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Tokyo Street Style事件

 こんにちは。

 20年前はテレビや雑誌の流行に踊らされて、ファッションに多額のお金をかけていましたが、デニムジャケットが再流行したときに「昔に買ったものと同じやん。そっか?!仕組まれとったんか」と、ようやく気づいた松下です(DBのトランクスのジャケットがカッコいいと思ってました)。

 さて今日は、東京のストリートスタイルを発信している日本ファッション協会がネットに掲載した写真をめぐって生じた事件(東京地判平成17年9月27日判例時報1917号101頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったか

 株式会社コロモ・ドット・コムの撮影担当者は、銀座界隈で歩く女性の姿を撮影していました。ある日、有名ブランド「DOLCE AND GABBANA」の服を着た30代女性の写真が、一般財団法人日本ファッション協会などが開設している「Tokyo Street Sytle(銀座)」というホームページに、本人の許可なくアップロードされていました。

 それを発見した女性が、写真掲載により精神的な苦痛を負ったとして、日本ファッション協会に対して肖像権侵害を理由に、損害賠償を求めたのです。

2 女性側の主張

 私の許可なく全身の写真を勝手にホームページに掲載されては困ります。服はパリコレに出品されたブランド品ですが、胸の部分に大きく赤い文字で「SEX」のデザインが施されていたのです。そのため、2ちゃんねるに「オバハン無理すんな」といった誹謗中傷の書き込みがなされたじゃないですか。だから、これによって受けた精神的な苦痛に対する慰謝料として330万円を払ってほしい。

3 日本ファッション協会側の主張

 銀座の公道上という一般的な公共の場所において、大勢の一般人が目にするありふれた光景を撮影しただけ(しかも歩いていた女性の服装を多くの人が目にしていたはずです)、サイトにも女性の氏名を掲載しておりません。

 また、他人の私生活を暴露するとか覗き見るといった低俗な行為ではない上、著名人の顧客吸引力にフリーライドするようなものでもなく、公益的活動としてのストリートファッション情報を発信しているだけで、これが表現の自由の行使の一環として社会的に相当と認められる活動であることは明らかです。

 さらに、誹謗中傷は第三者による独自の行為で、サイトヘの写真掲載と第三者による誹謗中傷との間には因果関係はありません。よって女性側に生じた損害について私どもは責任を負わないと思います。
 

4 判決の内容

東京地裁の裁判長:「本件写真は、女性の全身像に焦点を絞り、その容姿もはっきり分かる形で大写しに撮影されたものであり、しかも女性の着用していた服の胸部には『SEX』の文字がデザインされていたのであるから、一般人であれば、自己がかかる写真を掲載されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されたり、これをウェブサイトに掲載されることを望まないものと認められる。また写真は、女性の全身像に焦点を絞り込み、容貌を含めて大写しに撮影したものであるところ、このような写真の撮影方法は、撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合とは異なり、被写体となった女性に強い心理的負担を覚えさせるものというべきである。よって、女性の肖像権を侵害しているので、損害賠償として35万円を支払え」。

5 写り込み 

 この判決では、写り込みについても言及されています。つまり、撮影した写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合は肖像権侵害にならない可能性があるとしているのです。

 基本的には、写真撮影の際には本人の承諾を取っておくことが必要だと考えられますので、十分に気をつけましょう。

 今日はこの辺で、また。


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