伝説の目撃者になった。M-1グランプリ2024感想
神回は本当に素晴らしいと思った時にだけ使いたいと思っているけれど、今年のM-1は間違いなく神回だったし、伝説回だったと思う。
令和ロマンが2連覇した事はもちろんだけど、スタートからその後の展開から、そして決勝進出者10組のレベルから、とにかく全てがエグすぎた。全組のネタの面白さは個人的に過去一だったと思っている。
そもそも今年は例年以上に決勝の日が楽しみだった。準決勝は見てないけど、X見てるとなぜこのコンビが選ばれたのか?みたいな批判を全然見かけなかったし、ほとんどがネタを一度は見た事あるコンビばっかりで面白いのを知ってたし、唯一ネタを見た事なかったジョックロックも、気になってYouTubeとか見てみたらすっかり応援したくなってたし、期待値が上がりまくっていたのです。
しかも、2連覇を目指す令和ロマン、リベンジに燃えるヤーレンズ、4年連続出場の真空ジェシカ、ラストイヤーのトム・ブラウンとダイタク、初出場のママタルト、エバース、バッテリィズ、ジョックロック、でなんだかすごくバランスが良いというか、誰が優勝してもドラマチックになる予感しかないなって感じで、とにかく始まる前からワクワクしてた。
去年と同じく、13時半からのTVerのM-1事前番組から見始めて、敗者復活戦を見て、途中の10分休憩の間に慌ててシャワーを浴び、一応全て見届けた上で決勝を見ました。
オープニングVTRは20回目という事で、歴代のチャンピオンやM-1きっかけにブレイクした芸人さん達の映像や言葉が流れ、すでに泣きそうになってました。そして例年の俺たちが1番面白い、に繋がるVTRを見て、あまりのカッコ良さにちょっと泣いていました。
最初の笑神籖で「トップバッター令和ロマン」になった時からTVの前で大興奮。その瞬間からもう一気に会場がもう令和ロマンの空気になってた。お客さん達の歓迎ムードも後押しし、去年とはまた違うしゃべくり漫才で圧倒的な上手さを見せつけていきなりの高得点。最初からクライマックスでスタートして心掴まれた。
2番目には去年2位のヤーレンズ。冒頭から去年の1位2位が登場する展開に、さらにテンション上がった。ヤーレンズのラジオが大好きだから特に応援してた。ただ、令和ロマンの盛り上がりの後でまともにその影響をくらってしまって、思うように点数が伸びず。今年も面白かったけど、去年の2つのネタに比べて、ボケもツッコミも少しインパクトのある言葉が少なかったのかなという印象で、私は去年の大家さんのネタもラーメン屋さんのネタも大好きなだけに、余計に今年は少し物足りなさを感じてしまったかな。
審査員のともこさんが言ってた「もっとしょーもないのが見たかった」っていうのはなんとなく言いたい事がわかる。もっとくだらないというかアホらしいのが見たかったっていう事かなと思う。2つのトイレットペーパーを頭に乗せて春麗とか、全力おてんばおばさんとか、それってプロポーズ?とか、そういうのが私も大好きだし。ネタの採点が出た後からずっと、楢原さんがわかりやすく元気がなくなっていて、ほんと正直な人だなって思った。そこもまた魅力的で好きなんだけど。
3番目の真空ジェシカの一本目が個人的には今回のM-1で1番好きだった。去年のヤーレンズや敗者復活戦のななまがりもそうだったけど、私はワードが強いネタが好みみたいで、「思想の強い選挙ポスター」「個人経営のチェーン店」「仮装中華」と次々と強烈なワードが飛び出して、ずっと笑いっぱなしだった。スタイルは変えずに、よりみんなに伝わるようなボケが続いて、ちょっと感動してしまった。ガクさんのキャラクターもツッコミもずっといいし、ついにこれで真空ジェシカ決勝に進めるかも!と思いながら見てた。
4番目は敗者復活戦のマユリカ。マユリカのラジオも大好きだから、応援に力が入る。相変わらず下品で、かつポップで、マユリカらしさ満載だったけど、これまた真空ジェシカの次という事でまともに影響をくらって、点数が伸びず即敗退が決定。「大急ぎで負けに来た」は阪本さんならではの素晴らしい敗退コメント。去年はネタ終わりにわりと中谷さんがイジられてたけど、今年はずっと阪本さんがイジられ続け、敗退してからもいわゆる平場での強さと2人の魅力が存分に伝わったんじゃないかなと思ってちょっと嬉しかった。
5番目はダイタク。囲碁将棋とかもそうだけど、ダイタクもネタやってるの見てるだけで今まで物凄い数の舞台に立って漫才をやってきたんだろうな、っていうのがわかる。上手いし熟練感も抜群の安定感もある。唯一爆発力だけ少し足りなくて、思ったほど点数が伸びなかったのかな。
6番目はジョックロック。結成2年半で決勝進出した驚異的な2人。まずキャラデザがめちゃくちゃいい。長髪・口髭・メガネで良い声の福本ユウショウさんとリーゼントで童顔のかわいいゆうじろーくん。真っ黒なスーツに真っ黒なネクタイで細身の2人がセンターマイクの前に立っているだけでとにかく目を引く。ゆうじろーくんのボケに身体を捻りながら2度ツッコむ福本さんのスタイルが私は好きだったけど、漫才の「型」がわかりやすすぎたのかあまり点数が伸びず。ネタ終わりの審査員からのコメントの時のゆうじろーくんの「僕がもっと面白くなります!」がめちゃくちゃ良かったし、初出場で爪痕は残せたと思う。
7番目に登場したのがバッテリィズ。凄く面白かった!エースくんのアホなキャラクターを存分に活かしたしゃべくり漫才で、M-1見終わった後も何度もこのネタばっかり繰り返し見てる。寺家さんのツッコミの声の大きさとか激しすぎない感じが素晴らしくて、めちゃくちゃ聴きやすかった。審査員の山内さんも言ってた「ガリレオ・ガリレイの名前が細そうすぎる」が大好きで、ありそうでなかった着眼点とエースくんが何か言う度に会場が大きな笑い声で包まれて、とにかく大爆発してた。
8番目はママタルト。檜原さんの長ツッコミと肥満さんのダイナミックなボケが面白くて、去年の敗者復活戦がめちゃくちゃ面白かったから凄く期待してた。で、これまた直前のバッテリィズの爆発の影響をもろにくらって点数が伸びず。ただ、結果的に最下位になってしまったけど、凄く会場でウケてたし、面白かったし、ネタと順番次第で来年以降優勝狙えると思ってる。頑張ってほしい。
9番目はエバース。しゃべくりだけどありえないような架空の設定の中で色々想像させて笑わせるという凄く新しい漫才で、面白かった。何より、去年の敗者復活戦で注目されてから、ずっと期待値が上がり続けていて、本来ならそのプレッシャーに潰されてもおかしくないのに、その期待に応えてM-1の決勝に進んだ上、面白いネタを披露した2人にまたちょっと感動してしまった。わずか1点差で4位になって本当に悔しかったと思うけど、エバースはたぶんいつか優勝できると思う。
10番目はトム・ブラウン。去年の敗者復活戦と同じく「いったいこれは何を見せられてるのか」という時間がずっと続く、トム・ブラウンにしか出来ない漫才。私は理解が追いつかずにちょっと取り残されてしまったけれど、審査員もまた評価が真っ二つに分かれていたのが印象的だった。
最終決戦の1番目が真空ジェシカ。
1stラウンドとは全くテイストの違うアンジェラアキのネタ。なぜファイナルでこれを...?と一瞬戸惑ったけど、むしろこれが本当は川北さんがやりたかったネタだったのかもしれないと勝手に思ってる。去年のさや香の見せ算と同じく、大衆的ではないけど刺さる人を確実に全力で刺しにいくっていうのもあるのかもしれないし、それはそれで一つの作戦なのかなと思う。今日になってから隣から長渕の歌がうっすら聴こえてるのとかがどんどん面白く思えてきているし、実はすごく中毒性があるのかもしれない。
2番目が令和ロマン。1stラウンドと全くスタイルを変えて壮大な歴史絵巻、って言っていいと思う。ケムリさんを表す童歌を子どもが歌っていたり、知ったかする爺に周りがドン引きしていたり、キャッチーかつオリジナリティー溢れるボケの連続で全く隙が無く、2.5次元の舞台って言ってたけど、途中からスケールの大きなショーを見てるみたいだった。その勢いに完全に会場全体が飲み込まれていて、見てて一体感すら感じたし、途中であ、これはもうほぼ優勝だな、と確信した。
3番目のバッテリィズも面白かったんだけど、会場にまだ令和ロマンの余韻が残っていたのと、1本目の爆発力を超える事が出来ず、
結果令和ロマンが連覇を達成し、歴史的なM-1の目撃者になった。
今回審査員凄くよかったと思う。
貫禄と風格漂う礼二さん、
終始あたたかいコメントしてたともこ姉さん、
大笑いしていたのが印象的な柴田さん、
ずっと真剣な表情で見つめていた山内さん、
言語化能力がずば抜けている石田さん、
楽しそうにニコニコしていた若林さん、
コメントでもボケ続けていた哲夫さん、
ブレない基準で評価し続ける塙さん、
例年より表情が和やかに見えた大吉先生。
それぞれの個性が出ていて、見てて楽しかった。なぜ点数が高いのか、低いのかという理由も分かりやすかったし、見てて引っかかる事が全くなかった。出来れば来年も同じメンバーで審査員やってほしいけど、負担が凄いからなかなか難しいかな。
去年と今年のキングオブコントでトップバッターのカゲヤマとロングコートダディが2位になり、令和ロマンが2年連続トップバッターで優勝した事によって、トップバッターが不利という言い訳は出来なくなってしまったなと思う。
それは審査員が、トップバッターでも面白ければ勇気を持って高得点を付けるようになったからこその結果だから、今まで以上に審査員はもっともっと評価されるべきだと思っている。
芸人さんは結構「M-1の時の密着カメラがウザい」って言ってるけど、膨大な量の映像とスタッフのM-1にかける凄まじい熱量がM-1の世間での注目度と熱狂に繋がってると思うし、単純に毎年こんなに楽しませてもらっていていちお笑いファンとして感謝の気持ちしかない。
今年は準々決勝のラパルフェのネタが大バズりして、めちゃくちゃ面白かったから、決勝でこのネタ以上に盛り上がる事があるんだろうかと勝手に少し心配したりしてたけど、本当にいらない心配だった。というか準々決勝からの盛り上がりも含めて、今までで1番長い期間M-1を楽しんでいたと思う。
去年もそうだったけど、敗者復活戦から含めて1日で34本も真剣に漫才を見るから、見終わった後には完全に脳が疲れすぎて悲鳴を上げてた。大反省会見るのを翌日にして寝ようとしたけどずっと興奮状態が冷めず、なかなか眠れなかった。
来年のM-1王者はプレッシャーだろうな。
2019年のミルクボーイが優勝した年も伝説だと思ってるけど、その翌年優勝したマヂカルラブリーはめちゃくちゃ叩かれてたし、ちょっとでも来年のM-1が今年より盛り下がるとそれだけで何かと文句言う人が出てくるかもな。今年のM-1が特別凄かったって伝わるといいんだけどな。
かなり長くなってしまった。
これだけ面白い漫才師がたくさん出てきているのは間違いなく25年前にスタートしたM-1のおかげ。これからも盛り上がり続けるといいな。ああ楽しかったな。