マクドナルドオレンジジュース事件
こんにちは。
マクドナルドの人気商品は、テリヤキバーガーやダブルチーズバーガーのようですが、どっこいフィレオフィッシュが好きだったりする松下です。
さて、今日はマクドナルドオレンジジュース事件(名古屋地判平成11年6月30日判例時報1682号106頁)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
ある女性がマクドナルドでダブルチーズバーガーセットを購入し、会社に持ち帰りました。女性は、ダブルチーズバーガーとフライドポテトを全て食べ終わった後で、オレンジジュースを飲んでいました。すると、喉にガラスの破片のようなものが刺さる痛みを感じ、その場で吐血してしまったのです。すぐさま銀行内にある診療所で診察を受けた後、救急車で国立名古屋病院に運ばれ、診察を受けました。診断結果は、のどに傷がつき、出血しているとのことでした。その後、胃の中も検査しましたが、遺物は発見されず、飲みかけのジュースは手違いで病院内で捨てられてしまい、中身の検査ができませんでした。
女性は、マクドナルドに対して、ケガによる精神的苦痛について慰謝料30万円と弁護士費用10万円を請求しました。
2 女性側の主張
購入したダブルチーズバーガーとフライドポテトを全て食べ終わった後に、オレンジジュースに含まれていた異物によって、喉を負傷し出血した事実は、一緒に食事をとっていた同僚だけでなく、国立病院の医師も確認しています。また当時、歯科治療を受けておらず、健康で喉にも何の問題もなかったはずです。よって、オレンジジュース以外に喉に傷を負う原因はなかったと考えられます。
3 マクドナルド側の主張
オレンジジュースは納入される際に金属探知機によるチェックを行っているので、製造工程からストローを通過するような異物が混入することはあり得ません。また、ダブルチーズバーガーとフライドポテトを全て食べ終わるまで、オレンジジュースを飲まなかったというのは不自然です。医師のカルテには「咽喉部キズついている?」との記載しかなく、「喉に傷がついている」との断定的な診断は下されていないはずです。
4 名古屋地方裁判所の判決
受傷はジュースに起因するものであると認めるのが相当である。ジュースに飲んだ人の喉に傷害を負わせるような異物が混入していたことは、ジュースが通常有すべき安全性を欠いていたものであり、欠陥を認めるのが相当であり、本件においては異物が混入していたことが明らかである以上、異物の正体が不明であることは右欠陥の認定に影響を及ぼさない。よって、負傷により被った精神的、肉体的な苦痛に対する慰謝料などとして10万円の損害賠償を認めるのが相当である。
5 PL法が初めて適用された事件
今回の事件は、日本で初めて製造物責任法を適用し、メーカー側に製造物責任を認めたものです。
アメリカのマクドナルドでも、ドライブスルーでコーヒーを買った79歳の女性が、それをひざの上にこぼして火傷をしたという事件があり、裁判所が製造物責任を理由に約3億円近い賠償を命じたものも有名です(その後、和解してマクドナルドが約5000万円を支払うことで決着)。
メーカーは、販売工程を見直したり、販売前に製品を自主検査したり、消費者に対して説明書きなどで情報を提供するなど、かなりの対応が必要であることを認識しておく必要がありそうですね。
では、今日はこの辺で、また。