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栄町共同書店◉本を読むサル読まぬサル #02

◉2024年10月16日(水)
沖縄タイムスの読者投稿欄に「茶飲み話」というコーナーがあり、本日の書き手は69歳の方。その昔、那覇市内にあった書店名を列記している。

 かつて琉球政府前交差点近くにあった文教図書、開南の坂を下った右手にはみつや書店、平和通りに安木屋、そして古くは国際通りを挟んで大越百貨店の左斜め前に店舗を構え、のちに沖映通りや国際ショッピングセンター内に店舗を広げた球陽堂書房。

沖縄タイムス 2024年10月16日(水) 真喜志康雅「一冊の本への憧憬」

記憶の地誌に軽いめまいをおぼえる。一回り下の世代ではあるけれど、わたしにとっても、これらの書店はなじみ深い場所だったから。

文教図書では「月刊スターログ 日本版」を立ち読みしたなあ。みつや書店では、その「スターログ」で紹介されていた"MANGA"を買った。これは大友克洋が目当てだったのだけども、洋書だから高かったおぼえがある。

一銀通りの安木屋では大友克洋『童夢』を予約したし、国際通りの球陽堂では、細江英公が三島由紀夫を撮影した『薔薇刑』に衝撃を受けたり(細江英公さん、9月に亡くなりましたね。合掌)。

インターネットはすごいとあらためて思ったのが、"MANGA"の出版経緯を椎名ゆかりさんという方がリサーチしていたこと。積年の謎が解けました。しかし、なんでこんなマイナーな出版物が那覇の書店に並んでいたのか、そっちも謎。

マイナーな出版物といえば、一銀通りの安木屋はニューウェーヴ系のマンガの品揃えがやたら充実していて──たとえば、けいせい出版って知ってます? いまの若い人どころか、わたしと同世代ですら、99%は知らないよね。そこが出していた〈けいせいコミックス〉がずらり並んでいたんですよ。

えーっと、で、何が言いたかったかというと、10代のころのわたしにとって、書店というのは、一種のワンダーランドだった、ということ。なので、栄町共同書店もそういう場所になってほしいという気持ちがある。

なんなら、むかしのわたしみたいに「ちょっと背伸びしたい中高生」が立ち寄ってくれてもいい。インターネットとはまた違う回路への入口としてね。とはいえ、栄町共同書店に、いわゆる中高生向けの本があるかどうか……。

ただ、そもそも本というものは、興味があるものを自由に手に取り、勝手気ままに読めばいいのであって、だから「中高生向け」というのも便宜的な物言いでしかない。その時々の判断や経験── おもしろい本だったから一気に読んだとか、つまらない本だったから途中で放り投げたとか──が、正しかろうと間違っていようと、判断したことや経験したこと自体は、身体感覚として蓄えられるっていうか。


◉10月17日(木)
本の搬入。

ポール・アルテ『死まで139歩』(ハヤカワ・ミステリ、2021) 600円
エリー・アレグザンダー『ビール職人の秘密と推理』(創元推理文庫、2022) 300円
森本浩平編『沖縄。人、海、多面体のストーリー』(集英社文庫、2022) 300円
大城立裕『レールの向こう』(集英社文庫、2021) 300円
春日武彦『恐怖の正体』(中公新書、2023) 500円
「熱風」2024年2月号(スタジオジブリ、2024) 0円
「熱風」2024年7月号(スタジオジブリ、2024) 0円

「熱風」はスタジオジブリが出している小冊子。ジュンク堂でもらったものだし、だからべつにタダでもいいでしょ、と思って0円に。こんなふうに、ときおり「0円本」を紛らせていくのも、支離滅裂でおもしろいかもしれない。つまり、柄谷行人いうところの交換様式D。ウソです。

与太はともかく、栄町共同書店については、アーレントいうところの、労働(labor)、仕事(work)、活動(action)、この3つが相互作用していく場所になるのではないのかと、ぼんやり感じています。

なお、箱店主については、わたし自身は遊び(play)だと思っている。たとえば、草野球とか釣り、将棋やバンドとおなじように、「箱店主」という趣味があったっていい。われわれはホモ・ルーデンス(ホイジンガ)なのだから。

ところで「シコウ77 BOOK」の箱店主であるMさんが、たまたま店内にいて、柄谷行人『政治と思想 1960-2011』を買ってくれました。どうもありがとう。あなたは男前だ!


◉10月24日(木)
雨音はショパンの値付け。

本田靖春『誘拐』(ちくま文庫、2005) 200円
トマス・ハリス、高見浩訳『カリ・モーラ』(新潮文庫、2019) 300円
ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳『ネヴァー・ゲーム』上下(文春文庫、2023) 600円
クライブ・カッスラー&ポール・ケンプレコス、土屋晃訳『パンデミックを阻止せよ』(新潮文庫、2015) 100円
林(高木)朗子+加藤忠史編『「心の病」の脳科学』(講談社ブルーバックス、2023) 400円
星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書、2010) 300円
小泉悠『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022) 300円
永田守弘『教養としての官能小説案内』(ちくま新書、2010) 200円
大江健三郎『親密な手紙』(岩波新書、2023) 400円
柳瀬尚紀『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』(岩波新書、1996) 200円
E.H.カー、清水幾太郎訳『歴史とは何か』(岩波新書、1962) 200円
ポール・セロー、村上春樹訳『ワールズ・エンド(世界の果て)』(文藝春秋、1987) 200円
村上春樹『パン屋再襲撃』(文藝春秋、1986) 300円
池上永一『海神の島』(中央公論新社、2020) 500円
新垣譲『東京の沖縄人』(ボーダーインク、2003) 200円

基本的には「意識の低い本棚」を目指している。いまどきの「コスパ」やら「タイパ」やらとは無縁の本ばかりなので。余裕が出てきたら、「この本は絶対オススメしません! 読むだけ時間のムダ!」といった感じのPOPもくっつけてみたい。

どうでもいいことだけど、コスパやタイパを徹底していくと、究極的には「生きてくのマジだり〜わ! 呼吸すんのムダじゃね?」の境地に達しそうな気もしていて、それはそれでセックス・ピストルズっぽい。no future.


◉10月25日(金)
雨が降るのか降らないのか、雲行き怪しい空の下、本の搬入。
スティーヴン・キングの上下2冊が消えている。それ含め、数冊売れたらしい。

追加分に加え、売れなかった本を下げたりして、すこし並びを変えてみる。完全に自己満足の世界。以下、現状のリスト。

小谷野敦『谷崎潤一郎伝 堂々たる人生』(中央公論新社、2006) 500円
佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社インターナショナル、2008) 400円
村上春樹『パン屋再襲撃』(文藝春秋、1986) 300円
ポール・セロー、村上春樹訳『ワールズ・エンド(世界の果て)』(文藝春秋、1987) 200円
池上永一『海神の島』(中央公論新社、2020) 500円
ポール・アルテ、平岡敦訳『死まで139歩』(ハヤカワ・ミステリ、2021) 600円
新垣譲『東京の沖縄人』(ボーダーインク、2003) 200円
E.H.カー、清水幾太郎訳『歴史とは何か』(岩波新書、1962) 200円
櫻澤誠『沖縄現代史 米軍統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』(中公新書、2015) 300円
小泉悠『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022) 300円
紀藤正樹『決定版 マインド・コントロール』(アスコム、2017) 400円
雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』(フォレスト出版、2021) 400円
春日武彦『恐怖の正体』(中公新書、2023) 500円
為末大、今井むつみ『ことば、身体、学び』(扶桑社新書、2023) 400円
林(高木)朗子+加藤忠史編『「心の病」の脳科学』(講談社ブルーバックス、2023) 400円
毛内拡『「気の持ちよう」の脳科学』(ちくまプリマー新書、2022) 200円
星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書、2010) 300円
大江健三郎『あいまいな日本の私』(岩波新書、1995) 300円
大江健三郎『親密な手紙』(岩波新書、2023) 400円
牧野成一『日本語を翻訳するということ 失われるもの、残るもの』(中公新書、2018) 300円
岩波書店編集部編『翻訳家の仕事』(岩波新書、2006) 200円
柳瀬尚紀『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』(岩波新書、1996) 200円
永田守弘『教養としての官能小説案内』(ちくま新書、2010) 200円
トマス・ハリス、高見浩訳『カリ・モーラ』(新潮文庫、2019) 300円
ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳『ネヴァー・ゲーム』上下(文春文庫、2023) 600円
クライブ・カッスラー&ポール・ケンプレコス、土屋晃訳『パンデミックを阻止せよ』(新潮文庫、2015) 100円
エリー・アレグザンダー、越智睦訳『ビール職人の秘密と推理』(創元推理文庫、2022) 300円
アガサ・クリスティ、青木久惠訳『そして誰もいなくなった』(ハヤカワ文庫、2010) 300円
「熱風」2024年2月号(スタジオジブリ、2024) 0円
「熱風」2024年7月号(スタジオジブリ、2024) 0円

11月21日時点

服といっしょで、「選んで組み合わせる」というのも、それなりのバランス感覚が求められますな。ガチガチに決めすぎるのも窮屈だし、あまりにもバラバラだと散漫になるし。

組み合わせるというのは、たとえばポール・セローの短編集と新垣譲のインタヴュー集、このふたつは in exile という点において、かすかに響き合っているんですよ。あるいは大江健三郎と柳瀬尚紀のコレスポンダンスとか……その他いろいろ。くりかえすけれど、完全に自己満足の世界。

帰りがけ「Bar Coco Jasmine」という落ち着いた感じの酒場に入ってみる。ここは南国沖縄。だけれども、北方の酒、与市を水割りで。探偵はBARにいる。
壁に独特の形状をしたスピーカー。店主に訊ねると、なんと知名オーディオの全指向型パイプスピーカーというではありませんか。栄町おそるべし。 (O)



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