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松下電器テレビ発火事件
こんにちは。
ブラウン管テレビの時代、テレビをバンバン叩けば写りが良くなるという経験をしたことがあるのですが、まさか精密機械の任天堂のWiiリモコンもバンバン叩けば直ることがあると知って驚きましたね。
さて今日は、リビングにおいていたテレビが火をふいて、多大な損害が出た「松下電器テレビ発火事件」(大阪地判平成6年3月29日判例タイムズ842号69頁)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
太子建設工業株式会社は、八尾市南太子堂にある事務所の2階1号室に松下製のカラーテレビを設置していました。8カ月経ったある日の午後3時、突然、テレビから煙が出て発火し、これによって事務所の39㎡が全焼しました。そこで、太子建設は、松下電器産業株式会社に対して、約730万円の損害賠償を求めて提訴しました。
2 太子建設の主張
俺たちは、テレビの発火でファックスとコピー機で80万円、カーテン6万円、流し台30万円、トイレの便器32万円、ストーブ・クーラー・テレビ82万円、机・イス・製図板52万円、ロッカー・作業服・測量器具40万円、応接セットなどの設備100万円、カラオケ用機械150万円、テーブル58万円といった損害を被った。これに、お詫び金及び休業補償金50万円、弁護士費用50万円を合わせた約730万円の損害賠償を請求します。テレビには、通常の使用中に発火事故を起こしたという欠陥があったので当然の請求です。
3 松下電器の主張
テレビなどの電気用品には電気用品取締法にょる厳しい規制があり、これまで問題となった型式のテレビの発火事例はない。火災の原因は、テレビの電源コードを不正に使用し、あるいは不注意に取り扱ったことにより電源コードに短絡が生じたことが原因だと考えられる。今回は電源コードから出た火がカーペットに着火して燃え広がったと考えられるが、太子建設は証拠となる電源コードを含むテレビを廃棄し、ただ目撃者がテレビ辺りから出火したらしいというだけ
で、それ以上の真相を究明しようとせず、具体的な事実を証明しようとしない以上、その請求は棄却されるべきである。
4 大阪地方裁判所の判決
製品の製造者は、製品を設計、製造し流通に置く過程で、製品の危険な性状により利用者が損害を被ることのないよう、その安全性を確保すべき高度の注意義務を負うというべきであるから、製造者がその義務に違反して安全性に欠ける製品を流通に置き、これによって製品の利用者が損害を被った場合には、製造者は利用者に対してその損害を賠償すべき責任、すなわち製造物責任を負う。
よって、松下電器は太子建設に対して約442万円を支払え。
5 メーカーの過失の推定
今回のケースで裁判所は、テレビが発火するに至った原因が解明されなかったとしても、テレビ購入から8カ月しか経過していない段階で、テレビ利用時に出火という欠陥があったことを証明すれば、出荷時から欠陥が存在していたことになり、松下電器の注意義務違反が推認されるとしてその責任を認めました。
今回の事件が製造物責任法が施行される前段階のものであったことを考慮すると、今後も製品の安全性に対しては厳しい責任が問われる可能性がありますので、製品事故の発生を防止するための対策を入念に行っておく必要があるでしょうね。
では、今日はこの辺で、また。