もじ イメージ Graphic 展
原弘から葛西薫に至るまで、本邦のデザイン史を超絶的な構成で圧縮した「日本語の文字とデザインをめぐる断章」のコーナーを抜けると、予兆としての80年代を横目に見ながら、切断としての1990年代からはじまる、2000年代、2010年代、そして2020年代のタイポグラフィカルなデザインが、歴史的なパースペクティヴを踏まえつつ、いくつもの切り口でアクチュアルに再編成されている……
まさに百花繚乱と呼ぶにふさわしい展示で、わたしは圧倒されました。
百花繚乱? つまり「さまざまの花がいろどり美しく咲き乱れ」(大辞林)ていて、ここで重要なのは「いろどり美しく咲く」こと以上に、「乱れ」なのだと思うのですよ。
どういうことかというと、良くも悪くも、これまで文字をめぐる展示は、端正で静的なものが多く、それはそれでビシッと張りつめた緊張感があり、わたしは好ましく思うけれども、「もじ イメージ Graphic 展」は、そういう伝統(?)とは一線を画していてですね、全体的に文字のバザールといった趣があり、だいぶにぎやかだし、とてもダイナミックな印象を受けました。
あらためて思うに、動線設計が秀逸で、この「どこからどういうふうに見てもいい」という出入り自由な空間は、おそらく現代人たるわたしたちの生活様式、より具体的には、始点も終点もないインターネットのありかたと、密接に関係しているのではないかしらん。
と同時に、日本語の文字組の、よくよく考えると、めちゃくちゃ異常な配合(ひらがな、カタカナ、漢字、数字、アルファベット、各種記号……)の、その祝福すべき「デタラメさ」の写し絵でもあると思います。
ところで、わたしとしては、ここに平野甲賀の仕事が含まれていないことを、すこしさびしく感じてしまう。だって、いかにオールドスクールとはいえ、大原大次郎とも多少かかわりがあったわけですし。まあ、単にご遺族に出品を断られたのかもしれませんけどね。 (O)
会期 2023年11月23日(木)〜2024年3月10日(日)
会場 21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区)