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編み物動画削除事件

 こんにちは。

 Youtubeの番組は、初期はメントスコーラなどに代表されるドッキリからスタートして、次第に教養番組が増えて、最後に医学情報の発信にシフトしていくと予想されていますね。

 これに比例して、YouTubeを支える人たちの間で、トラブルが増えていくことも予想されます。今日はこの点を考える上で、今日は「編み物動画事件」(京都地判令和3年12月21日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 富山県に住む女性は、ブックカバーやポーチを編む様子を動画で投稿していました。ところがそのうち2本の動画について、京都に住む別の女性が、自身の作成動画の著作権を侵害していると主張して、YouTube側に著作権侵害の申し立てをしました。その結果、YouTube側は京都の女性の申し立てを受け入れて、富山の女性の動画を削除する措置をとりました。これに納得がいかなかった富山県の女性は、京都の女性に対して不法行為を理由に約118万円の損害賠償を求めました。

2 富山の女性youtuberの主張

 30時間かけて作った動画が、著作権侵害の通知によって削除され、YouTubeからの警告で、チャネルが削除されてしまうのではないかとおびえたことから、多大な精神的苦痛を受けました。京都の女性は、編み物の作品や編み方が著作物にはあたらないことを十分に認識しながら、著作権侵害の通知をしたといえると思います。著作権侵害通知をする人は、事実関係を十分に調査し、証拠を検討して、通知を相当とする客観的証拠を確認した上で、これをすべき注意義務を負っていると思います。これらの確認を一切しなかった京都の女性には重大な過失があり、著作権侵害の通知自体が違法な行為にあたると思いますので、それによって被った精神的な苦痛に対して損害賠償を求めます。

3 京都の女性youtuberの主張

 不法行為に基づいて損害賠償をするためには、法律上保護される利益が侵害されていることが必要となります。しかし富山の女性は、チャンネルが削除されることにおびえたと言っていますけど、それは例えば「犬がこわい」といったような単なる不安感に過ぎず、法律上保護される利益ではないと思います。
 また、利用者間の紛争は、YouTube内の規約により解決する仕組みが設けられているので、こうした仕組みにより解決を図るべきだったと思います。YouTubeの規約では、異議申し立てにより容易に動画を復元することができることになっていて、異議申し立てが承認されないのは、私ではなくYouTube側の問題だと言えます。そうするとYoutubeの仕組みによって生じた事実上の不利益は、法律上保護される利益とはならないと思います。

4 京都地方裁判所の判決

 技術や手法といったようなアイデア自体は、著作権法による保護の対象と
なるものではない。京都の女性は、編み物の編み方を説明した動画の著作権侵害の成否について法的問題があることを認識しながら、独自の見解に基づき、双方の表現方法の同一性又は類似の如何にかかわらず、あえて著作権の侵害通知を行ったものと認めるほかはない。このような京都の女性の注意義務違反の程度は著しく、少なくとも重過失があったと認めるのが相当である。
 YouTubeにおける動画の投稿が、広告収益という経済的利益を目的とした活動の側面を有していることを踏まえても、動画の投稿・共有やこれを通じた他の利用者との関係によって、人格的な利益が生ずることは否定し難く、動画の削除やチャンネルの停止等により、こうした利益を享受できなくなることや、その可能性が具体的に生ずることにより、投稿者が精神的苦痛を受け、損害を被ることはあり得ると解される。
 よって、京都の女性による通報は不法行為にあたるので、富山の女性に対して約7万円を支払え。

5 YouTuber対YouTuberの裁判

 今回のケースで裁判所は、編み方自体が著作物にならないことを承知した上で、YouTubeに対して著作権侵害通知を行うことが、不法行為にあたると判断しました。
 また、富山の女性の動画が後に復活したことや、チャンネル停止の不安に対する慰謝料という心の傷に対する損害が問題となったことから、賠償金の額が少なくならざる得なかったという事情もあります。
 YouTubeでは著作権侵害の警告を3回受けると、アカウントの停止処分となりますので、YouTube投稿においては著作権を侵害しないように十分に注意する必要があるでしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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