小僧寿し事件
こんにちは。
超低位株の小僧寿しですが、昔は「ドラえもん手巻きセット」で人気を博していたことを思い出しましたね。
さて今日は、小僧寿しが他の会社の商標を侵害しているのかどうかが問題となった「小僧寿し事件」(最判平成9年3月11日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
大阪でおにぎりや寿司の製造販売をしていた株式会社入船は、「小僧」の登録商標を有していました。株式会社サニーフーヅは、持ち帰りの品としてお寿司の製造販売を行っており、後に株式会社小僧寿し本部との間でフランチャイズ契約を締結して、その加盟店となっていました。すると、入船は、サニーフーヅの使用する標章が、自身の登録商標に類似するとして、その使用の差し止めと損害賠償を求めて提訴しました。
2 入船の主張
わが社は、昭和32年に「小僧」の商標登録を受けた。サニーフーヅの「小僧寿し」や「KOZOSUSHI」、さらには「KOZO」などの標章は、わが社の登録商標と類似している。なので、その使用の差し止めと、損害賠償を求める。
3 サニーフーヅの主張
「小僧寿し」は、「株式会社小僧寿し本部」という社名の略称であり、フランチャイズチェーンを示すものとして使用している。小僧寿しチェーンは、外食産業では著名となっており、「小僧」と「小僧寿し」を一般の顧客が間違うことはないので、商標権侵害には当たらないはずだ。
4 最高裁判所の判決
入船の商標と小僧寿しの標章とを対比すると、外観及び称呼において一部共通する部分があるものの、小僧寿しの標章中の小僧の部分は独立して出所の識別標識たり得ず、小僧寿しの標章から観念されるものが著名な企業グループである小僧寿しチェーン又はその製造販売に係る商品であって、商品の出所そのものを指し示すものであることからすれば、小僧寿しの標章の付された商品は直ちに小僧寿しチェーンの製造販売に係る商品であると認識することのできる高い識別力を有するものであって、需要者において商品の出所を誤認混同するおそれがあるとは認められないというべきである。
原審は、サニーフーヅの標章のうち「KOZO」の使用は入船の商標権を侵害するとしながら、賠償を求める入船の請求を棄却すべきものとした。というのも、昭和53年以降、四国地域においては、一般需要者の間で「小僧寿し」の標章が小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンを表示するものとして広く認識され、相当大きな顧客吸引力を有していたのに対して、入船の商標は知名度がなく、顧客吸引力をほとんど有しなかったものであって、その商標権には財産的価値がほとんどなかった。商標法38条2項は、商標権者は、故意または過失により自己の商標権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる旨を規定する。その規定によれば、商標権者は、損害の発生について主張立証する必要はなく、権利侵害の事実と通常受けるべき金銭の額を主張立証すれば足りるものであるが、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができるものと解するのが相当である。したがって、「KOZO」の使用により、入船の販売する商品の売り上げにつき損害が生じたものと認められないことはもちろん、入船には商標権につき得べかりし利益の喪失による損害も何ら生じていないというべきである。
よって、入船の上告を棄却する。
5 損害不発生の抗弁
今回のケースで裁判所は、入船が持つ「小僧」の商標権侵害が問題となったときに、登録商標自体に顧客吸引力が全く認められず、それに類似する標章を使用しても売上に全く寄与していないことが明らかな場合には使用料相当額の損害は発生していないので、損害賠償請求が認められないとしました。
ただし、このような損害不発生の抗弁は例外的に認められるものと認識しておくことが重要でしょうね。
では、今日はこの辺で、また。