若者たちが日本のタテ社会を打破する日
こんにちは。
これまでの日本社会はタテ社会でした。伝統的に、師匠(先輩)に教えを請い、厳しい指導に耐えながら仕事を覚えていくというスタイルです。これが会社組織になったとしても、人と人とのつながりが密で「わが社の方針から1ミリでもズレた行動は許さん!」といったトップダウン型がほとんどでした。
ところが、今後の社会では若者が得意とするSNS上のヨコのつながり、つまり人脈(ネットワーク)の重要性を意識しながら、自らのプラットフォームを築いた者が勝ち残ると説く本がありました。こちらが本日取り上げてみたい著書です。
現在、勝ちまくっているGAFAなどの企業は、独自のプラットフォーム戦略で、大きな利益を上げています。
インターネット上の空間に、会員を募集して巨大なネットワークを構築し、そこから個人・企業の情報やお金を集め、そのデータを分析して、再度最適な情報を提供するということが行われています。
ここで注目すべき点は、すべての関係者に利益が与えられているということです(ちなみに最大の利益を上げるのは胴元のプラットフォーマーなのですが)。みんなを勝たせることで超巨大に発展したプラットフォームの中で、個人会員には有益な情報を得られるというメリットがあるのです。
視点を変えると、個人でもネットワークを構築することができれば、それが資産になるということが言えるのです(しかも税金がかからない)。このように言うと「私には人を集めるだけの能力や個性はありません」と考える人がいるかと思います。しかし、そうとも限りません。むしろ、人と人とのつながり方(関係性)が重要とされているのです。この点について、ネットワーク理論の研究成果を見ながら、詳しく考察していきましょう。
1.友達の友達という希薄な人間関係にこそ強みがある
スタンフォード大学のマーク・グラノベッターの「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さの理論」(1973年)によると、家族・親友・同じ職場の人間のような強い人脈ネットワーク(強い紐帯)よりも、友達の友達といった弱い人脈ネットワークの方が価値のある情報をもたらしてくれるというのです。
例えば、A社が最大の利益を上げるためにどうしてもB社とつながりたいと考えていたのですが、A社の中にはB社の社員を知る人がいなかったとします。ところが、A社のある社員の兄とB社の社員とが大学時代の同級生だったことが判明し、この兄を頼ることで気軽にB社にアプローチすることができたのです。ここから分かることは、この兄のポジション自体に価値があり、ネットワーク用語ではA社とB社をつなぐブリッジ(橋)として機能していることになるのです。
2 他流試合で経験豊富な人材が求められる
シカゴ大学のロナルド・バートの「構造的空隙(Structural Holes)の理論」(1992年)によると、自分と同じ考えの人がつながる高密度で同質的なネットワークでは自由に動ける隙間がなく、むしろ隙間の多いネットワーク(密度の低いネットワーク)を構築する方が同じコストで様々な情報が得られ、イノベーションが起こるというのです。
例えば、会社の中のような高密度のネットワークでは、自由奔放に意見を言うと窓際に追い込まれる可能性があるのですが、会社の外のオンラインサロンのような密度の低いネットワークに所属していれば、関係性の遠い人から得られたちょっとした情報(ex. 〇〇会社が新製品を発表するよ)に大きな価値を見出せることがあるのです。
バートの実証実験でも、違う職場の人、違う部署の人、違う職種の人、異なる年代、異なる人種、異なる性別、異なる学歴など、自分と違う属性を持つ人との関係を重視する人ほど昇進が速いということが明らかになっています。
3 若者は人脈ネットワークで総合力を高めている
さて、生まれたときからデジタル社会に慣れ親しんでいる若者たちは、インスタグラムやツイッターなどをふんだんに使って生活をしています。様々な人とのつながりから多くの有益な情報を得て、まさしく総合格闘家のようなファイトスタイルを身につけていると思われます。
若者たちは、メガプラットフォーム上で有益な情報を提供して信頼を獲得し、家族や会社といった密な人脈ネットワークとは異なる、弱い人脈ネットワークを構築することで、多くの稼ぎを得ているのです。
このように考えると、これまで鉄壁とされた日本のタテ社会構造が、若者たちのヨコのつながりによって打ち崩されているという構図が浮かび上がったのではないでしょうか。
ただし、「立つ鳥跡をにごさず」という諺があるように、過去に出会ったあらゆる人たちとのつながりをおろそかにできなくなっているということにも注意する必要があるでしょう。ミルグラムがスモールワールド理論で証明したように、世間はとても狭いですからね。
それでは今日はこの辺で。
では、また。
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