ロックンロールバンド
8月4日くるりライブツアー2022ツアーファイナルの一日目。開演前、羽田は大雨。時折雷も鳴り、入場待ちのファンが雨宿りできる場所を探してひしめき合っていた。久しぶりのライブハウス。薄暗い感じと、特有の匂いが、過去の記憶を刺激してきた。開演時間から5分ほど遅れて、会場の照明が落ちると、今か今かと待ちわびていたファンからの万雷の拍手がフロアに響いた。
カラッとしたギターの音が心地よいBus To Finsburyで幕を開けたライブ。変拍子を織りまぜた目玉のおやじ、ファンキーなギターリフが気持ち良いコンバット・ダンスと開始早々立て続けに大ヒット曲()を披露した。ブレーメンBREMENのアウトロでテンポが上がる構成にしたの、ほんと天才だなと思いを馳せながら、続く忘れないようにに浸る。
MCでも言っていたように今日は大ヒット曲しかやらないセトリということで、全世界1800万枚の売上を記録したbumblebeeで2ブロック目のライブをスタート。ブレイクが気持ちよすぎる。1800万枚でまだまだと自評する岸田さんは末恐ろしい存在だなと改めて実感した。
恐らく今日のベストアクトの1つであろうMorning Paper。この曲もブレーメンと似ていて、途中で曲のテンポが変わる構成になっている。岸田さんがテレキャスターを激しく掻き鳴らしてサビが始まると、多くのファンが手を挙げてメンバーの演奏に応え、会場のボルテージがグンと上がった。(話は逸れるが、アンテナに入ってる曲、ギターの音が少しダークに感じるんですけど、私だけでしょうか。)その流れから、しゃぼんがぼんぼん、青い空といったアップテンポな曲を連続投下。
そうかと思えば、スローテンポの風は野を越え、Timeでいきなり、会場を緩やかな幸せの風で包む。いかにくるりの音楽性が幅広いかを分からせられた。
ニッチな楽曲だけでなく、さよならリグレット、ばらの花みたいなガチの有名曲(と私は勝手に思っている)も挟んでくれるのが、くるりらしい。ばらの花は、ミドルテンポの曲だが、なぜあんなにも心躍るのだろうか。拳を上げたり、シンガロングしたりすることはないのだが、確かにフロアが一体になったのを感じた。MCは「おな」「たお」とモーターの事しか覚えていない。
曲名にヘビーメタルと付いているのが頷ける重厚なギターサウンドのwhite out (heavy metal)。個人的に大好きな曲なので嬉しい。そのまま激しいロックチューン、マーチを演奏。
ザラっとしたギターのGiant Fishを挟み、かごの中のジョニー。いや、かごの中のジョニー?ファン泣かせの選曲に感謝。曲の終盤にはドラム、ベース、キーボードが三位一体となったジャスセッションが繰り広げられた。とにかくグルーヴが凄い。気づくと岸田さんは黒色のストラトキャスターに持ち替え、セッションに参加。その流れでプログレッシブナンバーTokyo OPへ。個人的ベストアクトの1つ。生演奏でこの緻密な曲を正確無比に演奏する技術たるや。とてもノリづらい(笑)けどそれがいい!
しっとりとした新曲、ハイウェイと続き、聞いたらみんながハッピーになるlovelessとライブもいよいよ大詰めに。岸田さんの締めの挨拶の後に演奏されたeverybody feels the same、たくさんの手が挙がっていた。多幸感に溢れた瞬間だった。終わりかと思っていたら、実はもう1曲あったようで、潮風のアリアで成熟した今のくるりのモードを存分に見せ、本編終了。
アンコールの1曲目は琥珀色の街、上海蟹の朝。ライブでの化け具合が半端ではない。アンコールのラストはくるりなりのロックアンセム、ロックンロール。以前、YouTubeに上がっているロックンロールのライブ映像に「この曲のタイトルをロックンロールとしたのが、くるりの音楽センスすべてを物語っている。」というコメントが付いていたのを見かけたのだが、まさに100%それである。ロックンロールを歌い続けてくれてありがとう。
今回のくるりライブツアー2022、一言で表すとすれば、「くるりの25回転・アナザーエディション」では、ないでしょうか笑(大真面目に考えて。)今日のセットリストはくるりの25年間の進化を感じることができる、オールタイムベストな曲目だった。その一方で、25年間、どの時代を切り取ってもロックンロールを貫いていることもよく分かる。くるりは今も昔も、正真正銘のロックバンドだ。
今日もくるりはロックミュージックの希望を乗せ、回転し続けている。