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真冬の北海道歩き旅36 【テントが燃えた夜】
前回までのあらすじ↓
根北峠を越えて、なんとか知床半島の向こう側へと抜けることができた。そうして向かうは、知床にあるもう一つの秘境、羅臼…
75日目:事件
バス停はいい。
隙間風こそあるが、雪や寒さを凌ぐ最適なシェルターだ。もちろん合法的なことではないのはわかってはいるけど、テントを張って現地民に心配されるよりは、誰も入ってこないバス停で人知れず寝て人知れず去る、その方が寧ろいいのではないかとさえ思う。
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バス停内は-5度、外に出ると-13度も下がっていた。天気は上々、風もない。少し早目な朝6時から出発。
歩いていると、自分たちを追い越してった車が一台停車。何かと思えば、中から出て来たおじさんに突然コーヒーをいただいた!!!
そして颯爽と立ち去るおじさん。え、いいんですかぁ!しかも熱々!ありがとう〜…
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波は穏やか、風もないのでスラスラと進む。途中から羅臼町へと入った。カントリーサインがワシと月のシンプルなものでかっこいい。そして羅臼に入った途端、突然雲に覆われて雪を降らされた。これが羅臼…歓迎されてるなぁ〜
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そうして今日の野宿場所に到着。公園がポツンとある小さな港だ。
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そうして夜、事件は起こる。
いつも通りにテント内で夕食を作り、食べ終える。そしてバーナーを撤収した際、誤ってバーナーの液体燃料に火をつけてしまいバーナーから出火してしまった。
メラメラと燃えるバーナー。バーナーの下からも燃料が吹きこぼれ、床に敷いていたプレートにも日が燃え移る。焦る2人。火の勢いは増すばかりで消せる気がせず、自分は慌ててテントの外にバーナーを放り出そうとした。
しかし自分たちが使っているテントのドアは吹き流し式と言って、ジッパーではないので簡単に開かず、なんならバーナーにテントの生地がくっついてしまい取れなくなってしまった。
本当にヤバい。このままだとテントごと燃えて自分たちが出れなくなり死ぬ。
そう、死を悟った。
この旅の中で一番死を感じさせる瞬間だった。出口でメラメラと燃える炎。焦る2人。
そして、火が突然消えた………
どうやら液体燃料が燃えきり、火が消えたようだ。ひと安心…なのだろうが、脂汗が止まらず、鼓動の高鳴りが止む気配を見せない。
ひとまず、お互いが無事であることを確認し、安堵した。
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今回の主な原因は、
★自分の誤ったバーナーの使い方
そしてその副因として、
⚫︎旅の疲れで思考が鈍くなっていた
⚫︎長くこのバーナーを使って来たので慣れていた
などがある。
となかく、バーナーの危険性を再認識し、初心に帰って使い方に気をつけようと心に決めた日だった。
その後、出火事件でしょんぼりした自分は、テントから出てトイレに行った。すると、海沿いにやたらとデカい鳥が飛んでいた。一目でワシではない何かと分かったので追いかけてみると…
「あれ…シマフクロウか……!?」
なんと、絶滅危惧種に指定されている、日本ではここ北海道でしかみることのできない世界最大級のフクロウ、「シマフクロウ」に遭遇!!!
これはヤバい、相方にも見せなきゃ。忍足でテントまで走り、興奮気味に相方さんを呼び出す。なんとか相方さんにもシマフクロウを見せることができた。
どうやらこの子はこの海辺で魚を獲っていたようだ。闇に溶け込みながら鋭い眼光で海を見つめるその姿はとても優雅で、同時にふわふわな見た目で可愛く見えた。
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そんな感じで、色々とドタバタした夜だった。シマフクロウを見れた喜びと、テントを燃やしてしまった悔しさで、なんだかカオスな心境のままシュラフに潜り込んだ。
76日目:羅臼入り
朝5時半に起床。いつものように朝食を済ませ出発。昨日の事件があり、口数はいつもより少し少なめ…。
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朝は少し晴れていたが、出発してからすぐに天気が悪くなった。しかも寒くないベタ雪。最悪だ。
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この悪天はしばらく続くらしく、特に今日は最も天気が荒れるとの予報。まけじと前に進むが、どうも視界が悪く歩道もない、そして車がよく通るという最悪な状況下だ。
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そしてまたもやアクシデント。
お昼頃、パンを食べていたら足に違和感を感じ始めた。
(足が…やけに湿ってるぞ?)
自分は足汗をよく体質だが、それにしてもいつもより湿っている…というか濡れている。靴から足を引っこ抜くとビッチョビチョに。おそらく、ベタ雪が足で溶けて靴に浸透してしまったようだ。おかげで履き心地は最悪、足はカチカチに冷えてしまっている。とても嫌な気分だ。
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そんなこんなで、よーーーーやく羅臼に到着。疲れたぁ〜…。
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本日お世話になる宿は、なんとカラオケの個室を宿泊施設に改装した激安ライダーハウス「お気軽屋」。アメニティこそ少ないものの、そのリーズナブルさとWi-Fiがあるのは強みだろうと思う。
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夜、べちゃべちゃな靴を少しだけ乾かして再び履いて向かった先は、焼肉屋さんの「焼肉正寿苑」ここまで来たご褒美にと、奮発した…!
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お肉ももちろん美味しいが、クッパも同じくらいに美味しい。そしてデカくて温かい。冷え切った体に染み渡る〜〜ッ。
こうして念願の羅臼へと来ることができた。知床峠こそ越えられなかったが、こうしてこれただけでも嬉しいものだ。明日は、ここで入ってみたかった温泉があるのでそこへと向かうことに。楽しみだあーーん。