ハンムラビ法典
こんにちは。
今日は、世界で4番目に古いとされるハンムラビ法典を紹介したいと思います。
紀元前1792年から1750年にバビロニアを統治したハンムラビ王が発布した法典ですが、アッカド語が使用され、楔形文字で記載されています。エリート層の自由人のアウィルムと一般自由人のムシュケーヌム、奴隷という身分で、適用されるルールが違うという特徴もあります。
この法典の中身を見れば、当時の人々の暮らしがはっきりと浮かび上がってくるのではないでしょうか。では、さっそく見ていきましょう。
<裁判>
第1条
もしある人が、他人を殺人の罪で告発しても、それを証明できないときは、告発者は死刑に処せられる。
第2条
もしある人が、他人を魔術の罪で告発し、それを証明できなかったとき、魔術で告発された者は川に行って身を投じ、もし川が彼を有罪とするのならば、告発者は彼の家を自分のものとすることができる。もし告発された者が無傷で出てきたのであれば、告発者は死刑に処され、告発された者は告発者の家を自分のものとしなければならない。
第3条
もしある人が訴訟において、偽りの証人を立てたり、自分の証言を立証しなかったときは、その訴訟が命に関する訴訟であれば、その人は死刑に処せられる。
第4条
もしある人が、穀物または銀に関係する法廷で、(偽って)証言した場合、その訴訟で科される刑罰を自身で負わなければならない。
第5条
もし裁判官が判決・裁決を下し、正式に署名して評決を確定させ、その後にその判決を変更していたときは、他の裁判官たちは、その裁判官が自分が下した判決を変更したことを立証しなければならない。その裁判官はその裁判で生じる請求額の12倍の罰金を払わなければならない。
さらに、他の裁判官たちはその裁判官を集会において、裁判官の席から追放しなければならない。彼は再び他の裁判官たちとともに裁判官の席につくことができない。
<窃盗>
第6条
もしある人が、神(殿)または王宮の財産を盗んだのなら、その人は死刑に処される。また盗品を彼の手より受け取った者も死刑に処される。
第7条
もしある人が、銀、金、奴隷、女奴隷、牛、羊、ロバ、あるいはいかなる物であれ、(他)人の息子あるいは(他)人の奴隷の手から、証人および書面の契約なしに購入し、あるいは保管のために受け取ったときは、その人は盗人であり、死刑に処される。
第8条
もしある人が、牛、羊、ロバ、豚、あるいは船を盗み、もしそれが神殿や王宮のものであるときは、その30倍を賠償しなければならない。もしそれがムシュケーヌム階層のものであるときは、その10倍を賠償しなければならない。もし盗人が賠償できないときは、死刑に処される。
第9条
もしある人が何かを紛失し、その遺失物が他人の手に渡ったときに、その遺失物を手にした人が「私は証人の前で、売主から購入した」と主張し、その物を紛失した者も「ならば、私の紛失品であることを知っている証人を連れてくる」と主張した場合、買主がその遺失物を売った売主と売買時の証人を伴い、また遺失物の主も証人を伴ったときには、裁判官は彼らの主張を検討し、当事者も神の面前で証言する。もし、売主が盗人であれば死刑に処され、遺失物の所有者はその紛失品を取り、買主は売主の家から彼が支払った銀を取り返すことができる。
第10条
もし買主が、売主と売買時の証人を連れてこず、唯一、紛失品の所有者が、彼の紛失品だと知っている証人を連れてきたときは、買主は盗人であり、死刑に処される。紛失品の所有者は、その紛失品を引き取る。
第11条
もし紛失品の所有者が、彼の紛失品だと知っている証人を連れてこなかったり、嘘をついたり、対立をあおったりしたときは、死刑に処される。
第12条
もし売主が運命(死刑)に従うならば、買主は売主に対する罰金として、訴訟費用の5倍に相当する額を取得することができる。
第13条
もし(原告あるいは被告となった)人の近くに証人がいないときは、裁判官は6か月以内の期限を定め、6か月以内に証人を連れてこなかった場合、その人は嘘をついたことになり、その人自身が責任を負わなければならない。
第14条
もしある人が、他人の幼い息子を盗んだ場合、その者は死刑に処せられる。
<奴隷>
第15条
もしある人が、宮廷奴隷か、宮廷の女奴隷、さらにムシュケーヌムの奴隷か女奴隷を、都市の城門から外に逃亡させた場合、その者は死刑に処せられる。
第16条
もしある人が、宮殿か、ムシュケーヌムのところから逃亡した奴隷または女奴隷を自分の家の中にかくまい、大声で告知する告知伝令官の布告に応答せず、外へ連れ出さなかった場合、その家の主人は死刑に処せられる。
第17条
もしある人が、野原で逃亡中の奴隷、女奴隷を取り押さえて、その所有者のもとに連行したときは、奴隷の所有者は彼に銀2シェケルを払わなければならない。
第18条
もしその奴隷が主の名前を言わないときは、王宮に連れて行き、その素性を調べ、持ち主に返さなければならない。
第19条
もしある者が自分の家の中に逃亡奴隷を匿い、その後に自分の手でその奴隷をとらえたとしても、その者は死刑に処せられる。
第20条
もし奴隷が捕縛者の手から逃げ去った場合、その捕まえ損ねた者は奴隷の所有者に対し、神の下で誓えば放免される。
<強盗>
第21条
もし他人が家に侵入してきた時は、その侵入している場所でその者を殺害し、穴をあけた場所に投げ出して住民に示すことができる。
第22条
もし人が強盗を働いて取り押さえられたのなら、その者は死刑に処せられる。
第23条
もし強盗を取り押さえられなかったのなら、強盗にあった者は、無くなった物をすべて神の前で明らかなにしなければならない。そして、強盗が行われたその地あるいは管轄の市とその市長は、彼の無くなった物を補償しなければならない。
第24条
もし失われたものが生命であれば、市と市長は彼の遺族に銀1マナを支払わなければならない。
第25条
もし人の家で火事が起こり、消火するために赴いた者が、家の持ち主の家具に目をつけて家財道具を略奪しようとするならば、その者はその火災の中に投げ込まれなければならない。
<兵役>
第26条
もし兵士あるいは按察官であった者が、国王から出征するよう命じられたにもかかわらず、行軍せず、あるいは傭兵を雇って彼の代理として派遣した場合、その兵士あるいは按察官は死刑に処せられる。それを告発した者は、彼の家を取得することができる。
第27条
もし兵士あるいは按察官が国王の城砦で捕虜となり、その後、自分の田畑と果樹園が他人のものとなって、その他人が経営していたときに、元の所有者が帰還して自分の都市にたどり着いたのであれば、その田畑と果樹園を彼に回復し、彼自身が経営を行うものとする。
第28条
もし兵士あるいは按察官が国王の城砦で捕虜となったときに、その息子が仕事を行うことができるならば、その息子に田畑と果樹園が与えられ、彼は父の仕事を行わなければならない。
第29条
もしその子が幼く、父の仕事を行うことができないなら、田畑と果樹園の3分の1をその母に与え、その母がその子を養育しなければならない。
第30条
もし兵士あるいは按察官が、自分の田畑や果樹園、家屋などをその事業の前に投げ出して放置し、その後に他人がそれらを占拠して、3年間その事業を行った場合、その者が帰還してそれらの返還を請求しても、それは決して認められず、その他人がそのまま継続して占拠し、その事業を継続することができる。
第31条
もし彼が、ただ1年間だけそれらを放置して帰還したのであれば、彼に田畑、果樹園及び家屋が返還され、自分の事業をすることができる。
第32条
もし兵士あるいは按察官が王の兵役についていたときに捕虜となり、商人が彼を自分の都市に返すための身代金を要求してきた場合、彼の家に十分な身代金があれば、そのお金で支払うが、そうでないときは、彼の都市の神殿が身代金を支払うものとする。いかなる場合にも、その者が所有する田畑、果樹園、家屋を身代金の対象としてはならない。
第33条
もし司令官あるいは将校が、勝手に徴兵の募集をおこなったり、あるいは国王の出征命令を受けたのに、代わりに傭兵を連れて出征したならば、その指揮官または将校は死刑に処せられる。
第34条
もし司令官あるいは将校が、兵士の家財道具を取り上げたり、兵士を虐げたり、賃貸料をうかせるために軍務ではないことに兵士を使ったり、訴訟において兵士を見捨てて有力者側に引き渡したり、国王が兵士に与えた報酬を奪い取った場合、その隊長または将校は死刑に処せられる。
第35条
もしある人が、国王が兵士に与えた牛や羊の群れを兵士から購入しようとする場合、たとえ自分の銀で支払っても、その対価を失うことになる。
第36条
いかなる場合も、兵士、按察官さらに徴税吏員の田畑、果樹園及び家屋は決して銀で売買されてはならない。
第37条
もしある人が兵士、按察官、徴税吏員の田畑、果樹園、家屋を買った場合、その契約は破棄され、かつその銀は没収され、その田畑、果樹園、家屋などは所有者に返還される。
第38条
兵士、按察官、徴税吏員の田畑、果樹園、家屋をその妻または娘に、決して譲渡してはならないし、自分の借金のために売却してはならない。
第39条
自分の妻や娘のために購入した田畑、果樹園及び家屋は、譲渡したり、自分の借金を返済するために売ることができる。
第40条
婦女子、商人、その他の財産所有者は、自分の田畑や果樹園を銀によって売却することができる。その買主も、購入した田畑や果樹園を活用することができる。
第41条
もしある人が、兵士、按察官、徴税吏員の所有物である田畑、果樹園及び家屋について売買契約を結ぶ、あるいは担保を設定した場合、その田畑、果樹園、家屋は兵士、按察官、徴税吏員に返還され、そこに設定された担保も取り上げることができる。
<田畑>
第42条
もしある人が田畑を耕作するために賃借し、その田畑で穀物を収穫できなかった場合、その者は、田畑で求められた作業をしなかったことになるので、責任を問われ、その田畑の所有者に、隣人の田畑(収穫高)に応じた穀物を与えなければならない。
第43条
もしその者が、田畑を耕さずに放置していた場合、借主は田畑の所有者に隣人の(田畑)に相応する穀物を与えなければならず、かつ彼が放置した田畑を馬鍬で耕し、田畑の所有者に返還しなければならない。
第44条
もしある人が原野の田畑を開墾するために3年間借りる契約をしたが、それを怠って田畑を開墾しなかったのなら、4年目には鋤で掘り起こし、馬鍬でならして、田畑の所有者に返還し、10イクーにつき10グルの穀物を計量して差し出すべきものとする。
第45条
もしある人が、その所有する田畑を耕作者に貸し与えて、その賃貸料を受けとった場合、気候の神アダドが田畑に洪水を起こす、あるいは津波で覆ったとしても、その田畑の被害は、耕作者の負担となる。
第46条
もしその者が田畑の地代を未だ受け取っていないのであれば、それが田畑の収穫の1/2または1/3であれ、代金を支払うことになっていた場合、耕作者はその田畑の所有者と田畑からとれる穀物を予め合意で決定した割合にしがって分割しなければならない。
第47条
もし農夫が、前年度において採算がとれなかったことから、田畑の耕作を他人に任せると田畑の所有者に告げた場合、田畑の所有者はそのことに干渉することはできない。その者は田畑を耕作して、収穫物を得られたときは、契約に従って、収穫物を分配しなければならない。
第48条
もしある人が借金を負い、気候の神アダドが彼の田畑を洪水によって埋め立てた、あるいは津波で覆ったとしても、さらにまた水不足で穀物が育たなかった場合、その年度分は穀物を債権者に支払う義務はない。粘土板を水に湿らせて、契約を変更してもよいし、その年の利息を支払う必要もない。
第49条
もしある人が、商人から銀を借りて田畑を入手し、穀物や胡麻を扱う商人に対して「この田畑を耕作して出来た穀物や胡麻を刈り入れて収穫することができる」と述べた場合、それを耕作する農夫がその田畑で穀物と胡麻を収穫したときは、その田畑の所有者が、商人より借りた銀と利息はもちろんのこと、耕作に費やした費用の分もその商人に与えなければならない。
第50条
耕作し終わった穀物や胡麻の田畑を渡したとき、田畑の所有者は収穫できた穀物や胡麻を、その商人より借りた銀と利息分だけ、その商人に返済するものとする。
第51条
もし返済する銀が無い場合、商人から借りた銀とその利息分に相当する胡麻を国王の法令換算表に定められた額面で、商人に支払わなければならない。
第52条
もし農夫が、自分の田畑で穀物あるいは胡麻を収穫できなかった場合でも、その契約を決して変更してはならない。
第53条
もしある人が、自分の田畑の土手を堅固にすることを放棄して、その土手を堅固にしないでいたところ、その土手に裂け目ができて、(他人の)耕作地を水で押し流した場合、その土手を決壊させた者は、穀物に与えた損害を賠償しなければならない。
第54条
もしその人が穀物の弁償ができないときは、その人の動産を売り払うことで、穀物を水に流された農夫たちは、その売上金の分配を受けることができる。
第55条
もしある人が、灌漑のために自分の水門(溝)を開いたが、それを放置したことで、近隣の田畑を水で押し流してしまった場合、その者は、近隣の田畑の収穫高に応じて、穀物を計量し、損害の賠償をしなければならない。
第56条
もしある人が、自分の水門を開いて、その隣人の田畑の耕作物に、水の被害を与えた場合、その被害を受けた田畑の10イクーにつき、穀物10グルの割合で損害賠償を行わなければならない。
第57条
もしある牧人が羊に草を食べさせることについて田畑の所有者から同意をとっていなかった場合、または田畑の所有者の同意を得ずに羊を田畑に放牧した場合、田畑の所有者は自分の畑を刈り取って、牧人は10イクーに付き穀物20グルを田畑の所有者に与えなければならない。
第58条
もし家畜が田畑から脱出して、安全な公共の場所に、その城門から殺到して内部に閉じ込められた後、牧人が家畜を田畑に連れていき、家畜に田畑の草を食べさせ、その牧人が田畑の草を食べさせていたことを目撃されていたのであれば、収穫高の10イクーに付き、穀物60グルを田畑の所有者に支払うものとする。
<果樹園>
第59条
もしある人が、果樹園の所有者の同意なくして、果樹園の樹木を伐採したのならば、銀1/2マナを支払わなければならない。
第60条
もしある人が、田畑を果樹園として(造園するために)裁植するため、園丁師に貸し与え、園丁師が果樹園に栽植したのであれば、4年間はその果樹園を成長させなければならない。5年目にはその果樹園の所有者と園丁師との間で、収穫物を平等に分配する必要がある。果樹園の所有者は、最初に自分の収穫物の配分をとることができるものとする。
第61条
もし園丁師が、その田畑に栽植を開始したが、それが完成せず、放置しておいた場合、放置して残しておいた部分を園丁師の取り分にしておかなければならない。
第62条
もし園丁師に貸し与えられた田畑を、その者が果樹園となるように栽植しなかった場合に、その土地が耕作に適する土地であるときは、造園を放置した年の収穫分を隣人の田畑の割合に従って計量したものを土地の所有者に支払う必要がある。さらに、園丁師は、その田畑に十分な耕作を行い、土地所有者にその田畑を返還しなければならない。
第63条
もし田畑が未開墾地であるときは、その田畑を栽植地として田畑の所有者に返却し、かつ10イクーに付き穀物10グルを1年分支払う必要がある。
第64条
もしある人が、自分の果樹園を管理させるため園丁師に貸し与えたときは、園丁師が果樹園を占有している間は、その果樹園の収穫物の2/3を果樹園の所有者に納め、残りの1/3を自分のものとして取得できる。
第65条
もし園丁師が、その果樹園の管理をせず、その収穫を減らしたときは、その園丁師はその近隣にある果樹園の収穫にみあった収穫高を果樹園の所有者に渡さなければならない。
第66条
もしある人が、商人から銀を借りて、商人から返済を迫られたときに、その者に支払う銀がなかったので、栽植済みの自分の果樹園をその商人に与えて、生産物をすべて銀の代わりにもっていくようにと伝えた場合、商人はそれに同意してはならず、生産物は果樹園の所有者が取り入れなければならない。粘土板に記述された銀と利息をその者は商人に返済する必要がある。果樹園に残る残りの生産物は果樹園の所有者のものであるからである。
<借家人>
第78条
もし・・借家人が1年分の全家賃を家の所有者に与えたときに、家の所有者が借家人に彼の借家日数が満了する前に、退去を申し渡した場合には、家の所有者は、借家人から受け取った銀を返還しなければならない。
<利息>
第88条
もし商人が、穀物を貸したときは、穀物1グルに付き60シラの利息を受け取る。もし銀を貸したときは、銀1シェケルに付き1/6シェケルの利息を受け取る。
第90条
もし商人が違反して1グルに対して60シラの利息あるいは銀1シェケルに対して1/6シェケルの利息を超えて受け取ると、彼が与えたものを失う。
第93条
もし銀または穀物を受け取った商人が、新たな契約書を書かずに受け取った金額を元本から控除しなかった、あるいは利息を元本に付け加えたときは、その商人は受け取った全穀物を2倍にして返さなければならない。
第94条
もし商人が、穀物または銀を貸し出し、その際に銀を小さな天秤で、穀物を小さな桝で与えていたにもかかわらず、回収するときに銀を大きな天秤で、穀物を大規模に受け取っていたのなら、その商人は自分が受け取った物を失う。
第96条
もしある人が、穀物または銀を商人から借りて、返済できる穀物または銀は無いが、動産があるときには、彼の手元にあるものを証人の前に運び、商人に与える。商人は決して拒まずに受け取らなければならない。
第100条
・・・受け取った銀の利息を記入し、かつその日数を計算してから、その商人に返済しなければならない。
<販売人>
第101条
・・・出張した場所で、借りた銀が見当たらなかった、つまり、その取引で利益が出なかった場合、販売人はその商人に対して2倍の額面を支払わなければならない。
第102条
もし商人が販売人に銀を善意で与えていた場合、出張先で損害を被ったのであれば、その商人は出資金として出資した銀の返還を求めることができる。
第103条
もしその商人に雇われた販売人が、旅行の途中において盗賊に襲われ、その運搬しているものを奪われるような事態に陥った場合、販売人は、神の下に宣誓して、責任を免れることができる。
第104条
もしその商人が販売人に、穀物、羊毛、油などの取引商品の何であれ、財物をその取引で引き渡した場合、その販売人は銀を記名して商人に渡し、販売人は商人のところで銀を支払ったことで、自分の銀の捺印受取証書を受け取ることができる。
第105条
もし販売人が、不注意によって商人に与えた銀の捺印受取証書を受け取らなかった場合、捺印受取証書のない銀を、計算には決して加えることができないものとする。
第106条
もし販売人が商人から銀を受け取った後で、商人と争いが生じた場合、商人は神の前で宣誓をし、当該金額を支払ったことを販売人に確認する必要がある。販売人は商人に受け取った金額の3倍を支払わなければならない。
第107条
もし商人が販売人に委託し、商人が販売人に与えていた物を、販売人が商人に返したにも関わらず、その事実をめぐって争いが生じたときは、商人と販売人は証人を伴って神の前で確認を行い、商人は受け取った金額の6倍を販売人に支払わなければならない。
<居酒屋の女将>
第108条
もし居酒屋の女将が、酒の代金として穀物を受け取らずに、大きな分銅で銀を受け取り、又は穀物の分量に対して酒の分量を少なくしたときは、その居酒屋の女将は河川に投げ込まれることになる。
第109条
もし居酒屋の女将が、犯罪人たちがその女将の経営する家屋の中に集合していたにもかかわらず、それらの犯罪人達を取り押さえず、また宮殿に連れて行かなかった場合、その居酒屋の女将は死刑に処せられるものとする。
第110条
もしナディトゥムまたはエントゥムと呼ばれている女の大司祭が、修道院内に滞在しないで、居酒屋を開店するか、または酒を飲むために居酒屋に立ち入った場合、その女司祭は火あぶりに処せられる。
第111条
もし居酒屋の女将が60シラのピーフー酒を信用によって与えた(ツケで飲ませた)場合、穀物の収穫時に50シラの穀物を取り上げられることになる。
<運送>
第112条
もしある人が旅行中に、金や銀の宝石その他の財産を他人に渡して運搬をさせたところ、その者が運搬されるべき品物を運搬しないで、横領したときは、運搬を依頼した品物の所有者は、そのことを立証する必要がある。運搬を依頼された者は、その品物の所有者に対して依頼されていた品物の5倍の賠償をしなければならない。
<担保>
第113条
もしある人が、他人に対して穀物または銀の債権を有していたときに、その者が穀物の所有者の同意なく、穀物の貯蔵所あるいは倉庫から穀物を窃取した場合、人々はその者に確認し、その確認手続きが終わってから、その者はその者が窃取したのと同じだけの穀物を返済しなければならない。さらにその者が有していた債権は何であろうとすべて失うものとする。
第114条
もしある人が他人に対して、穀物または銀の債権を有していないのに、その他人の人質を差し押さえた場合、人質1人につき、銀1/3マナを支払わなければならない。
第115条
もしある人が他人に対して、穀物または銀の債権を有していて、他人の人質を差し押さえたが、その人質が差し押さえた人の家で、運命に従って死亡した場合、その債権に基づく請求権は消滅し、今後決して生ずることはない。
第116条
人質を差押えて連れてきた家で、その人質が殴打されたかあるいは酷使されたかして、その人質が死亡した場合、人質の所有者はその商人(人質を差し押さえた者)に確認して、その死んだ人質がアウィルムの子であったならば、その商人の子どもは殺害され、死んだ人質が奴隷の身分であれば、商人は1/3マナの銀を支払って、その債権が何であったとしても、その債権にあたる賃貸物と同量のものを失う。
第117条
もしある人が負債を負ったので、自分の妻、息子、娘を銀のために売り払う、または債務の担保として引き渡した場合、それらの者(妻、息子、娘)は買い手の家で3年間は働かなければならない。そして4年目にはその者たちは解放される。
第118条
もし奴隷あるいは女奴隷を人質として渡しているときに、商人がその奴隷または女奴隷を譲渡する、あるいは銀のために売り渡していた場合、奴隷を商人に渡した者は、決してその取戻の請求ができない。
第119条
もしある人が債務を負ったので、自分の子どもを産んだ女奴隷を銀のために売ったならば、その女奴隷の所有者は、商人が支払った銀と同額の銀を支払うことによって、自分の女奴隷の身請け(買戻し)ができる。
<穀物の貯蔵>
第120条
もしある人が穀物を貯蔵する目的で他人の家の貯蔵所に貯えていたが、その倉庫に突然事故が起きたり、あるいは倉庫のある家の所有者が貯蔵庫を開いて穀物を横領するとか、あるいは自分が穀物を預かったことを否定するなど、その家に預けた穀物全般について争いが生じたような場合、穀物の所有者は神の前で自分の穀物のことを証明しなければならない。そうした手続きの後、穀物倉庫がある家の所有者は、自分の横領した穀物を2倍にして穀物の所有者に与えなければならない。
第121条
もしある人が、他人の家に、穀物の貯蔵を依頼した場合、その者は大麦1グルについて年間貯蔵費5シラの穀物を支払わなければならない。
<寄託>
第122条
もしある人が他人に、銀、金、その他その名称が何であれ品物を寄託した場合、その者はその寄託物をすべて証人に示し、契約書を作成してから、その品物を寄託しなければならない。
第123条
もし証人も契約書もないまま寄託し、その品物を寄託した場所で、受寄者が寄託したことを否認した場合、その者の請求権はまったくないものとなる。
第124条
もしある人が他人に、銀や金、その他その名称が何であれ、証人の前で寄託したが、受寄者が寄託を否認した場合、寄託者はその他人に対して寄託したことを立証しなければならない。その後、受寄者は、自分が否認したすべての品物について2倍にして賠償しなければならない。
第125条
もしある人が、自分の品物を寄託したところ、預けた保管場所で壁に穴をあけた強盗あるいは侵奪者によって、その家の所有者の所有物とともに寄託した物を紛失したならば、その注意を怠った家の所有者は寄託者が寄託していたすべての品物に対し、寄託者に完全に賠償しなければならない。さらに、寄託者が預けて、家の中から紛失したものを市場などで探し出し、窃取した犯人からその品物を取り返さなければならない。
第126条
もしある人が、自分の所有物を紛失したわけでもないのに、「紛失した」といって、家門会議に虚偽の申し立てをした場合、家門会議は何も紛失していないという事実を神の前で究明しなければならない。そして、その者は、自分が申し立てたすべてのものの2倍の損害賠償をしなければならない。
<夫婦>
第127条
もしある人がエントゥム(女神官または女司祭)あるいは他人の妻に対して、その貞操に関して悪口を述べて、もしそれを証明できなかったのであれば、その者は裁判官の前に自らの身を投げ出して、自分の額に烙印を捺さなければならない。
第128条
もしある人が、自分の妻を娶ったが、契約書を作成して法的手続きを完了しなかった場合、その女は決して妻にはならない。
第129条
もしある人の妻が、他の男と寝ている時に取り押さえられた場合、その2人は縛り上げられて、水の中に投げ込まれなければならない。もし、その妻の亭主が自分の妻の救助を願い出たときは、国王がその男の方を救助するならば、その妻も許されるものとする。
第130条
もしある人が、まだ夫と性的交渉がないまま、その父の家に住んでいる他人の妻を襲い、暴力を加えてその女の膝に横たわっているところを取り押さえられた場合、その者は死刑に処されるが、その女の方は放免される。
第131条
もしある人の妻が、その夫から浮気の疑いをかけられたものの、他の男と寝ているところを取り押さえられたわけではない場合、その女は神のもとに誓って、しかる後に自分の実家に帰ることができる。
第132条
もしある人の妻が、他の男との貞操に関する悪口を言われたが、他の男と一緒に寝ているところを取り押さえられたわけではない場合、その妻は自分の夫のために、河川の神に飛び込むことができる。
第133条
もしある人が捕虜となって捕捉された場合、その捕捉された者の家に食料となる蓄えがあるならば、その妻は自分の家から外出するときに自分の貞操を守り、他人の家に決して入ってはならない。もしその女が自分の貞操を守らないで他人の家に入ったならば、その女に確認してから、その女を水中に投げ込んで処罰することができる。
第134条
もしある人が捕虜となって、その者の家の中に食べ物がない場合には、その者の妻が他人の家に入ったとしても、その妻には決して罪はないものとする。
第135条
もしある人が捕虜となって、その者の家の中に食べ物がない場合で、その者の妻が他人の家に入って子どもを生み、その後に夫が帰ってきて、自分の町にもどったときには、その女は自分の元の夫のところに帰り、その子どもたちもまた自分たちの父の元に帰らなければならない。
第136条
もしある人が、自分の町を捨てて逃亡し、その逃亡後に、その者の妻が他人の家に入った場合には、仮にその者が自分の居住地に戻ってきて自分のかつての妻を取り押さえるようなことがあっても、自分の町を嫌悪して逃亡したが故に、その妻は逃亡した夫の元に決して戻る必要はない。
第137条
もしある人が、自分のために子を産んだシュゲーティム階層の下女と、あるいはナディトゥム女神官と離縁しようとする場合、その者はこの女に彼女の持参金を返還しなければならず、かつまたその女に田畑と果樹園など家からの財産の一部を与えて、その女が自分の子どもたちを養育できるようにしなければならない。そして、その女の子どもたちが成長した後は、子どもたちに与えられたところのすべてのものの中から、彼女には息子1人分の相続財産が与えられる。その後、彼女の意中の者がその女を妻にすることができるものとする。
第138条
もしある人が、自分の子を産まなかった妻と離縁しようとする場合、その者は彼女の結納金と同じ程度の銀の額を彼女に支払い、かつ彼女が自分の父の家から持ってきた持参金を、彼女に払い戻さなければならない。
第139条
もしティルハートゥム(結納金)がなかったならば、手切れ金として、彼女に1マナの銀を与えなければならない。
第140条
もし(離婚しようとする妻が)ムシュケーヌムの場合、彼女に銀1/3マナを与えなければならない。
第141条
もしある人の妻が、夫の家に居住しているのに、その家から出ていきたいと思い、そのために醜態を演じて、家を乱雑にし、夫を蔑ろにしたことが立証された場合、その夫が離婚を決意したのであれば、その妻を追放することができる。夫は妻に何らの旅費や手切れ金などの慰謝料を払う必要はないものとする。彼女の夫が、その妻に離婚を宣告しない場合、夫は新しい妻を娶ることが許される。女は、夫の家に1人の女奴隷のように留まっていなければならない。
第142条
もしある者の妻が夫に嫌悪して「もはや、私を決して抱くな!」と言った場合、その女の件は家門(裁判所のようなところ)で審理しなければならない。その女の身持ちが良く、何等の落ち度も見られないのに対して、彼女の夫が外出しがちであり、彼女を非常に卑しめているような場合、この妻は何ら処罰を受けず、彼女は自分の持参金を以て、自分の実家に帰ることができる。
第143条
もし妻の方が、日頃から身持ちが良くなく、外出しがちであり、自分の家を乱雑にし、普段から自分の夫を蔑ろにしているような場合、この妻の方が水の中に投げ込まれることになる。
第144条
もしある人が、ナディトゥム女神官を妻として娶り、そのナディトゥムが彼女の女奴隷をその自分の夫に与えたことによって、女奴隷が子を授かった場合、自分のシュゲーティム女官の妾を公然と囲うことを決めたとしても、彼女(ナディトゥム女官)が決して同意しないような場合、公然と妾たるシュゲーティムを囲うことはできない。
第145条
もしある人が、ナディトゥム女司祭を妻に娶ったが、子どもをもうけなかったので、他に妾を持とうと公然と決定した場合、その者はこの妾を自分の家に当然のこととして入れることができる。しかしながら、この妾はその者がナディトゥムよりも上位に立つことは決してない。
第146条
もしある人が、ナディトゥム女司祭を妻に娶って、そのナディトゥムが自分の女奴隷を夫に与え、そしてその女奴隷が子どもを生んでから、自分の身分をわきまえず、同等に振舞おうとしても、そのナディトゥム女司祭は、女奴隷よりは優位に立つことができる。しかしながら、その女奴隷を決して銀貨で売り払うことはできず、その後も奴隷の印をつけてずっと奴隷として数えるような状態に置いておかなければならない。
第147条
もしその女奴隷が子どもを産まなかったときは、女奴隷の主人はその女奴隷を銀貨で売り払うことができる。
第148条
もしある人が妻を娶ったが、ラアブム病にかかったので、他の女を公然に娶ることを決めた場合でも、すでにラアブム病にかかった前の妻と離婚することはできず、彼女は夫が建てた家屋に居住し続けることができる。その妻が生きている間、夫は彼女の面倒を見続けなければならない。
第149条
もしその妻が、自分の夫の家に居住することに同意しない場合、その夫は妻が実家から持参してきた彼女の持参金を彼女に返還しなければならない。その後に妻は夫の家から出ていくことができる。
第150条
もしある人が、自分の妻に、田畑、果樹園、家屋や財産などを贈与し、彼女のために封印証書を作成した場合、夫の死亡後は、子どもたちは彼女に対してその取り戻しを請求することができない。母親は自分の子どもたちの中で彼女の最も愛している子どもに自分の遺産を与えてもよいが、他人(他の兄弟)に与えることはできない。
第151条
もしその女が、自分の夫の家屋に住むようになる以前に、彼女の夫となる人物と契約を交わして粘土板に契約文書を作成していた場合でも、債権者はその妻を拘束することができない。また、この妻を娶る以前に、その人物が夫に債権を有していたような場合でも、彼の妻を拘束することはできず、妻となる女が夫と結婚する以前に彼女に債務があったとしても、その債権者は彼女の夫を決して拘束することはできない。
第152条
もしその女が他人の家に入ってから、彼ら(夫婦)に債務が生じたときは、その夫婦がともに商人に支払わなければならない。
第153条
もしある人の妻が、他の男のために、自分の夫を殺害した場合、この女は杭の上に身を置かれることになる。
第154条
もしある人が、他人の子女と肉体関係をもち、その他人がその者にこの都市から出ていけと命じたならば、その者はこの都市から出ていかなければならない。
第155条
もしある人が、自分の息子のために、とある娘と婚姻契約を結び、その息子が娘と肉体関係をもった後に、その者がその娘の膝に横たわっているのを発見した場合、その者は縛られて水の中に投げ込まれることになる。
第156条
もしある人が、自分の息子のためにとある娘と婚姻契約を結び、未だ自分の息子がその娘と肉体関係を有していないときに、息子の父が彼女の膝に横たわって肉体関係をもった場合、その娘には銀1/2マナを支払わなければならず、また彼女の父親の家から持参してきたすべてのものをその娘に返還してから、その娘の意中の男に嫁がせなければならない。
第157条
もしある人が、自分の父親の死後に、その母の膝に横たわったときは、その2人とも焼殺されるべきものとする。
第158条
もしある人が、自分の父の死後に、その女奴隷が自分の子どもを産んだことがわかって取り押さえられた場合、その者は父親の家から追放されることになる。
第159条
もしある人が、その義父となる人の家屋に結納を届け、婚約品を持参した後に、他の女に目がくらみ、義父に向かって「私は、あなたの娘を決してもらいません」といった場合、その娘の父親は、自分に贈与された物品をもらったまま手元に置いておくことができる。
第160条
もしある人が、義父となる人の家に結納を届け、婚約品を持参したが、その娘の父が「私の娘を決してあなたに嫁がせはしない」と言った場合、その娘の父親は自分のもとに持参されたすべてのものを2倍にして返さなければならない。
第161条
もしある人が、義父となる人の家に結納を届け、婚約品を持参したが、その後、その者の同僚がその者を中傷したがために、その義父が娘の夫となる者に対して、「私は、娘を決してあなたには嫁がせない」と言った場合、その義父は自分のもとに持参されたすべてのものを2倍にして返還しなければならない。また中傷した同僚も自分の妻としてその娘を娶ることはできない。
第162条
もしある人が妻を娶り、その妻は彼のために子どもを産んだが、その後にその妻が死亡したときは、その妻の父親は彼女の持参金について決して請求することができない。彼女の持参金はすべて彼女の子どもたちのものとして相続していくことになる。
第163条
もしある人が妻を娶ったが、その妻が彼の子をもうけずに死亡したときに、この夫が自分の義父に持参した花嫁代をその義父が彼に返還してくれた場合には、その夫は妻の持参金について何の請求権も有しない。彼女の持参金は彼女の実家の財産となる。
第164条
もしその義父が結納金を彼に返さないときは、彼は、彼女の持参金から花嫁代を差し引いて、残った持参金額を彼女の父に返還すればよい。
<相続>
第165条
もしある人が、自分の眼で判断した一番長所の多い息子に田畑、果樹園あるいは家屋を遺贈することを決定し、その者に封印をした法的な証書を作成した場合で、この父親が死亡した後で、他の兄弟たちとその遺産を分割するようになったときは、その息子は父親が彼に譲渡しようとした相続分を自分のものとして受領することができる。さらにその後に、彼らはその父親の残った財産をすべて平等に分配しなければならない。
第166条
もしある人が、自分のもうけた息子たちのために妻たちを娶ったが、年少の息子だけがまだ妻を娶っていなかったような場合、その父親が死亡した後に、兄弟が父親の家の財産を分割するときは、妻を持っていない年少の弟に対してはその者の分割額に加えてその婚約費としての銀を分け前として特別に与え、彼に妻を娶らせなければならない。
第167条
もしある人が妻を娶り、その妻が彼の子を産み、その後にその女が死亡してしまったので、他の妻を娶ってまた子どもが産まれたが、今度は父親が亡くなった場合、子どもたちは、母親別に分けずに、彼らの母親が実家から持ってきた持参金はそれぞれ受け取り、父親の家の財産については平等に分割しなければならない。
第168条
もしある人が、自分の息子が有している相続の権利を剝奪しようと企てて、裁判官に対して「私は息子を勘当という形にします」と宣言した場合、裁判官はその事情を調査し、検証し直さなければならない。もし、その息子が相続の権利を剥奪されるのに相当する重大な罪を何等犯していないときは、その父親は息子の相続の権利を剥奪することはできない。
第169条
もし相続の権利を剥奪されるのに相当する重大な罪を犯していた場合でも、それが一度目ならば宥恕の意を示してやる必要がある。しかしながら息子が再度重大な罪を犯した場合、父親はその息子の相続の権利を剥奪することができる。
第170条
もしある人が、配偶者がいて、自分の子を産んでいて、自分の女奴隷もまた子どもを産んで、父親の存命中に女奴隷が産んだ子どもたちに「お前たちは私の子どもである」と宣言して、配偶者の子どもたちと同様に女奴隷の子どもたちもまた数えていた場合、父親が死亡した後には、父親の家の財産を妻の子どもたちと女奴隷の子どもたちが平等に分割することができるが、妻の相続人たる子どもは、その分割において優先的に選択して取ることができる。
第171条
もし父が存命中に女奴隷が産んだ子どもたちに対して「私の子である」と宣言しなかった場合、父の死亡後、父親の家の財産を、女奴隷の子どもたちは妻の子どもたちとともに分割することはできないが、その女奴隷と子どもたちには「自由の身分」が与えられ、妻の子どもたちは女奴隷の子どもたちに対してもとの奴隷の身分へ戻ることを請求することはできない。
妻は自分の持参金と自分の夫が彼女に与えた結納金を、正式な文書として記した粘土板の中に記入しておき、自分の夫の住居にとどまって食費として充当して支払いにあてるが、銀(その他の債権)のためそれを支払いにあてることはできない。彼女の死後は、その財産は自分の産んだ子どもたちだけのものとなる。
第172条
もし、女奴隷の子どもを自分の子どもと認めなかった男が、妻を娶るときに結納金も与えていなかった場合、彼女に持参金を返還し、彼女の夫の家の財産の中から、相続人の1人に相応する財産を受け取ることができる。仮にその子どもたちが、彼女を家から追放しようと企てたならば、裁判官はその背後の事情を調査して、子どもたちに処罰を下すことができる。
第173条
もしその女が、新しい夫の家に入ったところで、その家で後の夫の子どもを産んでからこの女が死亡した場合、彼女の持参金は、前の夫と後の夫の子どもたちによって分割されるものとする。
第174条
もし彼女と後の夫との間に子どもが生まれなかった場合、彼女の持参金は、彼女の前の夫の息子たちがこれを受け取ることができるものとする。
第175条
もし宮廷の奴隷またはムシュケーヌム階層の奴隷が、アウィルム階層の娘を娶って、その娘に子どもが生まれた場合、奴隷の主人はアウィルム階層の娘の子どもに対しては、奴隷の身分であることを請求してはならない。
第176条
また、もし宮廷の奴隷、あるいはムシュケーヌムの奴隷が、アウィルム階層の娘を娶る場合、彼女を娶るときに彼女の実家から持参金とともに宮廷の奴隷もしくはムシュケーヌムの奴隷の家庭に入って婚姻し、家屋を建てて財産を取得した後に、宮廷の奴隷またはムシュケーヌムの奴隷が死亡したときには、アウィルム階層の娘は自分の持参金を取り戻し、彼女の夫と彼女が婚姻した後に取得したものを2つに分割して、半分は奴隷の主人が取り、残りの半分はアウィルム階層の娘が彼女の子どものために取ることができる。
アウィルム階層の娘が、持参金を持たなかったならば、彼女の夫と彼女が婚姻した後に取得したものを2つに分割して、半分は奴隷の主人が取り、残りの半分はアウィルム階層の娘が彼女の子どものために取ることができる。
第177条
もしその子が幼くて、未亡人となった妻が、第二の家に公然と入ることを試みたとしても、裁判官の同意なくしては絶対に再婚することはできない。 裁判官は、彼女が第二の家に入る際に、彼女の元の夫の家の事情を調査し、その結果次第では彼女の前の夫の家を彼女の後の夫となる男とその未亡人となった女とに任せて、彼らに粘土板を交付させることができる。
そして、旧夫の家を守護し、その幼い子どもを成長させ、その家の家具類を銀のために決して売却してはならない。未亡人の子どもたちの家具類を購入した買主はその銀を没収され、家具類の財産は元の持ち主に戻る。
第178条
もし父親が持参金を与え、そのことを粘土板に記したエントゥムやナディトゥムの女神官またはセクレートゥム女官がいたとして、その記した粘土板に「彼女が死んだ後、彼女が気に入っていた者だけに与えるものである」と記述しておらず、また彼女の意向を特定する記述が何ら見いだせなかった場合、その父親が死亡した後において、彼女の兄弟が彼女の田畑と果樹園を取りあげてから、彼女の相続分に応じて、大麦、油、羊毛などの供給分を支払い、彼女に満足感を与えることができる。
仮に、彼女の兄弟が、その相続分に応じて、彼女に大麦、油、羊毛などの供給分を彼女に与えず、彼女に満足感を与えなかったならば、彼女はその田畑や果樹園を彼女の気に入った耕作人に与え、その耕作人が彼女を引き取り、彼女の父親が彼女に与えた田畑や果樹園などのものは、彼女がまだ生存している間は、使用収益することができるが、銀のために決して売却されることはないし、他人への返済に決して充てられることもない。そして彼女の相続分は彼女の兄弟のものとなる。
第179条
もし父親が持参金を与え、そのことを粘土板に記したエントゥムやナディトゥムの女神官またはそうした女神官にさせるべく誓願手続をしているセクレートゥム女官がいたとして、その記した粘土板に「彼女が死んだ後、彼女が気に入っていた者だけに与えるものである」と記述され、彼女の意向に関して父親が許していた場合、父親が死亡し、続いて彼女が死亡した後に、生前彼女が気に入っていた者に与えられるのであって、彼女の兄弟は決して彼女に請求できない。
第180条
もし父親が、自分の娘に尼僧院中のナディトゥム女神官やセクレートゥム女官としての持参金を与えなかった場合、その父親が死亡した後、父の家の財産から1人の相続分に応じた配当分を分割してもらい、その相続分を個人的な生活の用益に供し、その後に彼女が死亡したときには、彼女の兄弟のものとなる。
第181条
もし父親が、そのナディトゥム女神官あるいはカディシュトゥム女官やクリマシトゥム女官を神の前にささげたが、持参金を与えなかったような場合、父親が死亡した後は、父親の家の財産から彼女の相続分の1/3を分割してもらい、彼女が生きている間はそれを生計としてあてることができるが、彼女の死んだ後は彼女の兄弟たちのものとなる。
第182条
もし父親が、バビロンのマルドゥク神のナディトゥム女官となった自分の娘に、また持参金を与えず、彼女に捺印証書を与えていなかった場合、父親が死亡後に、父親の家の財産から彼女の相続分の1/3を彼女の兄弟とともに分割するが、それを業務に行使してはならず、マルドゥク神のナディトゥムである彼女の死後は、彼女が好ましいと思っていた人物に与えることができる。
第183条
もし父親が、シュゲーティムの妾となっている自分の娘に持参金を与え、彼女を改めて正式な夫に与えてから捺印証書を作成した場合、その父親が死亡した後に、娘はその父親の家の財産から決して相続財産をもらえることはない。
第184条
もし父親が、シュギートゥム女官となっている身分の娘にまだ持参金を与えず、彼女を夫にも与えなかった場合、その父親の死亡後に、彼女の兄弟が父親の家の財力に応じて彼女に持参金を与え、そして彼女を夫に与えることができる。
<養子>
第185条
もしある人が、幼い子どもを自分の名の下に息子として迎え入れ、この養子を成長させた場合、他の者はこの者からその養子を取り戻すことを請求することは決してできない。
第186条
もしある人が、幼い子どもを息子として迎え入れたときに、その子どもが父親と母親を探し求め、その息子を養子にしたことに反対したのならば、その息子は彼の父の家に帰らなければならない。
第187条
もし宮廷の廷吏や奉公人の子ども、あるいは誓願手続をとっている女の子は、養子縁組手続の取消しを決して請求されない。
第188条
もし職人が、他の職人の子どもを養子として迎え入れ、彼の手工芸の仕事を習得させたならば、養子との縁組を解消することはできない。
第189条
もし養子が彼の手工芸の仕事を習得しなかった場合、この養子は自分の父の家に帰ることができる。
第190条
もしある人が、幼い子どもを養子として迎え入れ、成長させたが、彼の子どもたちとその養子とを同等に扱わなかった場合、その養子は彼の父の家に帰ることができる。
第191条
もしある人が、幼い子を養子として迎え入れて成長させたが、自分の家を建て、その後に子どもたちをもうけたので、養子を追い出すことを公然と企てたとしても、この養子はこの家から出ていかなくてもよい。
養父は、養子を成長させてから彼の財産からその養子の相続分として1/3を与えてから出ていかせることができる。養父の田畑、果樹園や家屋はその養子に決して与えなくてよい。
第192条
もし宮廷奉公人の養子、あるいは女神官になるべく誓願している女の養子が、その養子を成長させた養父または養母に対して「あなたは私の父ではない」あるいは「あなたは私の母ではない」といった場合、その養子は舌を切り落とされる。
第193条
もし宮廷奉公人の養子または女官になるべく誓願している女の養子が、実父の家を見つけて、その育ててくれた養父と養母を嫌って、実父の家に行ったならば、その眼球は抉り抜かれることになる。
<乳母>
第194条
もしある人が、自分の子どもを乳母に預けたが、乳母の手の中でその子どもが死亡し、その子どもの父親または母親の同意なしに他の子どもと取り替えた場合、父母の同意なしに取り替えた理由をその女に確認してから、その乳母の胸を切り取ることになる。
<暴行・傷害>
第195条
もし息子が彼の父親を殴打するならば、その息子の手は切り取られることになる。
第196条
もしある人が、他人の眼を潰したときは、自分の眼を潰さなければならない。
第197条
もしある人が、他人の骨を折ったときは、自分の骨も折らなければならない。
第198条
もしある人が、ムシュケーヌムの眼を潰すか、あるいはムシュケーヌムの骨を折ったならば、銀1マナを支払わなければならない。
第199条
もしある人が他人の奴隷の眼を潰す、あるいは他人の奴隷の骨を折った場合、その奴隷の値段の半額を支払わなければならない。
第200条
もしある人が、同じ身分の他人の歯を折ったならば、自分の歯も折らなければならない。
第201条
もしある人が、ムシュケーヌムの歯を折ったのであれば、銀1/3マナを支払わなければならない。
第202条
もしある人が、自分よりも身分の高い人の頬を殴打した場合、その者は集会の場において、牛の鞭で1シュシュム度(60回分)だけ、打たれなければならない。
第203条
もし(アウィルム階層の)ある人の子どもが、同じ身分にある者の子の頬を殴打した場合、その者は銀1マナを支払わなければならない。
第204条
もしあるムシュケーヌムの者が、他のムシュケーヌムの者の頬を殴打した場合、その者は銀10シェケルを支払わなければならない。
第205条
もしある人の奴隷が、他のアウィルム階層の者の子どもの頬を殴打した場合、その奴隷は自分の耳を切り落とさなければならない。
第206条
もしある人が、他人と喧嘩し、殴打によって相手に傷害を与えた場合、その者は、「私は、故意に殴打して傷害を負わせたのではない」という誓約を行い、かつ医師に治療にかかった費用を弁済しなければならない。
第207条
もしその者の殴打によって相手が死亡した場合、彼は誓って、相手がアウィルム階層の人間であれば銀1/2マナを支払わなければならない。
第208条
もしムシュケーヌムの人間であれば、銀1/3マナを支払わなければならない。
第209条
もしある人が、他人の娘を殴打して、そのことで彼女のおなかにいる胎児を流産させた場合、その者は彼女の胎児のために銀10シェケルを支払わなければならない。
第210条
もしその女が死亡した場合には、自分の娘が殺されなければならない。
第211条
もしムシュケーヌムの女が殴打された結果、流産した場合、アウィルム階層のその者は銀5シェケルを支払うものとする。
第212条
もしその女が死亡した場合は、銀1/2マナを支払わなければならない。
第213条
もしそのアウィルム階層の者が、他人の女奴隷を殴打して、その女奴隷の胎児を流産させたら、銀2シェケルを支払わなければならない。
第214条
もしその女奴隷が死亡した場合には、銀1/3マナを支払わなければならない。
<医師>
第215条
もし医師が、ある者の重大な傷口を青銅のメスを用いて治療し、あるいは膿瘍を青銅のメスで切開手術を施したりして人の目を治療したときは、銀10シェケルを受領することができる。
第216条
もし患者がムシュケーヌムの子どもであった場合、銀5シェケルを受領することができる。
第217条
もし手術を受けた患者がアウィルム階層の奴隷なら、その奴隷の主人は手術した医師に銀2シェケルを与えればよい。
第218条
もし医師が、ある者の重大な傷口を青銅のメスを用いて切開手術したが、その結果として死亡させた、あるいは青銅のメスで膿瘍を手術して目を潰してしまったような場合、その医師の腕は切り取られる。
第219条
もし医師が、ムシュケーヌムの奴隷にできた重大な傷口を青銅のメスで切開手術をして、その結果として死亡させた場合、その奴隷に相当する奴隷で賠償しなければならない。
第220条
もし医師が、奴隷の膿瘍を青銅のメスで切開手術して、その奴隷の目がつぶれた場合、その奴隷の価値の半額を支払わなければならない。
第221条
もし医師が、ある者の折れた骨を治療する、あるいは内臓の痛みを治療した場合、病気の患者は医師に銀5シェケルを与えなければならない。
第222条
もしそれがムシュケーヌムの人であった場合には、銀3シェケルを与えなければならない。
第223条
もしそれがアウィルム階層の奴隷であった場合、奴隷の主人は医師に銀2シェケルを支払わなければならない。
第224条
もし医師が、牛や馬の重大な傷口を青銅のメスで切開手術して治療した場合、その牛や馬の所有者は、銀1/6シェケルをその医師に治療費として与えなければならない。
第225条
もし牛あるいは馬の重大な傷口を切開手術して死亡させた場合には、その家畜の値段の1/4を牛あるいは馬の所有者に支払わなければならない。
<烙印官>
第226条
もし烙印官が、その奴隷の主人の同意を得ずに、売買のできない奴隷の印を烙印した場合、その烙印官の指は切り落とされる。
第227条
もしある人が、烙印官を騙して売買できない奴隷の印を烙印させた場合、その者は殺され、都市の門の所に吊るされるが、烙印官がその者の詐欺について「知らなかったからこそ烙印してしまったものである」と誓うならば、放免される。
<建築家>
第228条
もし建築家が、ある者のために家屋を建築し、その家が完成した場合、その建築家に建坪1サルあたり銀2シェケルをその報酬として支払わなければならない。
第229条
もし建築家が、ある者のために家屋を建築したが、その仕事が堅固なものではなかっために、その建てた家屋が倒壊して、その家屋の所有者が死亡した場合、その建築家は死刑に処されなければならない。
第230条
もし(その家屋の倒壊で)家屋の主人の子どもが死亡した場合、その建築家の子どもが死刑に処されなければならない。
第231条
もし(その家屋の倒壊で)家屋の主人の奴隷が死亡した場合には、その建築家はその家屋の主人に対して、死亡させた奴隷に相当する奴隷1人を与えなければならない。
第232条
もし(その家屋の倒壊で)家財道具類が滅失した場合、建築家はその滅失したものと同等のものを賠償し、かつ自分の建築した家屋が堅固に施工されていなかったことを理由に、倒壊した家屋を自分の資金によって再度建て直さなければならない。
第233条
もし建築家が、ある者のために家屋を建築したが、その仕事が堅固なものではなかったために、その家屋の壁面が崩れ落ちた場合、その建築家は自分自身の資金でその壁面を堅固にしなければならない。
<船大工>
第234条
もし船大工が、ある者のために60グルの船を建造した場合、その報酬として銀2シェケルを船大工に与えなければならない。
第235条
もし船大工が、ある者のために船舶を建造したが、その仕事が堅固ではなかったために航海に適さず、その建造した年にこの就航した船に不都合が生じた場合、船大工はこの船を自分の資金で補修し、堅固で就航にたえる船にしてから、船主に渡さなければならない。
<船頭>
第236条
もしある人が、自分の船を船頭に賃貸したが、その船頭の不注意により船を沈めた、あるいは喪失した場合、その船頭は船主に船を弁償しなければならない。
第237条
もしある人が、船頭と船を借りて、穀物、羊毛、油、ナツメヤシなど、その名が何であれ貨物を積み込んだが、船頭が不注意によってその船を沈め、その中に積載していた物を失った場合、船頭は沈めた船と喪失させた積み荷について賠償しなけばならない。
第238条
もし船頭が、ある者の船を沈めたが、その後にこれを引きあげた場合、その値段の半額の銀を支払わなければならない。
第239条
もしある人が、船頭を雇った場合、年に穀物6グルを支払わなければならない。
<船の事故>
第240条
もし河川の流れに沿って上下する船が、河川を横断する船と衝突して沈没させた場合、沈んだ船の船主は、その船の中に積載していて失った品物を神の前で証言し、その後に流れに沿って上下する船の船主は、河川を横断する船の失われた品物とその船について賠償しなければならない。
<牛>
第241条
もしある人が、(勝手に)牛を質に取った場合、その銀1/3マナを支払う。
第242条
もしある人が、馬鍬(まぐわ)のついた牛を1年間賃借するときは、その賃借料は穀物4グルとする。
第243条
もしある人が、胴で繋いだ牛を1年間賃借する場合には穀物3グルを、その牛の飼い主に支払わなければならない。
第244条
もしある人が、牛や馬を賃借したが、原野でライオンがその家畜を殺害した場合、その持ち主が牛や馬の損害を負担することになる。
第245条
もしある人が牛を賃借して、その牛を不注意によって、あるいは殴打の結果、死亡させた場合、牛の所有者に対し、その牛に相当する価値の牛で賠償しなければならない。
第246条
もしある人が牛を賃借したが、その足を折ってしまった、あるいは牛の腱を切ってしまった場合、牛の所有者に対し、その牛に相当する牛で賠償しなければならない。
第247条
もしある人が牛を賃借したが、その眼を潰してしまった場合、牛の所有者に対し、その牛の価値の半額の銀で賠償しなければならない。
第248条
もしある人が牛を賃借したが、その角を折ったり、その尻尾を切ったり、その背中の肉をそり落とした場合、その牛の価格の1/4の銀で賠償しなければならない。
第249条
もしある人が牛を賃借したが、神がその牛を打って死亡させた場合、その牛を賃借した者は神の下で誓約をして、その後に放免される。
第250条
もしある牛が、道路を通行している者を角で突いて死亡させたとしても、この事例からは何の罪も生じることはない。
第251条
もしある人の所有する牛が、角で突く習性があったので、その牛に「突き刺す癖あり」とその都市の行政区域担当者から告知されていたが、その角を保護せず、また牛が繋がれていなかったために、その牛がアウィルム階層の子どもを刺し殺したならば、その者は銀1/2を支払わなければならない。
第252条
もし(牛の突き殺した相手が)アウィルム階層の人が所有する奴隷であった場合、銀1/3を支払わなければならない。
<管理者>
第253条
もしある人が、自分の田畑の前で、監督してもらうために他の同じアウィルム階層の者を雇用して、(その管理費として)穀物を貸与し、田畑の耕作のために牛などを交付する契約を締結したが、この者が種子や飼料を盗んだ場合に、その者の手の中でこれを取り押さえたときは、この者の指を切り取ることができる。
第254条
もしその雇用された者が穀物食糧を盗み、牛などを弱らせた場合、耕作した土地に相応する量の穀物を賠償しなければならない。
第255条
もし他人に牛などを貸し与えて賃借料を取ったり、飼料を盗んだために田畑に何も生えなかった場合、この者に確認して、収穫時に10イクーにつき60グルの穀物を支払わなければならない。
第256条
もしその支払い義務を履行できないときは、その田畑に牛の代わりに残されて働かなければならない。
第257条
もしある人が、耕作人を雇ったときは、1年に7グルの穀物をその者に支払わなければならない。
第258条
もしある人が、牛飼いを雇ったときは、1年に6グルの穀物をその者に支払わなければならない。
第259条
もしある人が、野原で鋤(すき)を盗んだときは、銀5シェケルを鋤の所有者に支払わなければならない。
第260条
もし・・開墾鋤または馬鍬を盗んだときは、銀3シェケルをその所有者に支払わなければならない。
<牧人>
第261条
もしある人が、牛や羊を飼育するために牧人を雇用した場合、1年に8グルの穀物をその者に支払わなければならない。
第262条
もしある人が、牛あるいは羊を・・の為に・・(不明)
第263条
もし牛や羊を渡された者が、それらを失った場合、それらに相当する牛や羊を、それらの所有者に賠償しなければならない。
第264条
もし牧人が、飼育のために牛や羊たちを渡され、そのすべての手当を受領してその額に満足したものの、牛や羊の数が減少してその生産率を減少させたときは、その契約の文言に従って、生産率や収入の減少分を負担しなければならない。
第265条
もし牧人が、飼育のために渡された牛や羊について不正直なことを考え、その契約を変更して、銀のためにこれらを売却した場合、その者に確認したうえで、牧人が盗んだ牛や羊をその10倍にして、牛や羊の所有者に賠償しなければならない。
第266条
もし囲い込んだ柵の中の家畜が、神の手(伝染病)により、あるいはライオンによって殺された場合、牧人は神の前で無罪を誓約し、畜舎で倒れた家畜を、その所有者が引き取らなければならない。
第267条
もし牧人が、不注意で畜舎の中に病気を発生させたときは、牧人は畜舎の中で倒れた牛や羊を病気から回復させたうえで、それらの所有者に渡さなければならない。
<賃貸借>
第268条
もしある人が、脱穀のために牛を賃借した場合、その賃借料は20シラの穀物である。
第269条
もしある人が、脱穀のために馬を賃借した場合、その賃借料は10シラの穀物である。
第270条
もしある人が、脱穀のために小さい子羊を賃借したならば、その賃借料は1シラの穀物である。
第271条
もしある人が、荷車の牛やそれを運ぶ者を賃借した場合、その賃借料として1日につき180シラの穀物を支払わなければならない。
第272条
もしある人が、自分自身で動かすために荷車だけを賃借した場合、1日あたり40シラの穀物を支払わなければならない。
<雇用>
第273条
もしある人が、日雇い労働者を雇う場合、1年の初めより5月までは1日につき銀6シェの薄片を支払い、6月から1年の終わりまでは1日につき銀5シェの薄片を支払わなければならない。
第274条
もしある人が、職人を雇う場合、その給料は銀5シェを、煉瓦(れんが)鋳造者の給料は銀5シェ、亜麻織職人の給料は銀5シェ、麦芽汁職人の給料は銀5シェ、牛乳職人の給料は銀5シェ、鍛冶屋職人の給料は銀5シェ、大工の給料は銀4シェ、皮なめし工の給料は銀4シェ、藍細工職人の給料は銀4シェ、建築家の給料は銀4シェを、1日につき支払わなければならない。
第275条
もしある人が・・・を雇ったら、1日につき銀3シェがその給料として支払われる。
<船の賃借>
第276条
もしある人が、河川を上下する船を賃借した場合、銀2.5シェを賃借料として支払わなければならない。
第277条
もしある人が、60グルの船を賃借したときは、賃借料として1日につき銀1/6を支払わなければならない。
<奴隷の売買>
第278条
もしある人が、奴隷あるいは女奴隷を購入したが、まだその月が終わらないうちに、その奴隷がベンヌ病に罹患したならば、買主はその奴隷を売主に返却して、その支払った銀を取り戻すことができる。
第279条
もしある人が、奴隷あるいは女奴隷を購入したが、その奴隷の返還請求を受けた場合、売主はその返還請求を聞き入れて奴隷を返還しなければならない。
第280条
もしある人が、国の外で奴隷または女奴隷を購入して、国内に戻り、奴隷または女奴隷の元の所有者がその者の奴隷または女奴隷の所有を認めるならば、その奴隷または女奴隷がその国の者であると確認できた場合には、銀なしでその自由を認めなければならない。
第281条
もし(その奴隷が)他の国の者であることがはっきりした場合、購入者は神の前で支払った金額をはっきりと告げて、元の奴隷または女奴隷の所有者はその商人に売ったときの銀を支払うことで、その奴隷または女奴隷を取り戻すことができる。
第282条
もし奴隷が、自分の主人に向かって「貴方は決して私の主人ではありません」と言った場合、その主人はその奴隷が自分の奴隷であるかどうかを立証した上で、その奴隷の耳を切り落とすことができる。
いかがだったでしょうか。単に有名な「目には目を、歯には歯を」というルールだけでなく、相続のルールや犯罪被害者の救済、危険負担、製造物責任のような考え方もあったので、現代の視点からみても意義があると考えられます。また、このような法典を定めることによって、後の王を拘束するという意味もあったのかもしれませんね。
では、今日はこの辺で、また。