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栄町共同書店◉本を読むサル読まぬサル #04

◉12/3(火)
11月に売れたものは以下のとおり。1冊だけ。

知名定男『うたまーい 昭和沖縄歌謡を語る』(岩波書店、2006) 1,200円

2024年10月の売上:3,200円
2024年11月の売上:1,200円

ここから経費を差し引いて、利益はどうなっているかというと──なんてことは考えません。「商売」ではないからね。考えないのだけど、しかし、わたしも年相応の社会人経験があるから、考えざるをえない。というのが、商いの構造というもので、そこから見えてくるものもある(こういうとき、わたしは橋本治の影響を受けているのだなあ、と思ったりもする)。


◉12/4(水)
「本が売れない」というのは、ここ十数年、恒常的に見聞きするお話で、わたしだってジュンク堂書店に足を運ぶのは月1回くらいでしかない。

わたしの場合、必要な本や気になる本は、とりあえずAmazonの「ほしい物リスト」に追加しておいて、月末か月初、那覇店に足を運び、リストをチェックしながら、店頭で吟味する(追記:ジュンク堂は専用アプリをリリースしたので、今後はそちらを使うようになるはず)。その際、もちろんリストアップしたすべての書籍を買うわけではなく、財布の中身と、必要性に応じた優先順位、そしてそのときの気分に従い、買うものと買わないものとが分かれていく。

そうすると「気にはなっているけど、優先順位の低い本」も出てくる。そういうものは1年たっても買うまでには至らない。つまり「棚に売れ残っている状態」のまま。たとえば『ポータブル・フォークナー』(河出書房新社)とか。

ジュンク堂がすごいなあと思うのは、いつだれが買うかもわからないのに、そして専門書を含め、少数の読者しか手に取らないであろうものなのに、そういった店頭在庫を、あれもこれも山ほど抱えているところ。結果として、ジュンク堂に行けば、ほぼ確実に「在る」ということが、書店への信頼性にもつながっている。
単に「大型書店」だから、「店舗面積」が広いから、それで「なんでもそろっている」ということとも、ちょっと違うのよね。いや、違わないか……。

そんなジュンク堂書店那覇店は、2024年に15周年を迎えたそうで、おめでとうございます、と言うのと同時に、利用者としては、ありがとうございます、とも言わなければならない。大分店のように閉店されては困るから。

それで、なにが言いたいのかというと、栄町共同書店の箱店主としては、短期的には並べた本がバンバン売れるほうがいいに決まっているのだけど、長期的には「そこに行けば、まあまあおもしろそうな本が並んでいる」という具合に、「本のある環境」を意識すべきなのだろうなあ、ということ。まあ、抽象的には理解していたけど、だんだん具体的な輪郭が見えてきた感じとでもいいますか。

うーん、日本野鳥の会みたいになってきたな。野鳥の保護と自然環境の保全。紙の本やリアルな店舗は絶滅危惧種なのである。

そういえば、ジュンク堂は「ブックサンタ」という企画に参加していて、わたしは先日、このシステムを利用し、日本経済新聞社 編集サイエンスグループ編『そのギモン、カガクのチカラで答えます』を、見知らぬどこかのこどもに贈りました。



◉12/4(水)
12月分として、いま棚に並べているものはこちら。

矢部太郎『大家さんと僕』『大家さんと僕 これから』(新潮社、2017/2019) 2冊で900円
村上健志『フルーツポンチ 村上健志の俳句修行』(春陽堂書店、2021) 800円
樹木希林『心底惚れた 樹木希林の異性懇談』(中央公論新社、2019) 500円黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社、2023) 700円
又吉直樹『火花』(文藝春秋、2015) 200円
岸惠子『私の人生 ア・ラ・カルト』(講談社、2005) 400円
加藤シゲアキ『ピンクとグレー』(角川文庫、2014) 200円
志村けん『変なおじさん 完全版』(新潮文庫、2002) 100円
杏『杏のふむふむ』(ちくま文庫、2015) 200円
ポール・ニューマン、品川亮・岩田佳代子訳『ポール・ニューマン語る ありふれた男の驚くべき人生』(早川書房、2023) 1,500円
藤井誠二『誰も書かなかった 玉城デニーの青春 もう一つの沖縄戦後史』(光文社、2022) 800円
加来慶祐『我喜屋優 甲子園の歴史を動かした男』(竹書房、2023) 700円
佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社インターナショナル、2008) 400円
池上永一『海神の島』(中央公論新社、2020) 500円
ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳『ネヴァー・ゲーム』上下(文春文庫、2023) 600円
藤本タツキ『ルックバック』(集英社、2021) 200円
ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮文庫、2021) 200円
星野源『そして生活はつづく』(文春文庫、2013) 200円
角田光代『さがしもの』(新潮文庫、2008) 200円
林真理子『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りてない!』(文春文庫、2019) 200円
原田マハ『独立記念日』(PHP文芸文庫、2012) 200円
外山滋比古『思考の整理学』(ちくま文庫、1986) 200円
「熱風」2024年7月号(スタジオジブリ、2024) 0円

2024年12月16日時点

テーマは、タレントや著名人の本、人気作家の本といった「売れ筋」を並べると、棚の動きはどうなるか、という実験。
こういうのは、書店や古本屋、新古書店の方々が、日々あたりまえのようにやっていることなんだろうけど、アマチュア写真家がプロの技術や構図を真似るように、わたしなりにシミュレートしてみたい。
ちなみに、運営スタッフのひとり、Kさんが、なぜか藤本タツキ『ルックバック』にピンポイントで反応していて可笑しかった(後日、これはすぐに売れた)。


◉12/11(水)
社会学者の打越正行氏が亡くなったらしい。著書の『ヤンキーと地元』(筑摩書房、2019)は大きな話題になったし、あるいは話題になろうがなるまいが、類を見ない仕事であったことに変わりはない。合掌。そして45歳という若さでこの世を去ったのは残念。

いっぽう、『ヤンキーと地元』にかんしては、そのすばらしさは認めつつも、個人的な生理感覚や距離感覚からいうと、非常にキツい本でもあった。なぜなら「すぐ隣にある地獄」が描かれていたから(端的に言うと、沖縄では「教育の敗北」が蔓延している。これは数十年、延々と続いていて、いまだ改善されないし、その見込みもない)。

そういえば今年、さんご座キッチンで食事をしていたら、ボーダーインクの名物編集者Sさんと打越氏が入ってきたことがあり、「あっ、有名人……」と思い、なんとなく目を向けたら、べつに面識があるわけでもないのに、ごく自然な感じで会釈をしてきて、そのとき、わたしは打越氏の「姿勢」を見たような気がしたのだった。記憶のスナップショットとして記しておく。


12/14(土)
幼少期、栄町近辺で育ったHさんの案内で、あれこれ飲み食い。

Photobooks on the Road(和書と古書と絵本と洋書)

SORIANO(ビールというか、ヒューガルテン・ホワイト)

串六×九(焼き鳥)

BAR STEREO(ミュージックバー)


◉12/16(月)
たしか以前は、古いマンションが建っていたような気もするけれど、ひめゆり通りに面した一帯が更地になっている。ホテルにでもなるのかしらん。那覇の、あるいは沖縄のいたるところで眼にする、The 資本主義!な光景。

むかしうちなーすばや 麺樹で軽く腹ごしらえをしてから共同書店へ。大阪からやってきた「F.C.OITO★BOOK」のKさん、Youtubeでおなじみ「沖縄歴史倶楽部」のMさんと、某企画のためのおしゃべり。
その後、Kさんとふたりで小料理きよみに入るも、ここはカラオケスナックだということが判明。ちょっと失敗したな。Kさん、ごめんなさい。 (O)



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