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未成年者キャバクラ飲食事件

こんにちは。

 2022年4月1日より、成人年齢は18歳となりました。未成年者が親の同意なしに締結した契約は取り消すことができるのですが、18歳になるとこの取消権が使えなくなります。

 今日はこの取消権をさらに深く考える上で、「未成年キャバクラ飲食事件」(京都地判平成25年5月23日判例時報2199号52頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 16歳の少年は、同居している養父のアメックスプラチナカードを無断で持ち出して、キャバクラに通いつめ、シャンパンワターや高級ブランデーを注文するなどして、19日間で約642万円を使ったり、またホステスへのプレゼントとしてカードで約160万円相当のブランドバックなども買っていました。
 少年によるカードの使い込みを知った養父は、弁護士を通じてカードが親の同意なしに未成年者によって不適切に使用されたという理由でキャバクラに対してサービス契約をキャンセルし、カード会社からの約552万円の支払請求を拒絶できると提訴しました。

2 養父の主張

 息子は童顔なのに、クリスマスの一晩で225万円以上もお金を使っていたこともある。なのにキャバクラ側は、カード会社からの問い合わせに対して、カードの利用者は40代くらいに見えるとの虚偽の事実を伝えるなどして、悪意を持って息子にアルコールを提供していたのだ。だから私は未成年者取消権を行使した結果、高額なサービス料金を支払う義務はないはずだ。
そもそも、未成年者に酒を提供する契約は、風俗営業法や未成年者飲酒禁止法に違反するものなので、公序良俗に違反し、無効である。無効な契約であれば、カード会社に対しての支払義務もないはずだ。

3 カード会社側の主張

 少年は、お店で高価な酒のボトルを注文したり、ホステスにアクセサリーをプレゼントするといった大人びた行動をしており、またホステスが年齢を聞いたときに18歳と答えていたり、カードの名義人である養父の名前も名乗っていたりしておりました。少年は自ら成人であると嘘をついていたということは、民法21条の詐術により、未成年者取消権を行使できないはずです。 
 また、カードの会員規約には、「家族が窃盗犯人である場合には会員のカード利用代金債務は免責されない」とあるので、きっちりと代金を払ってもらいますよ。

4 京都地方裁判所の判決

 確かに少年は、お店において、高価な酒のボトルを注文したり、ホステスにアクセサリーをプレゼントするという行動をしているが、それらの行動は、大人びた行動というだけであって、積極的に年齢を偽るという行動ではない。成年者かどうか疑わしい風貌の少年について、風俗営業店側から年齢確認がされたことが一度もないことも考慮するならば、契約の未成年者取消しの可否を考える場合、健全な風俗を維持しようとする風営法の要請を犠牲にしてまで取引の安全の保護を優先すべき事情は何も見当たらないので、未成年者取消しを妨げる事情はない。未成年者取消しを許容すれば加盟店らに取引上の不利益が発生するかもしれないが、それは加盟店らにおいて甘受すべきものというほかない。 
 加盟店が少年の思慮不足に乗じ、巧みに働きかけたり、不正使用に便乗して高額な代金を発生させ、またカード会社の本人確認も不十分であることから、不正使用による損害を会員に転嫁することが容認し難いといわざるを得ず、カード会社の請求は、権利の濫用ないし信義則に反するものとして許されない。
 よって、カード会社の公序良俗に反しない部分にあたる約76万円の支払いのみを認める。

5 未成年者の詐術

 今回のケースで裁判所は、少年がホステス以外に、お店の従業員から年齢を聞かれたことがなく、また童顔であるという風貌だったということから、少年が積極的に成人であるとの詐術を行っていないとして未成年者取消権を認め、カード会社の確認不足を理由に請求の一部しか認められないとしました。
 このように法律上は、未成年者は保護の必要性が極めて高いと考えてきましたが、成人年齢が18歳になったことで、18歳ではこの保護が受けられないという点にも十分に注意する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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