見出し画像

 こんにちは。

 戦後の混乱期、日本で青酸カリを使った大量殺人事件が起きました。その被疑者として逮捕された平沢貞通(さだみち)は、無罪を叫びながらも、死刑判決が確定し、その後に獄中で病死することになります。


 今日は、冤罪を主張して裁判のやり直しを求める再審請求と死刑執行との関係について、帝銀事件(最大判昭和30年4月6日裁判所ウェブサイト)を題材に検討してみたいと思います。

1 どんな事件だったのか

 昭和23年、帝国銀行(現在の三井住友銀行)椎名町支店で12名が毒殺され、現金と小切手18万円(現在の価値で約1000万円)が強奪されるという事件が起きました。事件から6カ月して、警察は平沢貞通を容疑者として逮捕しました。しかし、平沢は「私はあの犯行はおこなっておりません」、と一貫して無罪を主張していました。

2 最高裁判決で死刑が確定

 東京地方裁判所、東京高等裁判ともに、平沢に死刑判決を下しました。自白以外に決定的な証拠はないと主張する平沢は、最高裁判所に上告しましたが、最高裁判所の大法廷でも、平沢の上告を棄却し、死刑判決が確定しました。

3 最長の獄中生活と再審請求

 死刑判決が確定後、平沢は常に死刑執行におびえながら、「裁判官の人殺し」、「嘘つき刑事、卑怯者」といった手紙を獄中から送りながら、無実を訴え続けていました。また裁判のやり直しを求め、その再審請求は18回にも及びましたが、そのすべてが棄却されました。そして死刑執行がなされないまま、獄中生活は32年にも及んだのです。

 昭和62年、平沢は老衰でその95年の生涯を獄中で終えることになりました。

4 死刑の執行と再審請求

 刑事訴訟法475条2項では、死刑の執行は、判決の確定後、原則として6カ月以内に行うと定められています。

【刑事訴訟法475条】
① 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
② 前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

 実際には法務大臣が慎重に検討した上で、執行の判断をしているようです。しかし死刑執行の順番や時期をどのように決めるかの判断基準は明らかにされていません。また、再審請求中の死刑因であったとしても、執行の対象となったこともあります。条文の文言では、再審請求中であったとしても死刑の執行命令を禁止しているわけではないという解釈のようです。

 権力の監視を怠らないことが重要だと思いますので、今後も死刑執行と再審請求について注目していきたいです。

では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?