HOYA事件
こんにちは。
20代のときに会社の株式を買って株主総会に出席したことがあったのですが、会社のオーナーとして社長に質問できるという仕組みを知った若造に衝撃が走りましたね。
さて、今日は株主が株主総会で膨大な議案を提出することが問題となった「HOYA事件」(東京高判平成27年5月19日金融・商事判例1473号26頁)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
HOYA株式会社はガラス及びセラミック製品などの製造販売をしていました。その創業者の孫で、HOYAの代表執行役と従兄弟関係にある株主は、会社の株式3万8000株のうち、株主総会における議決権を380個有していました。しかし、会社に対する不満からその株主は、取締役の解任や新規事業の創出、新たな執行役員の推薦などの株主提案を行ないましたが、会社や取締役らがそれを株主総会の招集通知に記載せず、議案として付議しないことを通知してきました。そのため、株主は株主提案権が侵害されたとして、会社や取締役らに対して330万円の支払いを求めて提訴しました。
2 株主の主張
会社法303条2項では総株主の議決権の100分の1以上の議決権、または300個以上の議決権を有する場合に、株主から会社に対して株主総会の目的としていない議題について、新たに提案することが可能だとされています。しかし、私が会社のために株主提案をしたにもかかわらず、議案が招集通知に記載されないだけでなく、議案の削減を強要されたり、内容が改変されて招集通知に記載されるなど、株主提案権が侵害されている。
3 会社側の主張
株主は、我が社のブランド独占使用権を付与している企業の役員が買春行為をしているなどと主張したり、ツイッターやブログで、我が社の特定の従業員を繰り返し非難するような書き込みを行なっていた。また、株主提案
議題・議案の提案が著しく多数で、かつ提案理由が長大であり、株主にこれらを全て検討させるのは他の株主に大きな負担を強いし、印刷費用、発送費用等で多大な負担を強いるので、株主総会で議案として付議しないことはやむを得なかった。
4 東京高等裁判所の決定
株主が平成22年の72期株主総会に関し提案件数の数を競うように114個もの提案をしたことは、株主が満足できる対応をしなかった会社を困惑させる目的があったとみざるを得ない。このことは、株主がその直前、ツイッターに、「株主提案の個数のギネスブック記録っていくつかどなたか 知っていますか?問い合わせ方法を誰か、知ってたら教えてください。」と投稿したことからも明らかであるというべきである。
株主が特定個人の個人的な事柄を対象とする倫理規定条項議案及び特別調査委員会設置条項議案を撤回しなかったことは、株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の趣旨に反するものであり、権利の濫用として許されないものといわざるを得ない。
そうすると、HOYA株式会社の取締役が72期不採用案を招集通知に記載しなかったことは正当な理由があるから、このことが株主に対する不法行為となるとは認められない。
よって、原判決を取消し、株主の請求を棄却する。
5 株主提案権の濫用的な行使
今回のケースで裁判所は、会社が株主の提案した議案の一部を招集通知に記載しなかったとしても、その提案が株主提案権を濫用するものであれば、損害賠償責任を負わないとしました。
会社を困惑させる目的で、あるいは1人の株主が膨大な数の議案を提案する場合に株主提案権の濫用的な行使とみなされる場合がありますので、十分に注意する必要があるでしょうね。
では、今日はこの辺で、また。
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