見出し画像

栄町共同書店◉本を読むサル読まぬサル #01

◉2024年10月1日(火)

栄町市場の一角に「栄町共同書店」オープン。
この書店については、以下の記事をご覧あれ。わたしは「書店のかたちをした思考実験アドベンチャー」と捉えているんだけど、当たらずとも遠からず。


◉10月3日(木)

台風18号の影響か、蒸し蒸ししている。
そのせいで、歩いて20分ほどの距離なのに、店に着いたら汗びっしょり。
店番をしているKさんに、はじめましてのご挨拶をして、箱店主契約書を2部作成。これは栄町共同書店とわたし、双方が1部ずつ保持。そして販売管理用のスリップを30枚もらう。

これで今日から、わたしも立派な箱男。いや違う。箱店主。
でもまあ「箱」を通して、栄町共同書店、あるいは栄町市場を「覗き見る」という意味では、箱男と大差ないのかも。
すると、この備忘録も箱男による「報告書」? じゃあ、そのうち失踪します。

帰宅後、棚出しする本を20冊ほど選び、山下達郎のラジオ番組を聴きながら値付け。いまのところ「中高生がおこづかいで買える価格帯」ということを考えている。
べつに儲けようという気はないし、1か月の賃料4,000円を賄えればよし。具体的には4,000円の3倍程度、12,000円の売り上げがあれば御の字。多少下回ることを想定して、月の売り上げ10,000円が当面の目標。
以上、取らぬ狸の皮算用。


◉10月4日(金)

本の搬入。雨が降っているのでタクシー。ひめゆり通りはいつも混んでいる。
屋号は「三匹の淋しい猿」。このウェブログ(死語)と同じ名前。
箱店用のショップカードはデザイナーのTさんにお願いした。忙しいのに特急で仕上げてくれてありがたや。
どんなカードかって? それは現地でお確かめください。

販売本のリスト。

佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社インターナショナル、2008) 400円
柴田元幸・小島敬太編訳『中国・アメリカ 謎SF』(白水社、2021) 500円
伊東潤『琉球警察』(角川春樹事務所、2021) 400円
小谷野敦『谷崎潤一郎伝 堂々たる人生』(中央公論新社、2006) 500円
Stephen King "Different Seasons"(Hodder, 2012) 300円
白井聡『国体論 菊と星条旗』(集英社新書、2018) 200円
毛内拡『「気の持ちよう」の脳科学』(ちくまプリマー新書、2022) 200円
大江健三郎『あいまいな日本の私』(岩波新書、1995) 300円
岩波書店編集部編『翻訳家の仕事』(岩波新書、2006) 200円
牧野成一『日本語を翻訳するということ 失われるもの、残るもの』(中公新書、2018) 300円
櫻澤誠『沖縄現代史 米軍統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』(中公新書、2015) 300円
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮文庫、2022) 300円
斎藤環『生き延びるためのラカン』(ちくま文庫、2012) 200円
松永正則『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中公文庫、2023) 300円
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫、1982) 200円
グレアム・グリーン『二十一の短篇』(ハヤカワepi文庫、2005) 200円
アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』(ハヤカワ文庫、2010) 300円
アガサ・クリスティ『鏡は横にひび割れて』(ハヤカワ文庫、2004) 300円
スティーヴン・キング『悪霊の島』上下(文春文庫、2016) 500円

2024年10月4日搬入分。取り消し線は売れたもの(10月25日時点)

実際、棚に並べてみると、20冊程度だと棚としての密度が足りない気がするなあ。もうちょっと増やすか。こんどから30冊くらいを意識したほうがいいのかも。
こういうのって取るに足らないことではあるのだけど、自分なりにあれこれ考えながら試してみると、新刊書店や古本屋の空間がプロの技に支えられていることを実感する。


◉10月10日(木)

前回の搬入から1週間ほど経過。
寝る前に値付け。以下、追加本。

ヴァルター・ベンヤミン著、野村修編訳『暴力批判論 他十篇 ベンヤミンの仕事1』『ボードレール 他五篇 ベンヤミンの仕事2』(岩波文庫、1994) 2冊で400円
野村修『ベンヤミンの生涯』(平凡社ライブラリー、1993) 300円
柄谷行人『政治と思想 1960-2011』(平凡社ライブラリー、2012) 400円
紀藤正樹『決定版 マインド・コントロール』(アスコム、2017) 400円
雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』(フォレスト出版、2021) 400円
為末大、今井むつみ『ことば、身体、学び』(扶桑社新書、2023) 400円

2024年10月11日搬入分。取り消し線は売れたもの(10月25日時点)


◉10月11日(金)

本の搬入。まずは棚のチェック。先週と変わりないなあ。1冊も売れなかったか。と思いきや、店番のKさんが
「たしか、1冊売れてましたよ。えーっと、『生き延びるためのラカン』……」
と教えてくれる。初の売り上げ200円也。
しかし、1日1冊×20日=1か月で20冊くらい売れれば……という机上の空論は早くも崩れ去る。

いっぽう、栄町共同書店としては、アレコレ売れている様子で、よい傾向。
自分の棚だけを考えると「1冊しか売れてない」というふうになってしまうけれど、店全体としてはチョコチョコ動きがあるということ。小商いとはそういうものなのだろう。

本を選んだり、搬入日のことばかり考えていたから、そういえば「客」として見ていないなあと思い、すこし棚を眺めてみたら、いきなり藤枝晃雄編訳『グリーンバーグ批評選集』(勁草書房、2005)なんてものを発見してビビる。1,500円で購入。

この本を置いていた「ミニ書店ハヤシヤ」はHさんという方の連名で、こども向けの本も並んでいることから、推測するに、親子で運営しているのではないかな。そういうのが透けて見えるところはたのしい。
また、それぞれの本にちょっとしたコメントも付いていて、こういう投壜通信的な「微弱なコミュニケーション」もおもしろい。

どんなメッセージなのか、ここで紹介しようかなあとも思ったんだけど、なにしろ投壜通信ですからね、つまり〈わたし〉宛に届いたわけだから、この短いテキストはわたしだけのもの。 (O)


いいなと思ったら応援しよう!