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こんにちは。

 車の騒音対策として、窓に高密度の防音材を設置したり、窓用ワンタッチ防音ボードなどを設置することが有効だと知って驚きましたね。

 さて今日は、車の騒音や排気ガスが問題となった「国道43号線事件」(最判平成7年7月7日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 大阪と神戸を結ぶ国道43号線と阪神高速道路大阪神戸線の沿道に住んでいた住民152名が、道路からの騒音や排気ガスによって健康被害を受けたとして、国と阪神高速道路公団を相手に、騒音と二酸化窒素の敷地内への侵入の差し止めと、損害賠償を求めて提訴しました。

2 住民の主張

 私たちは、国道43号線や阪神高速道路を走行する車から発せられる騒音や振動、排気ガスなどで、多大な健康被害や精神的な被害を被っています。なので、人格権と環境権に基づいて、一定基準を超える騒音と二酸化窒素が住んでいる敷地内に侵入することの差止めと損害賠償を求めます。

3 国らの主張

 住民らによる差止請求は、我々に作為として様々な措置を求めるものにほかならず、請求の趣旨が特定されていないので不適法として却下すべきだ。また、国道43号線も阪神高速道路も公共性があるものであり、住民らが受けた被害も社会通念上受忍すべき範囲内のものであるので、損害賠償も差止も認められないはずだ。

4 最高裁判所の判決

 騒音等がほぼ一日中沿道の生活空間に流入するという侵害行為により、そこに居住する住民らは、騒音により睡眠妨害、会話、電話による通話、家族の団らん、テレビ・ラジオの聴取等に対する妨害及びこれらの悪循環による精神的苦痛を受け、また、問題となった道路端から20メートル以内に居住する住民らは、排気ガス中の浮遊粒子状物質により洗濯物の汚れを始め有形無形の負荷を受けていたというのである。他方、道路が主として産業物資流通のための地域間交通に相当の寄与をしており、自動車保有台数の増加と貨物及び旅客輸送における自動車輸送の分担率の上昇に伴い、その寄与の程度が高くなるに至っているというのであるが、問題となった道路は、産業政策等の各種政策上の要請に基づき設置されたいわゆる幹線道路であって、地域住民の日常生活の維持存続に不可欠とまではいうことのできないものであり、住民らの一部を含む周辺住民がこの道路の存在によってある程度の利益を受けているとしても、その利益とこれによって被る被害との間に、後者の増大に必然的に前者の増大が伴うというような彼此(ひし)相補の関係はなく、さらにこの道路の交通量等の推移はおおむね開設時の予測と一致するものであったから、国らにおいても騒音等が周辺住民に及ぼす影響を考慮して当初からこれについての対策を実施すべきであったのに、その対策が講じられないまま住民の生活領域を貫通する道路が開設され、その後に実施された環境対策は、巨費を投じたものであったが、なお十分な効果を上げているとまではいえないというのである。そうすると、問題となった道路の公共性ないし公益上の必要性ゆえに、住民らが受けた被害が社会生活上受忍すべき範囲内のものであるということはできず、道路の供用が違法な法益侵害に当たり、国らは住民らに対して損害賠償義務を負うべきである。
 しかし、道路の近隣に居住する住民らが現に受け、将来も受ける蓋然性の高い被害の内容が日常生活における妨害にとどまるのに対し、問題となった道路がその沿道の住民や企業に対してのみならず、地域間交通や産業経済活動に対してその内容及び量においてかけがえのない多大な便益を提供しているなどの事情を考慮して、住民らの求める差止めを認容すべき違法性があるとはいえない。
 よって、住民らの損害賠償請求は認容するが、差止請求は棄却する。

5 その後の和解

 今回のケースで裁判所は、国道43号線の付近で65ホン以上の騒音を受けている住民らに対しては騒音による睡眠・会話等に妨害を受けているとして損害賠償を認めましたが、差し止めについては棄却しました。
 その後、国側と住民らとの間で、訴訟での損害賠償請求額を上回る条件での和解が成立しています。国道43号線や阪神高速道路が交通や経済活動に必要不可欠なものというメリットと住民の被る生活上の被害というデメリットをいかに調整するのかということが問われていますね。
 では、今日はこの辺で、また。


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