村木厚子冤罪事件
こんにちは。
今日は、障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、DMが大量発送された事件での冤罪が問題となった大阪地判平成22年9月10日を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
厚生労働省の課長であった村木厚子さんが、部下の職員や実体のない障害者団体「凛の会」の会長らと共謀し、「凛の会」が郵便割引の適用のある団体である旨などを記載した公的証明書の発行を部下に指示していたとされ、虚偽有印公文書作成などの罪で、大阪地方検察庁特別捜査部に逮捕起訴されました。
2 大阪地方裁判所の判決
主文:被告人は無罪。
検察官主張事実のうち、障害保険福祉部長の被告人に対する指示、被告人の企画課長補佐、企画課社会参加推進室長補佐、社会参加推進室社会参加係長、元係長上村に対する指示などの被告人と関係者とのやりとりに関する事実はいずれも認定することができない上、本件が石井議員から障害保険福祉部長に要請され、公的証明書を発行することが企画課内で決まっている「議員案件」であったとの事実も認定できず、被告人において、本件犯行を行う動機があったとの点についても認定できない。そのような事情に加えて、虚偽の稟議書等を上村が独断で作成していることなど、被告人が本件犯行を行うことが不自然であるとみることもできる事実や、被告人の指示なく、上村が独断で本件公的証明書を作成しても不自然ではないことを示す事情もみられることからすると、上村が、被告人の指示により本件公的証明書を作成した事実は認められない。その他、本件証拠及び証拠上認められる事実を総合しても、被告人が、上村あるいは凛の会の会長、発起人と、虚偽の公的証明書を作成し、「凛の会」側に交付するとの共謀があったと認定することはできない。
よって、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
3 大阪地検特捜部主任検事による証拠の改ざん
今回のケースで裁判所は、 厚生労働省の課長として、心身障害者団体用の郵便割引に関する公的証明書発行の職務に従事していた村木厚子さんが、その部下の職員及び実体のない障害者団体の会長等と共謀の上、部下の職員に指示して、その団体が郵便割引の適用のある団体である旨などを記載した内容虚偽の公的証明書を発行したとされる虚偽有印公文書作成・同行使被告事件について、団体の会長等その他関係者らの各供述は、客観的証拠に反するなどして信用できず、共謀は認められないとして、村木厚子さんを無罪としました。
村木さんは、地検に出向いて、簡単な取り調べをされて、否認したということですぐに逮捕され、その後も村木さんに対して長期間にわたって取り調べをし、村木さんが述べていないことを記載した調書にサインを求めたりすることなどが明らかになっています。また、村木さんが一貫して否認を貫いたこともあって、逮捕から150日以上たって4回目にしてようやく保釈請求が認められるという異例の事態にもなっていました。
冤罪事件を防ぐためにも、これらの事件に関心を持つことが重要でしょうね。
では、今日はこの辺で、また。