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真冬の北海道歩き旅その17 【モシリパでのひととき】

33日目:公園散策とちゃんちゃん焼き

朝の6時に目が覚める。窓の向こうでは烈風が建物に当たりヒュウウウと不気味な音を出していた。そんな今日は、持参したワカン(かんじき)を履いて近くの高台にある稚内公園を散策する予定だ。8時ごろ、朝食を済ませたら10時ごろに出発。
稚内公園はここモシリパから徒歩で7〜8で入ることができるが、高台にあるのでそこからまた20分ほど坂を登ることになる。しかし、冬季は除雪が入っておらず、歩きでしか入ることができない。なのでワカンを履いて、膝くらいにまで積もった雪の上を歩くことになる。

ゲストハウスモシリパの裏手に行くと、すぐに公園が見える。これから奥の丘を登る。
公園の入り口。まるで冬山に入山するようだ。
ラッセルをして丘を駆け上る。この頃はまだ風が弱い。
丘の上に出る。公園という名の雪原が広がり、開基百年記念塔がこちらを見下ろす。

丘の上は凄まじい風だ。厳冬期の八ヶ岳のよう。これでも夏にはいっぱいの鹿が集まる、緑豊かな草原なのだとか。雪と影しかない荒涼とした風景からは想像もつかない…。しばらくこのモノクロームな景色を目に焼き付け、そこから降りた。
丘を降りる時、別のコースで降りてみた。そこには様々な記念碑がある。

南極観測樺太犬訓練記念碑
1957年、初の南極観測を日本が行った際に、ここ稚内で訓練された勇敢な樺太犬22頭が任務をまっとう。しかし15頭がやむを得ず置き去りになり死んでしまったが、そのうちの2頭「タロ・ジロ」が二年後の越冬隊に発見された奇跡が起きた。
九人の乙女の碑
太平洋戦争終結の直後、樺太に侵攻したソ連軍の猛攻を受ける中に9人の乙女は恐怖に堪えながらも通信交換員としての職務をまっとうし、集団自決をしてしまう。その惨事を永久に忘れないため、この碑が建てられた。

ここ稚内は、国境付近というだけあって戦争の歴史が濃く残っていた。樺太犬の訓練場であったことも知らなかった。

来なければ分からないことだ。
やはり、来て知ることは大事なのだと思う。

昼頃に着くと、なんと女将さんが賄いをご用意してくれていた!その時一緒に泊まっていたHさんとも一緒に、3人で食卓を囲んでいただいた。

北海道名物、鮭のちゃんちゃん焼き!
これが美味いの美味いの…

ちゃんちゃん焼に、ホカホカのご飯。美味しい。あまじょっぱい味噌がどデカい鮭やキャベツに絡みあい、美味しい。舌鼓をドンドコ打ちまくった。
その後はゆっくりと過ごし、夜は近くにあるラーメン屋に行ってみた。ここではチャーメンというのが有名らしく、頼んでみることに。

噂に聞くチャーメン。トロトロな餡かけはずっと温かい。

炒められた麺の上には、あんかけと野菜。ほう、こういうものかと食べてみると、これもまた美味いこと。炒められた麺は、中国料理の炒麺(チャオメン)を彷彿させる。餡掛けにはたくさんの野菜、よくみると海鮮も入っていて美味しかった…寒い冬には食べたくなるグルメだ。
そうしてほかほかになった体で、ゲストハウスに帰る。ゲストハウスに帰ると既にHさんが共有スペースにいた。Hさんは翌日から別の宿で年越し直前まで泊まるとのこと。また無事に宗谷で逢えることを願い、共に酒を飲み交わした。

34日目:野寒布岬と焼きカレー

昨日の吹雪とは打って変わり、空には青空がよく見えた。今日は宗谷岬の次に北にある野寒布岬に歩いて行ってみる。

歩道を歩いてふと後ろを振り返ると、太陽の光線が幾つも見えた。幻想的だ。
強烈な向かい風に立ち向かうと、灯台が見えてくる。
岬にある稚内灯台。北海道では1番、全国で2番目に高い灯台だ。
野寒布岬。この先には樺太が見えるはずだけど、雪が降っているみたいでみることはできなかった。

強烈な向かい風。外気温-4度とは思えない体感温度の低さに驚愕する。肌を露出していると、一瞬で冷え切ってしまうので気をつける。ゲストハウスからゆっくり歩き、1時間ほどで野寒布岬(ノシャップ岬)に着いた。
ここ野寒布岬には稚内灯台という灯台がある。その巨大な灯台は北海道一高い灯台で、全国でも2番目に高いらしい。面白いのはその歴史で、最初はここから少し高台にある稚内分屯基地に1900年に建てられたのだそう。それが1966年になると基地の拡大により、灯台が現在の場所に移動、建てられたのだそうだ。灯台が移動されることもあるのだなと驚く。
野寒布岬に着くと、そのお隣の宗谷岬がよく見えた。自分たちは明後日、あそこへ歩いて向かうのだなと想いを馳せる。
そうしてバスでゲストハウスへ帰った。ゲストハウスに着くと、女将さんが食堂のメニューであるカレーをお勧めしてくれたので、それを食べてみることにした。

ご馳走になった焼きカレー。とろとろのチーズがカレーの旨味を引き立たせる。
400円でいただける梅酒。ウイスキーやジンなどに梅を漬けていて、いろんな味が楽しめる。もちろんこれも美味しい…

その焼きカレーはエゾシカ肉が使われているジビエカレー。脂がありすぎないので意外とあっさり、カレーもスパイスの味ひとつひとつが際立っていてとても美味しかった。極め付けには上に乗ったチーズとゆで卵!一緒に出してくれたキノコのスープや、青々としたサラダも美味しく、またもや女将さんのご飯に舌鼓を打ちまくることになった。

35日:ソースカツ丼と愉快な仲間

宗谷岬出発まであと1日。必要な物資を買い、あとは体力温存のためゲストハウスで大人しくすることにした。
ゲストハウスでは、スーパーで買ったロースカツに炊いたご飯と千切りキャベツ、ソースでソースかつ丼を作った。簡単に作ってみたが、これまた美味しい。毎日が美味しいご飯を食べられて幸せだ。

ソースかつ丼!カツ丼は大好物なので本当に嬉しい。これを書いている今もお腹が減ってきた。

そしてこの日、宗谷年越し勢がまた1人現れる。自転車で来たFさん(仮称)は、幌延まで電車で輪行し、そこから40号線を2日間で北上してきたらしい。僕らは歩いて3日間。やはりチャリダーは強い…!それにしても今日昨日は特に風が強く大気が不安定だったのでよく来たなあと感心した。それほどにタフじゃないと宗谷岬は自転車じゃ来れないのだろう。さらにはチャーメンを食べに青森からほぼノンストップで車でやってきたお姉さんがいた。すげー…。タフな人たちが、この時期になるとモシリパに集い出すのだろう。「類は友を呼ぶ」とはよく言ったものだ。ここまできた体験談を4人で語り合い、寝ることに。

明日は12月30日。
向かうは最北の岬、宗谷岬。
距離にして32キロ、行動時間は約10時間。

絶対に、無事に行ってみせる。

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