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社会人サッカー4部リーグ事件

 こんにちは。

 昔、サッカーでPKを蹴るチャンスが来たときに、チップキックでカッコよくゴールを決めようとたくらんでいました。

 しかし、キーパーが一歩も動かず難なくキャッチされてしまった松下です(これほど恥ずかしいものはありません)。

 さて今日は、サッカーのプレー中に、相手のラフプレーでケガをした場合の法律問題(社会人サッカー4部リーグ事件、東京地判平成28年12月26日裁判所ウェブサイト)について考えてみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 原告は、千葉市内のサッカー場で、東京都社会人4部リーグの試合に参加していました。試合の後半に、右サイドバックのポジションから前方にボールを蹴り出し、右太ももでトラップして手前に落とし、もう一度、ボールを左足で蹴ろうとしたときに、相手チームだった被告から左のすねを蹴られて転倒しました。骨折の疑いがあったので、すぐさま原告は千葉県済生会習志野病院に救急搬送されました。その後、原告は、骨折などの大けがを負ったことを理由に、被告とその所属するチームの代表者を相手に、約689万円の損害賠償を求めました。

2 原告の主張

 被告は、私に向かって勢いのままに、スパイクシューズを履いた足の裏を向けて足を突き出してきた。このことから、被告が故意にラフプレーをしていることが明らかであり、そうでなくてもスパイクの裏という危険な部分を突き出すことにより、相手が負傷することを容易に予想できたはずだ。

3 被告の主張

 原告の足を蹴ろうとしたのではなく、トラップして足下から離れたボールを蹴り出そうと左足を伸ばしたものであり、私の足の動きに後れて原告がボールに向かって左足を蹴り出したため、原告のすねが私の足の裏側に蹴り込まれた感じになったのだ。だから、接触は予想できても、骨折するような事態まで予測することは不可能であった。また、サッカーは接触プレーが伴うスポーツで、参加者はケガをする危険性を受け入れているはずだから、相手選手に対して競技中にケガをさせても、加害者が故意又は重大な過失によりルールに反したと認められるような事情がない限り、損害賠償責任を負わないはずだ。今回の私の行為について、審判による警告処分や、ファウルの判定すらされていないので、違法な行為ではない。

4 東京地方裁判所の判決

 被告は、不用意にも足の裏側を原告に対して突き出すような態勢で挑んだために原告に傷害を負わせているのであって、故意までは認められないとしても、被告の過失は軽過失にとどまるものとはいえない。被告の本件行為は、社会的相当性の範囲を超える行為であって、違法性は阻却されないというべきである。よって、被告は原告に約247万円を支払え。

5 危険の受忍

 サッカーなどの激しいスポーツでは、競技者同士の身体的接触によりケガをする危険性があるので、競技中に被害者がケガをした場合には、加害者に故意又は重大な過失によりルールに反したと認められるような特段の事情がない限り、被害者も危険を受忍していたとされ、加害者には違法性がないとされています。

 今回のケースでは、スパイクの裏を見せて相手のボールを奪う行為が、軽微なルール違反ではないと認定されたことにより、損害賠償が認められました。スポーツをする際には、しっかりとルールを守ることが求められているので、十分に注意しましょう。

 では、今日はこの辺で、また。


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