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三重リクルート社事件

こんにちは。

 「Canon」の社名の由来が「観音」だったり、「adobe」の社名も自宅の裏に流れているアドビ川から来ていると聞くと、「そうだったのか!」と思ってしまいます。ビジネスを始めるときに、会社の名前にあたる商号をどのようなものにするのかというのは、非常に悩ましいですよね。

 しかし、村田さんが、村田製作所と言う名前の会社を作ることができるのでしょうか。この点を考える上で、三重リクルート事件(東京地判平成5年3月24日LEX DB)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 昭和55年に、営業目的を印刷業、出版業、情報サービス、調査業、広告業として株式会社三重リクルート社が設立されました。その後、三重リクルート社は、求人誌「フューチャー」、求人情報誌「三重就職情報」などを発行していたのですが、競業関係にある株式会社リクルートは、営業活動の混同のおそれがあるとして、不正競争防止法に基づいて、「三重リクルート社」の商号と営業表示の使用禁止と、500万円の損害賠償を請求しました。

2 リクルートの主張

 日本国内において「リクルート」という名前は、営業上の施設または営業活動を表示するものとしてかなり著名で、当然に三重でも営業活動をしています。「三重リクルート社」の商号は、その主要部分である「リクルート」において同一であり、類似しています。すると、リクルートの営業活動と三重リクルート社の営業活動を混同する恐れがあり、実際に、ある会社が「三重リクルート社」に支払うべきお金を、「リクルート」に送金した事例があるのです。よって、「三重リクルート社」の商号と営業表示の使用しないでいただきたいです。

3 三重リクルート社の主張

 そもそも、おたくらは昭和38年設立時の商号が「株式会社日本リクルートセンター」やったはずや。ほんなら、「日本」と「三重」が営業活動の地域と範囲を示し、この両者の間に具体的混同を生ずるおそれはないんやから、ことさら「リクルート」の部分だけを取上げて類似してるっちゅうことは言えんやろ。 
 わしらは、リクルートさんが周知性を獲得する前から、この名前でやってきたんやし、リクルートさんも平成3年に社名の表記を英語の「RECRUIT」に変更しているので、余計に混同されることがなくなっとるんとちゃうか。
 もっというと、「リクルート」という言葉は、「求人、人材募集、学生の就職活動」という意味で用いられる慣用名称、あるいは普通名称であってやな、全国に商号中に「リクルート」ちゅう文字を含む株式会社が9企業もあるんや。せやから、「リクルート」を使うなちゅう請求は筋が通らんのとちゃうか。

4 東京地方裁判所の判決

 商号中の「三重」の部分の自他識別力は極めて弱いものと認められ、この局面において要部は「リクルート」の部分にあるものと認められる。したがって両商号は要部「リクルート」を共通にするものであるから、類似するものである。
 商号等の著名性、両社の事業内容が共通であること、営業活動地域の重なり合い、両社の誤認混同の実例等を総合すれば、三重リクルート社の商号が使用されることにより、これに接した取引者、需要者に、具体的な取引きの場で誤認混同を生じさせており、今後も誤認混同を生じさせるおそれがあるというべきである。そしてこのような混同を生じ、またそのおそれが認められる以上、三重リクルート社の商号等の使用によりリクルートの営業上の利益が害され、またそのおそれがあるものと認められる。
 よって、三重リクルート社の商号及び営業表示を使用してはならない。またリクルートに対して約100万円を支払え。

5 会社設立時の類似商号調査

 会社法8条では、何人も不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないとされています。不正の目的がなかったとしても、今回のケースのように、故意または過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害したときには、損害賠償の責任を負う可能性があります。会社を設立する際には、類似の商号がないかどうかをしっかりと調査する必要があるでしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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