マイカー通勤事件
こんにちは。
光岡自動車は、日本一小さい自動車メーカーであるにもかかわらず、50年以上もレトロで個性的な車を開発・製造してファンを増やしてきたことに驚きましたね。
さて今日は、自家用車で会社に通勤する途中に起きた事故で、会社の運行供用者責任が問題となった2つの事件(最判昭和52年12月22日裁判所ウェブサイト、最判平成元年6月6日労働経済判例速報1385号9頁)を紹介したいと思います。
1 帰宅中に自分の単車で起こした事故
九州電気工事株式会社の熊本営業所に勤務する内線工の赤星は、自分の単車で工事現場に向かい、仕事を終了して帰宅しようとしたところ、同僚が会社の寮に帰るための車を持っていないと知り、同僚を単車に乗せて寮まで送り届けてあげました。その後、赤星が自宅に帰る途中に、林田健一と事故を起こしてしまいました。そのため林田は、赤星が会社の業務の遂行をしていたことを理由に、九州電気工事を相手に損害賠償を求めて提訴しました。
2 最判昭和52年12月22日
九州電気工事株式会社熊本営業所に属する内線工の大半は、単車等の自家用車を有し、これを通勤のため使用するほか、しばしば営業所から、また、上司の指示があるときは自宅から工事現場への往復にも利用し、そのさいには自家用車を持たない同僚を同乗させることも多く会社は事故当時における赤星の単車の運行について運行支配と運行利益を有し、林田健一に対し自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
よって、九州電気工事の上告を棄却する。
3 帰宅中に自家用車で起こした事故
松山電設工業株式会社で働く電気工事士の竹本は、マイカー通勤が禁止されていたにも関わらず、自家用車で寮から作業現場に通勤し、仕事が終わって帰宅途中に、スピードを出しすぎで、西森が運転する対向車と衝突し死亡事故を起こしてしまいました。安田火災海上保険株式会社は西森の遺族に無保険車傷害保険契約に基づく死亡保険金を支払った後に、松山電設工業に対してその求償金の支払いを求めて提訴しました。
4 最判平成元年6月6日
松山電設工業は事故の際も含めて、ときに、竹本によつて加害車が寮から作業現場への通勤手段として利用されていたことを黙認し、これにより事実上利益を得ており、かつ、松山電設工業は竹本の雇用者として同人を会社の寮に住まわせ、会社の社屋に隣接する駐車場も使用させていたのであるから、加害者の運行につき直接又は間接に指揮監督をなしうる地位にあり、社会通念上もその運行が社会に害悪をもたらさないよう監視・監督すべき立場にあつた者ということができ、今回の事故は、同人が作業を終えて加害車を運転して、その現場から寮へ帰る途中に生じたものであるから、松山電設工業は加害車の運行供用者として自賠法3条本文に基き、事故によつて西森やその親族に生じた人的損害を賠償すべき責任があると言わざるを得ないとする原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
よって、松山電設工業の上告を棄却する。
5 運行供用者の責任
今回のケースで裁判所は、会社が従業員に対してマイカー通勤の指示を行い、ガソリン代や駐車場を提供していた場合や、マイカーの使用許可を与えたわけではないが、マイカー利用を認識しながら注意することもなく黙認し会社の寮に隣接する駐車場を使わせていた場合には、会社は従業員の通勤中の事故について運行供用者責任を負うとしました。
会社としてマイカー通勤を認めない場合には、マイカーの使用を黙認しないこと、使用禁止を文書で周知しておくこと、駐車場の提供やガソリン代の手当てをしないことなどが重要となるでしょうね。
では、今日はこの辺で、また。