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こんにちは。

 ウルトラマンシリーズの生みの親の円谷英二さんは、アメリカのキングコングの映画に衝撃を受けて特撮を研究していたそうなのですが、そのアメリカのGHQから戦争を高揚する映画を作っていたとして公職追放されていたという事実を知って驚きましたね。

 さて今日は、日本とタイの会社との間でウルトラマンの著作権が問題となった「ウルトラマン事件」(東京高判平成15年12月10日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 タイ人のソムポートは、映画製作を学ぶために日本に留学し、東宝で円谷英二から特撮技術などを学んでいました。その後、ソムポートがタイに帰国して、チャイヨープロダクションという映画製作会社を設立しました。1974年に、株式会社円谷プロダクションとチャイヨーが合同で、インド神話に出てくるハヌマーンとウルトラ兄弟が怪獣軍団と戦う映画「ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団」という映画を製作していました。ところが、1995年にソムポートが円谷プロとの間で、ウルトラマンなどの9作品について日本国外で独占的に商用利用できるという契約を結んでいたと主張したことから、円谷プロはそのような契約はなかったことの確認を求めて訴えました。当初、東京地方裁判所と東京高等裁判所は日本の管轄ではないとして、円谷プロの訴えを却下しましたが、最高裁判所は日本で審理可能だとして差戻しました。円谷プロは差戻審で、チャイヨーに対して1000万円の損害賠償とチャイヨーに著作物の利用権がないことの確認を求めました。

(↓最判平成13年6月8日裁判所ウェブサイト)

2 円谷プロ

 契約書では、円谷プロダクション&エンタープライズとなっていたが、そんな会社は存在しない。その他にも契約書には不自然な点があることから、契約書はでっちあげで効力はない。チャイヨーが契約が有効だと主張して取引先に警告状を送りつける行為は、不法行為に当たるので、1000万円の損害賠償も払ってもらいたい。

3 チャイヨーの主張

 当時円谷プロは、資金繰りに苦しんでいたことから、私たちからお金を借りていた。その後、私がお金の返還を求めると、円谷は返済の代わりに、日本を除くすべての国で独占的にウルトラマンの著作物に関する配給権、制作権、複製権などを譲渡する契約を結ぶことを提案してきたので、私の子どもの誕生日のプレゼントとして契約書を交わしたのだ。
 しかも、契約書内の円谷の署名は真正なものであり、円谷エンタープライズ社名ゴム印、代表取締役名ゴム印も真正なものなので、契約は成立しているはずだ。

4 東京高等裁判所の判決

 円谷プロは、契約書の印影が、円谷エンタープライズの真正な代表者印の印影と異なる可能性が高い旨主張するが、両印影を1000倍に拡大しても、両者はほぼ合致していることが認められ、このことはむしろ、契約書に円谷エンタープライズの真正な代表者印が押印されたことを裏付ける事実というべきである。
 また、円谷プロは契約書の内容を全面的に肯定する内容の書簡を作成していることは、問題となった契約の成立を強く推認させる事実である。 
 よって、チャイヨーが日本以外の国においてウルトラマンの著作物についての独占的利用権を有することを確認する。

5 ウルトラマンの海外展開ができるように

 今回のケースで裁判所は、契約書の印影が1000倍に拡大しても代表者印と一致していることと、チャイヨー側に送った書簡の内容から、チャイヨーが日本以外の国でウルトラマンの著作物を独占的に利用できるとしました。最高裁も円谷プロの上告を棄却したので、いったんこの高裁の判決が確定しました。
 しかし、その後にチャイヨーが独占利用権をバンダイに売却していたことが明らかになったことと、2018年に円谷プロがアメリカでの裁判で勝訴したことから、現在ではウルトラマンの海外展開ができるようになっているようです。今後のウルトラマンシリーズの展開がとても待ち遠しいですね。
 では、今日はこの辺で、また。


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