アマミノクロウサギ事件
こんにちは
特別天然記念物のアマミノクロウサギですが、現地の人でもほとんど見ることができないばかりか、夜に出歩くとハブに噛まれるという危険があると知ってブルってしまいましたね。
さて今日は、アマミノクロウサギが裁判で戦えるのかどうかが問題となった「アマミノクロウサギ事件」(福岡高宮崎支判平成14年3月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
1995年、岩崎産業は奄美大島でゴルフ場の建設を計画していました。これに対して、自然破壊を何とか食い止めようとしていた地元民たちは、野生生物アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミ、ルリカケスを原告として、林地開発の許可をした鹿児島県知事に対して、許可の取消しなどを求めて提訴しました。
2 アマミノクロウサギ(の代弁人)の主張
ゴルフ場の開発によって、森林が伐採され、動物の種の保存に深刻な影響を及ぼす恐れがある。また、調整池などの堰堤の崩壊により周辺住民、土地利用関係者に害が及ぶ危険性がある。これは森林法10条に違反しているので、林地開発の許可の取消しを求める。
3 鹿児島県知事の主張
日本の法律では、権利義務の主体は個人と法人に限られている。すると、動植物や森林などの自然そのものは、いかに人類にとって希少価値がある貴重な存在だとしても、それ自体として権利の主体となることができない。なので、アマミノクロウサギらに原告適格を認めることはできない。また、自然の権利を代弁する市民や環境NGOが当然に原告適格を有するという解釈をとることは相当ではない。
4 福岡高等裁判所宮崎支部の判決
森林法の規定は、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害防止機能という森林の有する公益的機能の確保を図るとともに、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者として、その無効確認訴訟における原告適格を有すると解するのが相当であるが、他方、そのような範囲の地域の外に居住する者は原告適格を有しないものといわざるをえない。
そうすると、自然人ではないアマミノクロウサギら、環境ネットワーク奄美が本件訴訟について原告適格を有しないことは明らかである。また、その余の控訴人らについても、岩崎産業に対する本件処分に係る開発地域に近接する一定範囲の地域に居住する住民ではないことが認められるから、やはり原告適格を認めることはできない。
よって、アマミノクロウサギらの控訴を棄却する。
5 訴訟の当事者になれるのは人間と法人だけ
今回のケースで裁判所は、奄美大島で計画されていたゴルフ場建設について、鹿児島県知事に対して開発許可の取消しや無効を求めたアマミノクロウサギは原告となる適格がないとして、訴えを退けました。また、ゴルフ場建設に反対している自然保護団体も建設予定地から離れた場所に住んでいることから直接の利害関係がないので原告適格がないともされています。
今後は、動物のみならずドラえもんのようなAIに原告適格があるかどうかが問題となりそうですね。
では、今日はこの辺で、また。