最判平成23年10月25日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 学校教師の独身男性は、電話で「ジュエリーに興味はないですか、商品を買わせることはないので意見を聞かせてほしいで~す」などの連絡を受けて、若い女性販売員と実際に会って、ガストで話すことになりました。女性は「交際したら♪将来、結婚したら♪」と言いながら男性の手を握るなど思わせぶりな言動をし続け、8時間にわたって宝飾品の購入を勧めていました。最終的に、女性の仲間が4人ほど集まってきて、指輪のサイズを測るなどして威圧的な態度で購入を迫ってきたため、男性は帰ると言い出せず、そのまま指輪3点の売買契約を締結してしまいました。さらにクレジット契約申込書にも署名押印をして、カード会社との間で、60回の分割払いで総額約219万円を支払う内容の立替払契約にも申し込みをしてしまいました。男性は支払総額約219万円のうち、106万円まで支払ったところで、カード会社に対して、加盟店管理調査義務の懈怠による不法行為や公序良俗違反を理由に、契約の無効を主張して支払った代金の返還を求めて裁判所に提訴しました。

2 男性の主張

 この指輪について、いくつかの宝石店のおっちゃんに鑑定しもらったら、全部併せて10万円程度と言われた。これは詐欺じゃないのか。このような手口での売買契約は公序良俗に反し無効であり、これと一体の関係にある立替払契約も無効である。そうでなかったとしても、退去妨害による困惑または不実告知による誤認の下で立替払契約の申込みをしていたので、消費者契約法によりその意思表示を取り消します。そして不当利得に基づいて、既払割賦金の返還を求めます。

3 カード会社の主張

 男性は、女性販売員と会うときに自ら預金口座と印鑑を持参していたことから、商品購入のリスクを承知の上で赴いていたと考えられます。また、宝石店が、契約の意思確認の電話をしたところ、無理矢理契約をさせられたなどの話を聞いていなかったことから、男性には商品購入の意思があったのではないでしょうか。さらに、宝石店では、売買契約締結後1年が経過しても、顧客からのクレームが正当であればキャンセル処理しているところ、男性は2年以上を経過した後に、初めてクレームを入れているので、商品を購入する意思があったと考えられます。
 また、消費者契約法に基づく取消権を主張されていますが、これは時効によって消滅していると思われます。仮に指輪の売買契約が無効になったとしても、弊社と締結した立替払契約が無効になることはありません。なので、こちらとしては未払割賦金の支払を求めます。

4 最高裁判所の判決

 個品割賦購入あっせんにおいて、購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても、販売業者とあっせん業者との関係、販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度、販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし、販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ、売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り、売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はないと解するのが相当である。
 よって、男性は、カード会社に対し、立替払契約の無効を理由として、既払金の返還を求めることはできず、残代金の支払義務を負う。

5 デート商法のワナ

 今回のケースで裁判所は、購入者と宝石店との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても、宝石店とカード会社との間に加盟店の1つであるという以上の密接な関係がなかったことから、購入者からの支払代金の返還は認められませんでした。

 デート商法の疑いがある場合には、すぐさま消費生活センターなどに相談することが重要です。ちなみにデート商法に関しては、消費者契約法4条により取消権を行使することができるようになっています。

【消費者契約法4条3項4号】
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
四 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。 

 ただし、追認をすることができるときから1年間、つまり相手からの連絡が途絶え、デート商法にひっかかったと認識した時点から1年経過すると取消権が時効で消滅してしまいますので十分に注意する必要があるでしょうね。

【消費者契約法7条1項】
第4条第1項から第4項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から1年間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。

では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?