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キャッチボール事件

こんにちは。

 キャッチボールのただしやり方について、考えたこともなかったのですが、ラミちゃん先生のベースボール講座で教えてくれるキャッチボールの極意を意識すると、本当にまっすぐボールを投げれるようになって驚きましたね。

 さて今日は、キャッチボールのボールが逸れて通行人にあたってケガをさせたことが問題となった「キャッチボール事件」(大阪地判昭和30年2月8日下民集6巻2号240頁)を紹介してみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 12歳の宮脇豊一少年は、大阪市大正区の空き地で山本達雄とキャッチボールをしていたところ、宮脇が投げたボールが斜めにそれ、鶏小屋で餌をあげていた広瀬ヨシエの左目にあたりました。ヨシエはすぐに大阪大学附属病院で手術を受けましたが、失明するに至りました。そこで、ヨシエは豊一の父である宮脇政五郎に対して57万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 広瀬ヨシエの主張

 豊一は、公道でしかも人の通行の多いところでキャッチボールをしており、豊一が何らの処置も講じずに漫然とキャッチボールをした結果、私にこんな怪我を負わせたので、過失がある。豊一は当時、小学6年生で不法行為上の責任を弁識する能力を備えていなかったので、豊一の親権者である政五郎は監督義務者として、57万円の損害賠償をする責任がある。

3 宮脇政五郎の主張

 息子が友人とキャッチボールをしていた場所は、公道上ではなく、高さ9尺の板塀で仕切られた空き地であって、その場所は株式会社駒井鉄工所が開放していたものである。息子の投げたボールは1回バウンドしたためキャッチャーが受け損じて、広瀬さんの目にあたったのである。子どもの遊び場として開放されている空き地内でいつものようにキャッチボールをしていたので、私には監督者としての義務を怠ってはいない。また広瀬さんは、空き地に入ったときに、豊一の方に何ら注意を払わずに話に夢中になっていたなど過失がある。

4 大阪地方裁判所の判決

 豊一の年齢は当時12歳であって、その年齢の程度においては一般に行為の結果が違法なものと弁識する精神能力に欠けているものと言うべく、豊一は行為の結果に対する責任能力はないものと断ぜざるを得ない。そうすると、民法714条により、豊一の親権者として法定監督義務者である政五郎は、豊一が広瀬ヨシエに加えた傷害の結果、広瀬の被った物的精神的の損害につき賠償をする責任がある。
 広瀬が鶏舎の前にきたときはすでに豊一らがキャッチボールをしていたのであるから、あるいはボールが後方に外れるような場合のあることを予想し、自ら進んで外れ球が当たることのないよう適当な措置を講ずるとか、または、広瀬は年長者であり、豊一らは若年で思慮分別も十分でないのであるから、広瀬としては豊一らの位置を変えさせるか、あるいは一時投球を中止させるなどして事故の発生を防止するよう注意すべきであったにもかかわらず、何の措置もとらず、漫然と捕手のすぐ後方で話に夢中になっていたことについて、広瀬にも過失があったと言わざるを得ない。
 したがって、慰謝料の額を算定するにあたって広瀬の過失を斟酌し、政五郎は広瀬に対して5万円を支払え。

5 キャッチボールでも注意が必要

 今回のケースで裁判所は、12歳の少年が軟球でキャッチボールをしていて、誤って他人にケガをさせた場合には、少年には責任能力がなくその監督者である親が代わりに損害賠償責任を負うとしました。
 キャッチボールをする際には、周りの人に危害が及ばないように十分に注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。 


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